「閑静な住宅街」など、場所を言い表す時に使うことが多い「閑静」という言葉。なんとなく意味は知っていても、詳しく説明することは難しいと感じる方も多いかもしれません。今回は、「閑静」の意味や使い方、「閑散」「閑寂」などとの違い、英語表現についてみていきましょう。
「閑静」の意味とは?
「閑静(かんせい)」とは、「もの静かで、落ち着いたさま」。人の気配やざわめきなどがなく、静かな場所や住宅地に対して使われる言葉です。「閑」という漢字は、「暇なこと、のどかなこと」を表し、「静」には「物音がしないこと、動かないこと」などの意味があります。
このことから、「閑静」は「落ち着いていること」という意味を重ねて強調した言葉ということができますね。しかし注意したいのは、あくまで場所に対して使う言葉ということ。「閑静な人」「閑静な性格」など、人に対して使うことはできないので気をつけましょう。
「閑静」の使い方を例文でチェック!
続いて、「閑静」の使い方を紹介します。よく使われるシチュエーションを覚えて、実生活でも使ってみましょう。
1:この辺りは閑静な住宅街となっており、特に人気のエリアです。
住宅エリアについて話す時に、「閑静」という言葉はよく使われます。「次に引っ越す時は閑静な場所にしたい」などと、「閑静」な住まいに憧れを持つ方も多いでしょう。
通勤の利便性や通いやすさを重視するなら都心エリアの方がいいですが、のどかで落ち着いた暮らしがしたいなら「閑静」な住宅地の方が適していますね。
2:老後には都会の喧騒から離れ、閑静な田舎町で暮らしたい。
それまでは、都会の暮らしを満喫していた人が、歳をとり価値観が変化したことで田舎暮らしに憧れることもあるはず。この例文では、「都会の喧騒」と対比させて、閑静な田舎町を強調させています。
3:取引先の会社は、閑静なオフィス街にあった。
「閑静」は、田舎町などの自然に恵まれた場所を表すこともあれば、都会の中のオアシスのような場所を指すことも。比較的駅から離れた場所だと、都会であっても公園があったり、人気が少なく落ち着いたエリアもあるものです。好意的な意味を込めて、「閑静なところで素敵ですね」と伝えてみては?
類語や言い換え表現とは?
「閑静」のように、もの静かな場所を表す言葉には「閑散」や「閑寂」「ひっそりとした」などが挙げられます。微妙に異なるニュアンスが含まれているため、違いを押さえて使い分けてみましょう。
1:閑散
「閑静」とよく似た言葉に「閑散(かんさん)」があります。意味は3つあり、「ひっそりと静まり返っていること」「仕事がなくて暇なこと」「売買・取引などが少ないこと」を表す言葉です。ひとつめの意味が「閑静」と似ていますが、「閑散」には物寂しいというニュアンスが含まれます。
例えば、「閑静な住宅街」は、穏やかで暮らしやすいといった意味合いとして使われますが、「閑散とした住宅街」は、人の気配がなく物寂しい住宅街を指すことが多いでしょう。微妙な意味の違いを理解して使い分けたいですね。
・平日のせいか遊園地は閑散としていた。
・近くに大型ショッピングモールが建てられた影響で、商店街は閑散としていた。
2:ひっそりとした
物音や人の声がせず、静かな場所を「ひっそりと静まりかえった室内」などと言ったりしますよね。先ほど「閑静」は、場所のみに使える表現だと説明しましたが、こちらは「ひっそりと余生をおくる」人の姿にも用いられます。
・放課後の教室はひっそりとしていた。
・足元には野の花がひっそりと咲いていた。
3:閑寂
「閑寂」は、「かんじゃく」もしくは「かんせき」と読むこともあります。「もの静かで趣のあること」を指し、ひっそりとした古寺や茶室などに使われることが多い表現です。質素ながらも、どこか風情が感じられる場所や空間などを表します。
・父は閑寂を好み、老後は人里離れた古民家で暮らしたいと言っていた。
・その家の離れは人気がなく閑寂としていた。
英語表現とは?
英語で「静かな場所」を表現したい場合には、「quiet」や「tranquil」を使うといいでしょう。それぞれの意味や使い方のポイントを紹介します。
1:quiet
「閑静」自体を表すのは「quietness」ですが、「閑静な〜」と言いたい場合には「quiet」を使います。「quiet」は「静まりかえった」「ひっそりとした」などの意味があるので、「閑静」と同じようなニュアンスで使うことができます。「quiet suburbs(閑静な郊外)」「quiet place(閑静な場所)」を覚えておくと便利。
・She moved to a quiet place with abundant nature.(彼女は自然豊かでのどかな場所に引っ越した)
・The market was quiet today.(今日の市場は閑散としていた)
2:tranquil
「tranquil」はあまり聴き馴染みのない単語ですが、「穏やかな」「のどかな」「落ち着いた」などの意味を持ちます。「閑静」のように静かな場所を指す以外にも、人の落ち着いた態度や安らかな心の様子なども表現することができます。
・This is a very tranquil town.(そこはとても閑静な街です)
・We’re looking for some place more tranquil than Tokyo to spend our retirement.(私たちは余生を送るのに東京よりも閑静な場所を探している)
最後に
「もの静かで落ち着いたさま」を意味する「閑静」。住宅街の他にもホテルや避暑地など様々な場所に対して使用できます。
類語である「閑散」や「閑寂」にはどこか寂しげなニュアンスが含まれますが、「閑静」は穏やかな環境であることを肯定的に捉えているのが特徴。ぜひ、日常生活の中でうまく使い分けてみてくださいね。
TOP画像/(c)Shutterstock.com