「パンドラの箱」と聞いて何を思い浮かべますか? 「何か良くないもののイメージ」「元となる神話がある」など、思い浮かべる内容は様々でしょう。本、テレビ、曲の歌詞など、多くの場面で耳にするこの言葉。この機会に正しく理解しましょう!
「パンドラの箱」の意味や由来とは?
「パンドラの箱」という言葉は、その意味を知らないと、見たり聞いたりしただけでは何を言っているのかわかりませんよね。まずは意味と言葉の由来について、確認しましょう!
意味
「パンドラの箱」とは「あらゆる災いのもと」を意味する言葉です。意味だけ言われても「パンドラとは?」「箱って?」と疑問が残るでしょう。なぜ「パンドラの箱」が災いのもとを意味するようになったのか、由来を確認しましょう。
由来
「パンドラの箱」の由来はギリシア神話。ギリシア神話は、紀元前に生まれたとされる、歴史的な文学作品です。ギリシア神話の中で「パンドラの箱」がどのように語られているのか見ていきましょう!
神族の一人であるプロメテウスは、当時知恵や技術をほとんど持っていなかった人間に、初めて火を与えました。火は神のものであったため、その行為を知った最高神ゼウスは怒り、人間を懲らしめようとします。パンドラという人間で最初の女性を作り、箱をもたせて人間の世界へ送りました。
その箱の中身は、あらゆる災いや不幸、悪でした。しかし、それを知らないパンドラは、好奇心からその箱を開けてしまいます。人間界には災いや不幸、悪が広がり、パンドラが急いで箱を閉めた時、箱の中に「希望」だけが残りました。
ギリシア神話では「パンドラの箱」はこのように語られています。ゼウスから渡された箱が、災いを閉じ込めた箱であったことから、「パンドラの箱」という言葉が「あらゆる災いのもと」を意味するようになったことが分かりましたね。
ところで、パンドラが急いで箱を閉めたあと… 箱には「希望」だけが残りました。この「希望」に関しては、解釈が二つに分かれます。
一つ目は、人間の手元には希望が残り、希望を持って生きることができるようになった、というもの。二つ目は、希望を手にしたことで、人間は希望にすがりながら生きていくことしかできなくなり、苦しみが増した、というものです。
このようにさまざまな解釈を持つ「パンドラの箱」ですが、「パンドラの箱」という名前がついた、人気洋菓子店があるのを知っていますか? 鳥取県で1982年に創業し、現在は系列店を含め3店舗を構えています。
人気商品は生クリームと小豆あんを使用した『ドラドラ生どら』! 新しい洋風どら焼きとして、懐かしさもありつつ、若い方にも人気の商品です。残念ながら、生どらは賞味期限が短いため、全国発送の対象外。近くを訪れた際には、ぜひ立ち寄りたいですね。
使い方を例文でチェック!
パンドラの箱の意味や由来は理解できましたか? では実際に「パンドラの箱」はどのような状況で使われるのでしょうか。とっさに耳にした時にもしっかり理解できるよう、いくつか例文で確認しておきましょう!
1:「その話題は、彼女にとってパンドラの箱だ」
この例文では、災いのもとである「パンドラの箱」を用いて、その話題に「触れないほうがいい」ことを表しています。
2:「うっかり友人のパンドラの箱を開けてしまった」
パンドラが箱を開けたとき、その瞬間に災いが飛び出し、急いで閉めても時すでに遅し… 意味がありませんでしたね。すなわち「パンドラの箱を開ける」とは「取り返しがつかない」ことを表します。
3:「パンドラの箱を渡されて困っている」
災いのもとが詰まった箱を渡された時、どんな気持ちになりますか? 「困った」「どうすればいいかわからない」と不安に思いますよね。「パンドラの箱を渡された」とは「手に負えない物事を頼まれた」ことを表しています。
類語や言い換え表現とは?
ギリシア神話の由来などを知らないと「パンドラの箱」という言葉からは、意味が推測しづらいもの。誰でも理解しやすい言葉に置き換えたい時のために、類語や言い換え表現も確認しましょう!
1:タブー
ポリネシア語が元となっており、日本語では「禁忌」と訳します。禁止された物事や、言動を表す言葉です。
2:玉手箱
ギリシア神話の「パンドラの箱」の物語を知った時「似たような話を聞いたことがあるな」と思った人はいませんか? 多くの人は、日本昔話の『浦島太郎』を思い出したのではないでしょうか。浦島太郎が、竜宮城に行った帰りに乙姫から「絶対に開けてはならない」と言われながらもらった箱が、玉手箱でしたね。
結局浦島太郎は玉手箱を開けてしまい、その結果、一気に老人になってしまいました。物語の内容も「パンドラの箱」とよく似ており「秘密にして、簡単に人に明かさないもの」という意味も含まれています。
しかし、もともと「玉手箱」の「たま」には美しいという意味があり「美しい手箱」を意味します。そのため、「パンドラの箱」と同じように使いたい時には少し注意が必要です。
英語表現とは?
ギリシア神話はヨーロッパ文化と深く関わっていて、宗教、歴史、思想に大きな影響を与えています。そんな世界的に有名な神話が由来になっている「パンドラの箱」。海外の会話でもよく使われていそうですよね。最後に、英語表現を確認しましょう!
1:Pandora’s box
英語でも日本語と同じように「パンドラの箱」を「Pandora’s box」といいます。Pandoraは人の名前ですので「〜の」という所有の意味を持つ「’s」をつけることで「パンドラの」という意味になります。「box」は箱ですね。
2:open(up)a Pandora’s box
「パンドラの箱を開ける」といいたい時は、「開ける」を意味する動詞「open」を使いましょう。「open」のあとに「up」を付けても構いません。
3:open(up)a can of worms
「open(up)a Pandora’s box」の類似表現として、「open(up)a can of worms」があります。直訳すると「can」は「缶」を「worm」は「虫」を意味しますが、「worm」には「徐々に心を蝕むもの」や「苦痛」という意味もあります。そのため「a can of worms」は「解決するのが困難な問題」という意味になるのです。
最後に
「パンドラの箱」について、意味や由来、類語や英語表現を解説しました。世界的に有名なギリシア神話が由来であったり、神話の結末には複数の解釈があるなど、興味深い言葉でしたね! 言葉のバックグラウンドを知り、より一層豊かな会話や表現を楽しんでください。
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