【目次】
・こどもの日に鯉のぼりを飾る意味は?
・鯉のぼりの歴史とは
・鯉のぼりはどう選ぶ?
・鯉のぼりについての疑問
・鯉のぼりは子どもの成長を願うもの
こどもの日に鯉のぼりを飾る意味は?
こどもの日といえば、鯉のぼりを連想するという方も多いでしょう。とはいえ、こどもの日になぜ鯉のぼりを飾るのかはあまり知られていないかもしれません。鯉のぼりを飾るのは中国の故事が由来で、カラフルな色や吹き流し、矢車といった付属品にも意味があります。
ここでは、こどもの日に鯉のぼりを飾る意味について紹介します。
中国の故事が由来
鯉のぼりの由来は中国の故事とされています。中国最古の王朝とされる夏王朝が栄えたころ、黄河には龍門と呼ばれる激流の難所がありました。そこを登り切った魚は竜になれるといわれており、あるとき一匹の鯉が激流に逆らいながら竜門を登りきり、竜へと変身して天に昇ったという伝説があります。
登竜門(とうりゅうもん)と呼ばれる伝説で、これが鯉のぼりの由来です。鯉のぼりは登竜門伝説にあやかり、立身出世の象徴として飾られるようになりました。
登竜門は、突破すれば出世につながる難しい関門という意味の慣用句としても広く用いられています。
色はそれぞれ家族を表す
鯉のぼりは江戸時代から広まり、最初は息子を意味する黒の真鯉のみでした。それが時代とともに緋鯉や子鯉が加わり、現代のカラフルな鯉のぼりになったのです。
鯉のぼりのそれぞれの色には、次のような意味があります。
・黒の真鯉:父
・赤い緋鯉:母
・青や緑:長男や次男
ほかにも黄色やオレンジなど、女の子や三男などの色があります。
吹き流しと矢車にも意味がある
鯉のぼりに飾りとしてついている吹き流しや矢車にも意味があります。吹き流しの色は5色で彩られ、魔除けとして飾られているものです。また、ポールの先端に飾られる矢車も意味のある縁起物です。矢車の上には「回転球」と呼ばれる球状の飾りもつけられています。
吹き流しと矢車の意味について、もう少し詳しく見てみましょう。
吹き流し
吹き流しは真鯉の上に飾られている5色の飾りで、魔除けの意味があるとされています。鯉のぼりより歴史が古い飾りで、戦国時代から「魔除け」としてのぼりに飾られていました。
吹き流しの5色は中国の思想である「五行説(ごぎょうせつ)」に由来するとされています。自然界に存在するものを「木」「火」「土」「金」「水」の5つの要素に分類する思想で、吹き流しの色はこの5つに対応しています。木は青、火は赤、土は黄、金は白、水は黒を表現し、子どもの無事な成長を願って「魔除け」の意味で飾られています。
矢車
矢車は鯉のぼりのポールの先端にあり、風車のような形をした飾りです。中心に向かって数本の矢が刺さっているような形をしており、幸せが四方から訪れることを願うものとされています。また、魔が来たときは矢で射ぬくという魔除けの意味も込められています。
矢車の上には回転する球状の飾りがあり、回転しながら神様に男の子がいる家であることを知らせるという意味を持つものです。
鯉のぼりの歴史とは
鯉のぼりの歴史は、江戸時代に始まるとされています。もともと武家で行われていた端午の節句にのぼりを飾る習わしがあり、それが庶民に伝わって鯉のぼりになりました。当初は和紙で作られた素材で、鯉の絵も手書きだったということです。
鯉のぼりが飾られるようになった由来など、鯉のぼりができた歴史について詳しく紹介します。
端午の節句の「のぼり」が始まり
鯉のぼりは端午の節句に飾られていたのぼりが始まりです。端午の節句は別名「菖蒲の節句」と呼ばれていました。「菖蒲」が「勝負」につながるということで、武家では重要な意味を持たれていたのです。
それがやがて男の子の成長や立身出世を願うための行事となり、のぼりも子どもの成長を祝うために飾られるようになりました。
その後、裕福な庶民層が武家の風習に対抗するため、のぼりを飾るようになったとされています。
庶民に広まり「鯉のぼり」になる
庶民にも広まり始めたのぼりは、中国の伝説をもとに立身出世のシンボルである鯉の絵が描かれるようになりました。江戸時代の鯉のぼりはまだ、長男を表す黒い真鯉のみで、赤い緋鯉が追加されたのは明治時代以降です。
さらに華やかな鯉が追加されるようになったのは昭和に入ってからで、昭和39年に開催された東京オリンピックの際に、五輪マークから着想を得てさまざまな色の鯉のぼりが作られたことが、今日の多彩な鯉のぼりの先駆けとされています。
鯉のぼりはどう選ぶ?
鯉のぼりは戦前までは和紙素材で雨などに弱いものでしたが、戦後に木綿製が登場し、その後はさまざまな素材で作られるようになりました。また、庭に飾るものだけでなく、マンションなどでも飾れるようにベランダや室内用もあります。
ここでは、鯉のぼりの素材や形状など、購入するときの選び方について紹介しましょう。
素材はいろいろ
鯉のぼりの素材は主に綿とナイロン、ポリエステルがあります。従来は綿が主流でしたが、現在は一部の高級品を除いてあまり流通していません。現在の鯉のぼりはナイロンかポリエステル製で、どちらも軽くて扱いやすいのが特徴です。
屋外に飾るため紫外線の影響で色褪せなどの劣化があり、ナイロン素材の方は2〜3年で色褪せが始まります。発色を定着させているポリエステルの方が比較的耐久性が高く、はっ水加工を施しているものであれば8年程度まで長持ちさせることも可能です。
ベランダ用や室内用もある
鯉のぼりは大きく分けて庭用と、マンションやアパートなどで飾れるベランダ用があります。庭用は地面に杭で固定して飾るもので、ベランダ用は簡単に設置できるスタンドタイプや手すりに金具で固定するタイプから選べます。
鯉のぼりは風が吹くと横に広がるため、狭い場所に設置するときは注意しましょう。特にマンションやアパートのベランダでは隣のベランダが近いため、気をつけてください。
室内用の鯉のぼりもあります。さまざまなサイズがあり、玄関や棚の上に飾るタイプから、クリスマスツリーのようなスタンドタイプ、天井から吊るせるタイプなどさまざまです。室内用は紫外線や雨にさらされない分、劣化しづらく、設置などの手間もありません。部屋に合わせて好きなタイプを選べ、室内で気軽に鯉のぼりが楽しめます。
鯉のぼりについての疑問
鯉のぼりを飾るときは、どの順番で飾っていいのか迷うかもしれません。鯉のぼりは家族を表すため、飾る順番も決まっています。また、端午の節句は男の子の成長を祝うという意味合いがあることから、女の子だけの家庭でも飾っていいのか気になる場合もあるでしょう。
ここでは、鯉のぼりについての2つの疑問についてお答えします。
鯉のぼりを飾る順番は?
鯉のぼりは家族を表すもので、飾るのは一般的に、上から黒、赤、青の順番です。大きさも一番上の黒が大きく、下に行くに従い小さくなります。一番上の黒い真鯉は父親を表し、父親が大黒柱という日本古来の考えに基づくものです。
吹き流しなどほかの飾りも合わせた順番は、以下のようになります。
・ポールの先端に回転球で、その下に矢車
・吹き流し
・黒い真鯉
・赤い緋鯉
・青い子鯉
女の子だけでも飾っていい?
女の子だけの家庭でも、鯉のぼりを飾ることに問題はありません。5月5日は端午の節句とも呼ばれ、男の子のお祝いという印象があります。確かに古くからある端午の節句は男の子の成長を祝う日ですが、こどもの日とは別のものです。
こどもの日は1948年(昭和23年)、「こどもの人格を重んじ、子供の幸福を願うとともに母に感謝する」という趣旨で制定された法律で、男の子と女の子の関係なく子どものお祝いをする日です。女の子の成長を祝って鯉のぼりを飾ることもできるため、子どもが望むときは飾ってあげるとよいでしょう。最近ではピンク色の子鯉など、女の子用の鯉のぼりも販売されています。
鯉のぼりは子どもの成長を願うもの
鯉のぼりをこどもの日に飾るのは、中国の故事に由来しています。激流の滝を昇って竜になった鯉の伝説から、子どもの成長を願って鯉を描いたのぼりが飾られるようになりました。
鯉のぼりは家族の象徴で、真鯉は父親、緋鯉は母親を表します。子鯉は青色ですが、女の子のいる家庭ではピンク色の鯉のぼりを選ぶのもよいでしょう。鯉のぼりは庭用やベランダ用のほかに手軽な室内用もあります。次のこどもの日は、ぜひ鯉のぼりを飾ってみてはいかがでしょうか。
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