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胡蝶の夢とは
「胡蝶（こちょう）の夢」とは、「夢か現実かはっきりわからない様子」を指す言葉です。
また、夢と現実の区別がつかないことをから転じて、「人生のはかなさ」のたとえとしても使われます。
胡蝶の夢の由来・語源
由来は荘子が見た夢から
「胡蝶の夢」は、中国の古典『荘子・斉物論』の故事からきています。
中国戦国時代の思想家である荘子は、ある日自分が胡蝶になる夢を見ました。
夢の中で胡蝶になり、花から花へと飛び回っていましたが、目が覚めると自分はもう胡蝶ではなくなっています。夢から覚めてみると、夢の中で自分が胡蝶になったのか、胡蝶が自分になったのか区別がつかなくなって驚いたという逸話です。
なぜ胡蝶なのか
荘子が夢の中で胡蝶になりますが、中国では胡蝶は「長寿」のシンボルであり、世界的にも「魂」「再生」「命」の象徴とされています。
『荘子・斉物論』には「此之謂物化」という言葉もあり、「物化」は「万物が変化すること」を意味します。
「長寿や再生を意味する蝶」になれる夢を見たのに、夢が覚めてしまったことで「人生のはかなさ」を表すようになったのかもしれませんね。
胡蝶の夢の類語
「夢か現実かはっきりわからないさま」や「人生のはかなさ」を指す「胡蝶の夢」。それぞれの意味を持つ類語を紹介します。
夢か現実かはっきりわからないさまを指す類語
夢か現か
「夢か現（うつつ）か」は、読んで字の如く、夢なのか現実なのかわからないさまを表す言葉です。
白昼夢
「はくちゅうむ」と読みます。
日中、目が覚めているときに空想や想像を現実に起きているように感じることを表します。また、そういった非現実な幻想にふけることを指す場合もあります。
荘周之夢
「そうしゅうのゆめ」と読み、夢と現実があいまいなさまを指します。
荘周は荘子の別称で、「胡蝶之夢」の中にも荘子を「荘周」と表す表記があります。「胡蝶之夢」と同じ意味を持つ言葉です。
人の世、人生のはかなさを表す類語
盛者必衰
『平家物語』の有名な一節に出てくるので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。「じょうしゃひっすい」と読み、「栄華を極める者も必ずいつか衰える」ことを表す言葉です。
栄枯盛衰
「えいこせいすい」と読み、栄える時もあればと衰えることもあり、世の中はそれを繰り返すという意味のある言葉です。
「栄枯」は栄えることと衰えること、「盛衰」には盛んになることと衰えることという意味があります。
邯鄲の枕
「かんたんのまくら」と読みます。人の栄枯盛衰がはかないことを指す言葉で、中国・唐の小説『枕中記』が由来です。
胡蝶の夢を使った例文
課題をやったと思っていたのに、どうやら胡蝶の夢だったようだ
夢の中で課題やテスト勉強などをしていたのに、それを現実と勘違いしてしまい白紙の状態だった…！ というときに使います。テスト勉強の途中などについうたた寝してしまった時などに経験のある方も多いのではないでしょうか。
大きな仕事が決まったけれど、人生は胡蝶の夢。調子に乗らずに地道に続けよう
人生は、物事の移り変わりが激しくはかないもの。いい状況がずっと続くとは限りません。大金や人気を得たからといって、それはいっときのものだ、と自分を戒める時などに使います。
胡蝶の夢の英語表現
The Butterfly Dream
文字通り「胡蝶の夢」を指す英語表現です。
Life is but a span
「人生は短い時間に過ぎない」という訳になり、人生がはかないさまを表すことができます。「span」を「dream」に置き換えると、「人生は夢にすぎない」となり、こちらも「胡蝶の夢」の英語表現として使うことができます。
an evanescent life
「evanescent」は「はかない」「消えてゆく」などの意味があり、「はかない人生」と訳すことができます。
小説『胡蝶の夢』をわかりやすく解説
「胡蝶の夢」は、実は小説や漫画などさまざまな作品に関連しています。
司馬遼太郎による歴史小説にも、『胡蝶の夢』という作品があります。1976年から朝日新聞朝刊にて連載を開始した作品です。
小説『胡蝶の夢』はどんな作品？
司馬遼太郎の『胡蝶の夢』は、幕末の時代が舞台となっています。
徳川幕府15代将軍・徳川慶喜、戊辰戦争で軍医として活躍した松本良順、同じく戊辰戦争に医師として参加した蘭方医の関寛斎などが登場します。
幕末〜明治維新の激動の時代を、医療目線、医療を通した身分制度批判を描いた作品です。
黒船来航などで大きく時代が動いた幕末、それまで一般的だった漢方医学から、蘭学が求められるようになりました。この変革の時代を、蘭学という新しい学問で身分社会と戦いながら生きる姿が描かれています。
胡蝶の夢に関連した漫画『胡蝶の夢路』・小説リゼロ『胡蝶之夢』・ゲーム ペルソナ『胡蝶の夢』とは？
「胡蝶の夢」に関連するそのほかの作品についても紹介します。
漫画『胡蝶の夢路』について
漫画『胡蝶の夢路』は、無料のWeb漫画「comico」にて連載されていた和風ファンタジー漫画です。原作者は志摩 午氏。
妖と半妖が織り成すストーリーと繊細な絵が人気で、特に女性ファンから多くの支持を受けています。
主人公の澄（すみ）は、ある日妖（あやかし）の世界に落ち、そこで胡蝶（こちょう）という名前をもらい、半妖として妖の世界で生きていくことになります。澄を助け、胡蝶という名を与えたのは銀（しろがね）という妖。
妖の世界で新たな一歩を踏み出していく胡蝶の姿や、銀が胡蝶に抱く恋心が描かれています。
小説リゼロ（Re:ゼロから始める異世界生活）に登場する『胡蝶之夢』
長月達平氏による人気ライトノベル『Re:ゼロから始める異世界生活』にも、『胡蝶之夢』が登場します。
『Re:ゼロから始める異世界生活』は「リゼロ」という略称で親しまれ、2012年より「小説家になろう」にて連載開始。シリーズ累計発行部数は1100万部を超え（2021年12月時点）、テレビアニメ化もされています。
リゼロは本編の他に番外編もあり、番外編はリゼロEXと呼ばれます。このリゼロEXで『胡蝶之夢』というタイトルの話が登場します。本編第4章の合間に出てくる話ですが、現在はサイトから削除されています。
サイトから消えて読めなくなってしまった作品というのも、まるで「胡蝶の夢」のようですね。
女神異聞録ペルソナに関係する『胡蝶の夢』
『女神異聞録（めがみいぶんろく）ペルソナ』は、1996年発売されたPlayStation用のゲームソフトです。ペルソナシリーズとして高い人気があり、全世界のシリーズ累計売上本数は1500万本を記録しています（2021年時点）。
ゲームのシナリオに「胡蝶の夢」に関連するものは出てきませんが、オープニングムービーで「胡蝶の夢」に関連する描写がされています。
オープニングの始まりに、「ある時、私は蝶になった夢を見た」という字幕が表示され、荘子による『荘子・斉物論』が紹介されるという演出がされています。
最後に
「胡蝶の夢」の意味や由来、「胡蝶の夢」に関する作品などを紹介しました。中国古典の由来ということもあり、少し解釈が難しく感じますが、「人生が儚いさま」や「夢か現実かはっきりわからない様子」を指す、実は身近な表現に使える便利な言葉です。ぜひ活用してみてくださいね。
言葉の意味／デジタル大辞泉
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