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「ご厚情」の意味や使える相手を知ろう
「ご厚情」は一見、字面が堅苦しく見えますが、「いつもありがとうございます」という意味を丁寧に表現しているため、言われて嫌な気持ちになる人はほとんどいない、素敵な言葉のひとつと言えます。正式なビジネス文書をはじめ、多くのビジネスシーンで使用できる言葉なので、うまく使いこなして、感謝の気持ちを丁寧に伝えられるようになりましょう。
まずは「ご厚情」の意味や、どんな相手に使う言葉なのかから見ていきましょう。
◆ご厚情の読み方と意味
「ご厚情」という言葉は、「ごこうじょう」と読みます。「厚情」は厚いなさけや、心からの深い思いやりの気持ちという意味。「厚情」に、接頭辞の「ご」を付けた尊敬表現が、「ご厚情」です。目上の相手から受けた「厚い情け」や「深い思いやり」を意味します。
また、「ご厚情」は、ひらがなの「ご」ではなく漢字の「御」を使って「御厚情」と書く場合もあります。使い分けに関して特に決まりはありません。正式なビジネス文書の場合は「御」を使い、堅苦しいと感じた場合は「ご」を使うとよいかもしれませんね。
◆ご厚情を使える相手
「ご厚情」は基本的にフォーマルな場面で使うフレーズです。尊敬表現であり、ビジネスシーンでは自分よりも目上である取引先やお客様に対して使われる言葉です。社内や上司・先輩に対して使うのは少し大げさな印象になるため、適切ではないとされています。
また、結婚式やお葬式などの式典で使われることも多く、ビジネスシーンではメールや文書のほか歓迎会・送別会・取引先や顧客への年賀状・暑中お見舞いなどでも使われます。
「ご厚情」を使う時の注意点とは?
「ご厚情」を使う時の注意すべき点について、解説していきます。
◆「ご厚情してください」とは言わない
「ご厚情」は、先述した通り、目上の相手から受けた「厚い情け」や「深い思いやり」を意味しています。ですから、「ご厚情してください」といってしまうと、「深い思いやりをください」という意味になってしまい、大変おこがましいおかしな表現に。「ご厚情してください」「ご厚情ください」という表現は使えない、と覚えておきましょう。
◆前後の言葉と意味が重複しないようにする
「ご厚情」は、「深い思いやり」という意味。気持ちを表す意味が含まれているため、同じ意味の言葉と一緒に使ってしまうと意味が重複しています。例えば、「ご厚情のお気持ち」「深いご厚情」「ご厚情心」「ご厚情な思いやり」といった使い方はできません。「ご厚情」を使う際には、前後の言葉の意味が重複していないか、確認するようにしたいもの。
「ご厚情」の使い方を例文で見よう
「ご厚情」を使用した例文をチェックして、実際に使えるようにしましょう。
「今後とも変わらぬご厚情を賜りますようお願い申し上げます」
「ご厚情賜る」は、相手から「厚い情けを受ける」という意味となります。「ご厚情を賜る」は日常会話では使うことが多くない表現ですが、手紙やスピーチなど改まった場面で使える言葉です。年賀状やお礼状では「日頃から格別のご厚情を賜り~」といったように、挨拶文として、使うことができますね。主に感謝の気持ちを述べるときに使います。
「寛大なるご理解いただきました上に温かい励ましのお言葉まで頂戴し、ご厚情に痛み入ります」
「痛み入る」とは、「相手の手厚い配慮・好意などに対して、深く感じ入る、恐縮する」という意味。「ご厚情痛み入る」は、相手の厚い情けや深い思いやりに対する「痛いほどの感謝の気持ち」を表しています。一般的に「相手の親切・好意に恐縮する」といった意味で使います。「痛み入ります」は、他人からの好意や親切に感謝しつつも、自分にはその好意がもったいないと思い、申し訳なくなるということを表現。「痛み入ります」は目上の相手に対しての「感謝」の気持ちを表すことが出来る言葉です。
「ご厚情にお応えすることができるよう、精一杯頑張ります」
「応える」とは、働きかけに対して、それに添うような「反応を示す。応じる。報いる」という意味。「ご厚情にお応えする」といった場合は「相手の親切心に応じる」という意味になりますね。「ご厚情にお応えすることができるよう~」「ご厚情にお応えすることができず~」といったように使うことができます。相手の厚情に対して同意するか、もしくは断るときに使うことができる言い回しです。覚えておきましょう。
「ご厚情」と「ご厚誼」・「ご高配」の違い
「ご厚情」に似た言葉で「ご厚誼」という言葉があります。「ごこうぎ」と読み、「情愛のこもった親しいつきあい・厚いよしみ」という意味。「ご厚情」同様、上司やお世話になっている取引先の方など、目上の方に対して、感謝を伝える時に使う言葉です。
使い方は似ていますが、それぞれ「ご厚情=親切・思いやり」「ご厚誼=親しいお付き合い」という意味を持っているため、微妙にニュアンスが違います。
使い分けの方法の一つとしては、書き出しの挨拶に「ご厚情」、結びの言葉に「ご厚誼」を用います。意味合いとしては、どちらを使っても問題ありません。ただし、ひとつの文書の中で何度も同じフレーズを使用すると、しつこい印象を与えかねません。せっかく感謝の気持ちを伝えるのですから、使い分けられるようになるのがベター。
また、「ご高配」も似た意味を持つ言葉です。他人を敬って、その心配りをいう語。ビジネスシーンでは、「平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます」という挨拶をよく見かけるのではないでしょうか? 主にビジネス文書や挨拶文で用いられるので、定型文として覚えておくと良さそうです。
「ご高配」は、他人を敬う言葉なので、自分の行為に対して使うことはできません。基本的に、目上の相手や顧客に対して使う言葉です。自分よりも立場が下の相手には使いません。
「ご厚情」と「ご高配」は意味も使い方も非常によく似ています。違いはというと、「ご厚情」は親切心や思いやりに対する感謝の比重が大きく、「ご高配」は心配りとそれに伴う行為・結果に対して感謝を示すニュアンスが強いという点です。相手や場面に合わせて使い分けてみてくださいね。
「ご厚情」のその他の類語もチェック
「ご厚誼」や「ご高配」の他にも、「ご厚情」と似た意味を持つ言葉があります。様々な場面に合わせて、感謝を伝えられるよう、覚えていきましょう。
「ご厚意」
「ご厚意(ごこうい)」とは思いやりのある心。他人が自分に示してくれた気持ちについていう「厚意」に、接頭辞の「ご」を付けた敬語表現。目上の人や取引先に対しても使用できます。ビジネスメールや手紙の挨拶文をはじめ、話し言葉としても使用可能です。
使い方は、「ご厚情」とほぼ変わりません。違いといえば、フォーマルな場面で使う「ご厚情」よりもややカジュアルなニュアンスであるという点。「ご厚情」だとかしこまりすぎる場合には、「ご厚意」を使うと良いでしょう。
「ご厚志」
深い思いやりの気持ちや、心のこもった親切という意味の「厚志(こうし)」に、接頭辞の「ご」を付けた敬語表現。ビジネスシーンで使う「ご厚志」は「心遣いを形で示したもの=お金を包むこと」を指すことが多いです。送別会や歓迎会などの主賓もしくは上司や役員が、参加費の代わりに幹事に渡すお金のことを「ご厚志」といいます。
もし、「ご厚志」を頂いた場合は、乾杯の前の挨拶時に紹介するとよいでしょう。さらに、受け取った金額には触れないことがマナーです。「ご厚情」と比べて使う場面が限定されますが、ぜひ覚えておきたい言葉ですね。
「ご配慮」
「ご配慮」とは、心をくばることや心づかいという意味を持つ「配慮(はいりょ)」の敬語表現で、相手の心遣いに対する感謝の言葉として用いられます。「ご厚情」は、目上の人に対して用いますが、「ご配慮」は目上の人だけでなく、同僚など同等の立場の人に対しても使用が可能。
お礼を伝える際に、「ご配慮いただき」と付け足すことで、相手の心配りや行為に対する感謝の気持ちがより伝わりやすくなりますよね? ぜひ、感謝の気持ちを伝える際は使ってみてください。
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「ご厚情」の英語表現も知ろう
「厚情」は英語で、なんと表現するのがいいでしょうか? 厚い情けという意味から、compassion(哀れみ)。心からの深い思いやりの気持ちから、kindness(親切さ)、courteous consideration(丁寧な配慮)などが近いニュアンス。「ご厚情」は「相手から受けること」なので、yourを付けて、your kindnessなどと表現するといいですね。
最後に
いかがでしたでしょうか? 「ご厚情」は、相手の「厚いなさけ」や「心からの深い思いやり」を意味する言葉です。尊敬の表現であるため、フォーマルな場面や書面において使えることが分かりましたね。「ご厚情」をはじめ、相手に感謝を述べる言葉はいくつもあります。相手や場面に合わせた適切な言葉を使って、感謝の気持ちを述べることができるようにしていきましょう。
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