「俯瞰」の意味や注意点とは?
「俯瞰」という言葉を、見聞きしたことがある方も多いでしょう。「俯瞰する」「俯瞰して考える」というように、ビジネスシーンでも馴染みのある表現ですが、正しく意味を理解していないと間違った使い方をしてしまう可能性も…。そこで今回は、「俯瞰」の正しい意味や使い方、類語や英語表現などを解説します。
意味
「俯瞰」の読み方は、「ふかん」。本来の意味は「高いところから見下ろし、眺めること」ですが、ビジネスシーンでは「広い視野で物事を捉えること」の比喩として用いられます。「俯瞰」の漢字の意味をひとつずつ読み解いてみると、「俯」は「ががむ」「うつむく」という意味、「瞰」は「見下ろす」「眺める」という意味があります。
この2つの漢字が組み合わさることにより、「高いところから、身をかがめて眺める」という意味になるのです。
「俯瞰して見る」は間違い
「俯瞰」という言葉は、馴染みのある表現なだけに、なんとなくで意味を理解して間違った使い方をしているケースも…。日常生活でよく耳にする「俯瞰して見る」「俯瞰で見る」という表現は厳密にいえば、誤用です。
先述したように、そもそも「俯瞰」という漢字には、「見る」という意味が含まれているため、「俯瞰して見る」「俯瞰で見る」といってしまうと二重表現になってしまいます。「広い視野で物事を捉えること」という意味で使いたい場合には、「俯瞰的に捉える」「俯瞰的に考える」などと言い換えたほうがいいでしょう。
使い方を例文でチェック!
「俯瞰」には、本来の意味と比喩表現の2つの意味があります。それぞれの意味に合った使い方をチェックしておきましょう。
1:ビルの屋上から市内を俯瞰する。
「高いところから見下ろし、眺めること」という本来の意味の使用例です。ビルの屋上や山の頂上などの高い場所から、景色を見下ろすときに使います。日常会話では、「~を眺める」「~を見下ろす」ということが多いので、「俯瞰」はやや硬い表現といえますね。
2:世の中を俯瞰的に捉えることで、新たな商品開発ができるはずだ。
「広い視野で物事を捉えること」という意味での使用例です。まるで上空から下の世界を見下ろすように、広い視野を持って世の中の全体像を把握する、というようなニュアンスです。対象物から距離をおき、冷静かつ客観的に物事を考えることがポイントです。
3:自分自身を俯瞰できたことで、些細なことで一喜一憂することがなくなりました。
「自分を俯瞰する」という使い方もありますね。自分の考えや経験のみに縛られているとだんだん視野が狭くなり、打開策が見つからないという負のスパイラルに陥ることもあります。そんなときに、自分自身の状況を客観的に捉えると、良い解決策が思いつくかもしれません。このように物事の全体像を把握して、本質を掴む能力のことを「俯瞰力」といいます。
類語や言い換え表現とは?
「俯瞰」という言葉以外にも、「高いところから見下ろすこと」や「広い視野で物事を捉えること」という意味を持つ言葉があります。主な言い換え表現をチェックしてみましょう。
1:鳥瞰
「俯瞰」によく似た言葉に「鳥瞰(ちょうかん)」があります。意味は、「鳥が空から見おろすように、高い所から広い範囲を見おろすこと」「全体を大きく見渡すこと」です。また、まるで鳥の目でみた景色のように、市街や地形などを描いた図のことを「鳥瞰図(ちょうかんず)」といいます。
・山頂から市街を鳥瞰する。
・日本経済を鳥瞰する。
2:展望
「展望(てんぼう)」とは、「遠くまで見渡すこと」「社会の動き、人生の行く末などを見渡すこと」です。「展望」と「俯瞰」の違いとしては、前者は幅広く見渡す様子を指すのに対し、後者は高いところから見下ろす様子を表す点です。
・屋上から市街を展望する。
・将来に対する展望がない。
3:瞰視(かんし)
「瞰視(かんし)」とは、「見下ろすこと」です。「瞰」も「視」も、「見ること」を表す言葉なので、「俯瞰」がもつような「広い視野で物事を捉える」という意味はありません。一般的にはあまり使われる機会の少ない言葉ですね。
・高層マンションの屋上から、市街を瞰視した。
4:大局
「大局(たいきょく)」とは、「物事の全体のありさまや、成り行き」「囲碁で、部分でなく大づかみにみた勝負の局面」を指します。「俯瞰」と意味が類似しているのは、1つ目の「物事の全体のありさま」という意味です。
・戦争によって変動する時代の大局を見た。
英語表現とは?
「俯瞰」の英語表現もみていきましょう。「景色を見下ろす」という意味を伝えたい場合は、「over look」が適切です。「~を見晴らす」「~を見渡せる」などの意味があります。
「This window overlooks the garden(この窓から庭が見渡せる)」「Miles of landscape could be seen from the overlook(その小高い所からは何マイルにもわたる景色が見渡せた)」。
また、「広い視野で物事を捉える」ことを伝えたい場合は、以下のように表現できます。
「put things in perspective(広い視野から物事を見る)」
「need to attempt to think about the larger picture(広い視野で物事を考えようとすることが必要である)」
「think expansively(広い視野で考える)」
「take a larger view of history(歴史をより広い視野で見る)」
「develop a broad vision(広い視野を養う)」
最後に
「高いところから見下ろす」「広い視野で物事を捉えること」という2つの意味を持つ「俯瞰」。すでに「見る」という意味が含まれているので、「俯瞰で見る」といってしまうと二重表現となってしまいます。気づかぬうちに誤用してしまわないように、「俯瞰的に捉える」「俯瞰的に考える」という表現を覚えておきたいですね。ビジネスでも頻出の「俯瞰」。この機会に正しい使い方をマスターしてみてはいかがでしょうか?
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