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時折感じることのある「虚しさ」。心が空っぽになって、何をする気も起こらない…。そんな「虚しさ」について考えてみましょう。
「虚しさ」の意味
「虚しさ」と書いて「むなしさ」と読みます。日常会話でもよく使う言葉ですが、どんなシーンで「虚しさ」を感じますか? まずは、言葉の意味から確認してみましょう。
意味
【虚しい(むなしい)】
(1)空虚である。内容がない。「―・い言葉」
(2)無益である。むだである。かいがない。「―・く時が過ぎる」「奮闘―・く敗退する」
(3)かりそめである。はかない。「―・い世の中」
(4)(「己をむなしゅうする」などの形で)我欲・先入観などを捨てる。「心を―・くして対処する」→己を虚しゅうする
(5)事実無根である。根拠がない。「―・しき事にて人の御名やけがれむ」〈源・少女〉
(6)死んで魂がない。「跡の妻子共、今一度―・しき貌(かたち)をもさこそ見度く思ふらめとて」〈太平記・一六〉
<「小学館 デジタル大辞泉」より>
「虚しさ」とは、「中身がない」「空虚な」「うつろ」などといった意味がある言葉で、ネガティブな気持ちを表す言葉のひとつです。
同じような言葉に「悲しい」がありますが、これは何かに心を動かされた結果の感情表現であり、「虚しさ」「虚しい」というのは、その揺さぶられるものがない、という状況で生まれる感情です。
どんなときに感じる? 心理状態は?
では、どんな時に「虚しさ」を感じるのでしょうか。いくつか思いつくシーンをあげてみましょう。
努力が報われないとき
たとえば、仕事や勉強を一生懸命取り組んできたのに、その努力が報われず、うまくいかなかった場合。それまでの努力の日々にまったく意味がなかったかのように感じてしまうことがあります。そんな時に「虚しさ」を感じることがあります。
心の中が目的でいっぱいだったのに、それがまったくと言っていいほど実を結ばなかったのですから、心が空っぽになってしまうのです。
無駄な時間を過ごしたとき
せっかくの休日、天気もいいのに、一日中家でゴロゴロしていた…。そんな日の終わりにふと、「虚しさ」を感じることがあります。心を動かされるものが一つもなかった一日に、「時間を無駄にした」と思ってしまうのです。
失恋したとき
それまで心の大部分を占めていたカレの存在がなくなった時、「虚しさ」を感じることがあります。「この人しかいない」「結婚する」などと、大きな存在であればあるほど、「虚しさ」は大きなものとなるでしょう。
人が楽しそうにしているのを見たとき
誕生日やクリスマスなど、多くの人がイベントを楽しむ日にひとりぼっちだったとしましょう。自分には何の価値もないような気がして「虚しさ」を感じます。世界中が楽しく過ごしていて、自分だけがひとりぼっち…。そんなふうにすら考えてしまうのかもしれません。
仲のいい友達にカレができたとき
ずっと仲良くしていた女友達にカレができた時に、「虚しさ」を感じる人も少なくないようです。「同じだ」と思っていた友達だけが選ばれたことに、自分には価値がないと感じてしまうからかもしれません。
「虚しさ」を生む感情とは?
「虚しさ」を感じる、その原因にはどんな感情があるのでしょうか。
不安
「私には価値がないのではないか」「私のしてきた事には意味がなかったのか」という不安が「虚しさ」につながります。
寂しさ
恋人との別れ、ペットとの別れ、子どもの巣立ちなど、「あったものがなくなる」という寂しさは、「虚しさ」を生みます。寂しさと同時に、この後、それに代わる何かが得られるかどうかの不安もあるでしょう。
嫉妬
何かに嫉妬し、それに疲れたころ、「虚しさ」に襲われることがあります。「あの子のように人に好かれたい」「あの子のように出世したい」など、人の成功を妬んでいるうちに、そんな自分に「虚しさ」を感じるようになるのです。
哲学者が説く「虚しさ」とは?
フランスの哲学者・パスカルは次のように述べています。
「この世に真の堅固な満足はなく、われわれのあらゆる楽しみはむなしいものにすぎず、われわれの不幸は無限であり、そしてついに、われわれを一刻一刻脅かしている死が、わずかの歳月の後に、われわれを永遠に、あるいは無とされ、あるいは不幸となるという、恐ろしい必然のなかへ誤りなく置くのであるということは、そんなに気高い心を持たなくとも理解できるはずである」(パスカル『パンセ』)
あらゆる楽しみは「虚しい」ものだと述べています。恋人と過ごしている幸せな時間も、家族と過ごす楽しい時間も、すべては「虚しさ」に通ずると言うのです。その理由としてパスカルは、「人は必ず死ぬからだ」と述べています。
どんなに楽しく幸せで、有意義で充実していても、それがいつかは必ず終わることを人々は知っていて、ゆえに人生そのものに「虚しさ」を感じるのだというのです。
「虚しさ」から脱出する方法とは?
パスカルの言うように、多かれ少なかれ、人は「虚しさ」を感じることがあるでしょう。それは自然な感情だとも言えますが、「虚しさ」を抱えていると、物事に前向きに取り組むことができません。
ここでは、脱却方法を考えてみましょう。
「虚しさ」を忘れる何かを見つける
「虚しさ」を募らせていても始まりません。そのことを忘れられる何かに打ち込みましょう。刺繍やパズルなど無心になれるものがいいかもしれません。
大声で歌う・体を動かす
心が疲れている時には、体を動かすと気分が晴れやすくなります。「虚しさ」でぽっかり心に穴が空いたような気持ちの時には、ノリのいいリズムの歌を大きな声で歌ったり、ランニングをしたりするといいでしょう。
新しいことに挑戦する
新しいことに挑戦する時には、余計なことは考えないもの。「虚しさ」を感じたら、今までやったことのないことにチャレンジしてみましょう。ちょっとしたことにも達成感を得られますし、「虚しさ」を埋めるにはいいかもしれません。
自分のいいところ・できたことを書いてみる
「虚しさ」の影には、自分に「無力さ」を感じていたり、自己評価が極端に低かったりということがあります。そこで、自分のいいところや特技、最近達成したことなどを思いつくままに書き挙げてみましょう。見えていなかった自分の特長が発見できるかもしれません。
冷静に分析してみる
できれば、でいいのですが、「なぜ、虚しさを感じるのか」を冷静に分析してみると、次の一歩が具体的に踏み出しやすくなります。努力が報われなかったことが悲しいのか、人が羨ましいのか。原因がわかれば、手立ても見つけやすくなります。
上手に気分転換をして前向きに
「虚しさ」を感じるシーンや対処方法をお伝えしました。「虚しさ」を少しでも解消するためには、「結果が残る何か」に取り組むのがいいでしょう。小さなことでも達成感を得ることができれば、「虚しさ」を埋めることができます。
逆に「食べる」「寝る」など、何も残らない行為は「虚しさ」が募る結果になることがありますので、やめておいたほうが無難。「虚しさ」は誰しもが感じるものですが、上手にコントロールして前向きに暮らしていきましょう。
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