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2021.06.08

人間関係… 人との距離感を適度に保つ“心の境界線”って?【心理学博士・カウンセラー監修】

日々の生活の中で人間関係は避けられないもの。人付き合いに疲れたら、どうしたらいい? 『ほどよい距離の見つけ方』の著者・古宮昇さん(心理学博士&カウンセラー)に教えていただきました。

人との距離を取りすぎたり、依存しすぎたりしないために

前回、心に境界線を引くことが大事ですというお話しをしました。

前回記事はこちら

心の境界線の引き方には、いくつかコツがあります。その1つが「ちょうどいい」あるいは、「適度に」引くという点。

なかには自分の心を守るために、境界線をバリケードのように張り巡らせる人がいます。かつて、私がそのタイプでした。どんな相手に対しても心を開かず、心の中に固すぎる境界線を引いていました。

そのため、学校の先生や友人には「何を考えているかわからない」「近づきがたい」というような印象を与えていたことも。今振り返ってみて、とてもつらく寂しい生き方をしていたと思います。

大切な「2つの心の境界線」で変化を

(c)Shutterstock.com

皆さんにお伝えしたいことは、

心の境界線を引いていない人は、ちゃんと引ける人に、
心の境界線を強く引きすぎる人は、適度に引ける人に、

なりましょうということです。

心の中で境界線を引く上で知っておきたいことが境界の種類。境界には、次の2種類があります。

1つが「人との間の境界」

例えば、「この人のお手伝いをここまではするけれど、これ以上はしない」など、相手との関係において「自分がどこまでするのか、しないのか」を決めておく境界です。

もう1つが、「自分との間の境界」

例えば、「今日は何時には仕事を終える」「メールチェックは自分の抱えている仕事を終えてから行う」「人が怒ったり悲しんだりしていても、自分まで同じように腹を立てたり悲しんだりしない」というような、自分の価値観や感じ方について、一定の判断をするための境界です。

どちらも適度に境界線を引けるようになるといいですが、まずは、やりやすいほうでかまいません。今日から人との間の境界と、自分との間の境界を意識してみましょう。きっと相手との接し方、自分の感じ方に変化があらわれるはずです。

自分の「心の特徴」を知ることが第一歩!

(c)Shutterstock.com

あなたは心理面や人間関係において、どのようなパターンを持っていますか? 自分の心の特徴について深く知ることが、人との依存的な関係から抜け出す大きな一歩になります。

あなたには、次の3つの心理傾向はありませんか? いずれか、1つでも当てはまると境界線を引くことにためらいを感じます。では、順に見ていきます。

1:「誰からも好かれ、認められなければ」と思ってしまう

強い自己無価値感があると、境界線を引きづらくなります。自己無価値感とは、心のどこかで「自分は価値のない人間だ」と感じるということ。何かにつけてダメ出しをしてしまい、自己肯定感が低くなってしまいます。

ありのままの自分ではダメだと感じているため、「価値のある人間になろう」として無理をする傾向が強いのです。

例えば、
「誰からも好かれ、認められなければならない」
「いつも明るく愛想よくしなければならない」
美しくなければならない」
「仕事の成果を出さなければならない」

こんなふうに信じていて必死に頑張ります。そうして無理を続けて健康を害する人もいます。

心の底にある「自己無価値感」を癒やすことで、「~せねばならない」という強迫観念から解放されて、人との間にちゃんと一線を引けるようになります。

2:「自分を大切にする」という言葉がピンとこない

自分の本音の感情や欲求に気づいて、ちゃんと自分をいたわるのが苦手だと、境界線を引きにくくなります。「自分を大切にするとはどういうことかピンとこない」と感じていることも珍しくありません。

また、「自分を大切にする」ためには、その理由となる相手が必要な人もいます。「この人には私が必要だ。だからこの人のために自分の健康に気をつけよう」というように。

本音にフタをしている傾向があります。私の著書『「ほどよい距離」が見つかる本』の3章や4章などを参考にして、本音を言える人間関係をつくるヒントを得ましょう。

3:「人を幸せにしない限り、自分も幸せになれない」と思っている

境界を引くのが苦手な人のなかには、「私はあなたなしでは空っぽだ」という強い感覚を抱いていることがあります。

さらに、「あなたが幸せでない限り私は幸せにはなれないし、あなたが不幸ならそれは私の責任だ」とも信じていることがよくあります。そのように信じていると、その信念が現実になって苦しみます。

これは人の相談に乗ったり面倒をみたりするときに、現れやすい信念です。次第に相手の悩みに巻き込まれていき、必要以上に責任を感じたり、罪悪感を抱いたりして、しばしば人間関係が息苦しいものへと変わっていきます。

とくにカウンセラーを目指そうと考えている人や、カウンセラーなど人の心の支援をする人は、この信念を手放すことが、適切なカウンセリングや心の支援をする上で欠かせません。

「自分は空っぽだ」と感じていませんか。この思いは、境界線を引けない人の多くが感じる思いです。

なかには自分一人では解決できない課題や、癒やすのが難しい心の痛みもあるでしょう。繰り返すようですが、心の痛みの中心部は、無意識の領域に抑え込まれていることが多いからです。

こうした領域のセラピーはカウンセラーの力を借りながら癒やしていくことをお勧めします。

(c)Shutterstock.com

いかがですか。ご自身に当てはまりそうな心理的傾向はありましたか。

誰しも、頼みごとをされると断れない、嫌なのにノーと言えない、その一方で、ときには相手を冷たく突き放してしまうなど、心が揺れる場面はあるものです。

でも、こうした場面が頻繁に現れて疲れていたら、あなたの心がSOSを出しているのかもしれません。そんなときこそ、人と自分との間に境界線を引く絶好のチャンスです。心の境界線を引くための第一歩を踏み出しましょう。きっと心が軽くなり、人間関係もグンと楽になるはずです。応援しています!

『「ほどよい距離」が見つかる本』発売中!

古宮 昇・著『「ほどよい距離」が見つかる本』

¥1,540(税込)すばる舎

TOP画像/(c)Shutterstock.com

心理学博士&カウンセラー 古宮 昇

心理学博士/公認心理師・臨床心理士/カウンセリング・ルーム輝(かがやき)主宰。米国州立ミズーリ大学コロンビア校より心理学博士号(PhD)を取得。

米国にて、州立児童相談所、精神科病棟などで心理カウンセラーとして勤務し、州立ミズーリ大学心理学部で教鞭を執る。

日本に帰国後は、心療内科医院および大学の学生カウンセリング・ルームのカウンセラー、大阪経済大学人間科学部教授を経て、現在は神戸にてカウンセリング・ルーム輝室長。オンラインと対面でカウンセリングを行っている。また本格的な心理学とスピリチュアルな智慧を通して幸せで充実した人生に変える『スピリチュアル心理学オンライン・アカデミー』を教えている。

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