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「遠交近攻」の意味や読み方
「遠交近攻」(えんこうきんこう)とは、「遠くの国や勢力と友好関係を結び、近くの敵から順に攻める」という戦略を表す四字熟語です。古くは、戦争や外交の場で使われていました。
「交」は交際、「攻」は攻撃するという意味です。現代は主に、ビジネス戦略や交渉術、組織運営など、対立や競争をどのようにコントロールするかという広い意味で用いられます。
えんこう‐きんこう〔ヱンカウ‐〕【遠交近攻】
出典:小学館 デジタル大辞泉
遠い国と親交を結び、近い国を攻める外交政策。中国の戦国時代に、魏ぎの范雎はんしょが唱えたもの。
「遠交近攻」の由来となった故事
「遠交近攻」の意味は、中国・戦国時代の外交戦略に由来します。とくに有名といえるのが、秦(しん)が用いた国家戦略です。
当時、強国だった秦には多数の敵国が存在していました。秦の昭王(しょうおう)に対し、魏(ぎ)の政治家だった范雎(はんしょ)は、以下のような戦略を進言します。
・距離のある国とは友好関係を結び背後からの攻撃を防ぐ
・直接、接している国から順に攻略していく
この戦略により、秦は無用な戦争を避けることに成功し、最終的に中国統一を成し遂げたとか。
范雎の考えは「遠交近攻」の言葉と共に、効果的な戦術を示す故事として現代まで伝えられています。

「遠交近攻」の使い方と例文
「遠交近攻」は、ビジネス戦略や人間関係を円滑に進める手段として用いられるのが一般的です。ビジネスシーンでは、会議や提案書などに活用できます。
「身近な存在から攻略する」、「敵を減らす順番を考える」といったニュアンスで、以下のように取り入れてみましょう。
・新商品の展開プランだが、遠交近攻の姿勢で市場を広げる予定だ
・全方位に手を広げず、遠交近攻でリスクを抑えながら事業を進めている
・人間関係が複雑なときほど、遠交近攻で身近なトラブルから解決していくのが賢明だ
・すべての部署と一度に対立するのは、理想的とはいえない。まずは遠交近攻で、身近な理解者を増やしていくのはどうだろう
・遠交近攻というように、まずはどこから攻めるべきなのか、優先順位を見極めることも大切だ
「遠交近攻」の対義語「遠水近火」
「遠交近攻」の対義語として上げられるのが「遠水近火」(えんすいきんか)です。「遠くの水では、目の前の火を消せない」という意味をもちます。
対義語を知ると、もとの語句への理解がさらに深まります。ここからは「遠水近火」の正しい意味と使用例について確認していきましょう。

「遠水近火」の意味
「遠水近火」は、遠くの水では火事の役に立たないことを表す四字熟語です。「遠水近火を救わず」ということわざを簡略化した言葉といえます。
転じて、近くにいる人や、即効性のある策略の重要性を意味することも。まず遠方と友好を図る「遠交近攻」とは、反対の意味をもつ言葉です。
由来は、中国の古い思想書「韓非子」(かんぴし)に記された魯(ろ)の君主、穆公(ぼくこう)のエピソードにあるとされます。
穆公は戦略のひとつとして、遠く離れた大国に人質を送り、いざというときに助けてもらう策を講じました。
これに対し、ある大臣は「火事のときに遠い海から水を運んでも、火は消せません。『遠水は近火を救わざればなり』です」と反対します。大臣の言った「遠水は近火を救わざればなり」とは、遠方の人は急場のときに役に立たないという考えのことです。
この大臣の考えは「遠水近火を救わず」「遠水近火」として、現代のスピーチや会議の場面などで用いられている傾向にあります。
「遠水近火」の使い方
「遠水近火」は「遠方の存在はいざというときに頼りにならない」、「緊急事態には即効性のある策が必要」というニュアンスで、以下のように活用できます。
・遠水近火というように、身近に頼れる存在がいると、いざというときに心強い
・システム回線にトラブルが生じたが、各方面に問い合わせをしている間に、部署内の〇〇さんがあっさり解決してしまった。遠水近火とはこのことだな
「遠交近攻」のような戦術にまつわる四字熟語
ビジネスでは、状況に応じた戦略が必要な場面がしばしば訪れます。ここからは、戦略や戦術を表す四字熟語のなかから、現代でも使いやすいものをみていきましょう。
・陽動作戦
・人海戦術
・速戦即決
「遠交近攻」と共に、正しい意味や使用例なども参考にしてください。

「陽動作戦」
「陽動作戦」(ようどうさくせん)とは、本来の目的を隠すため、別の動きで相手の注意を逸らす戦略のことです。おもに、本来の目的と違う行動を、わざと目立つようにおこなう策を意味します。
・競合の目を逸らすため、あえて別分野への進出を発表する陽動作戦を取った
・ライバルに本来の目的を悟られないよう、陽動作戦を仕掛けておいた
ようどう‐さくせん〔ヤウドウ‐〕【陽動作戦】
出典:小学館 デジタル大辞泉
味方の作戦を秘匿し、敵の注意をそらすために、ことさら目立つように本来の目的とは違った動きをする作戦。「おとりを使って陽動作戦に出る」
「人海戦術」
多数の人員を投入し、物量で押し切る戦い方は「人海戦術」(じんかいせんじゅつ)と呼びます。「人海」は、人の多さを海の広さにたとえた言葉です。
おもに、大勢の人が集まって問題に対処する場面や、機械などを使わず大勢の人で物事に当たる場面に適しているといえます。
・大雪が降ったが家の前まで除雪車が入り込めず、家族総出の人海戦術で対処するしかなかった
・トラブルが起きるたびに人海戦術で対応しているが、現場が疲弊し始めている。業務のシステム化を考えるべきなのかもしれない
じんかい‐せんじゅつ【人海戦術】
出典:小学館 デジタル大辞泉
多くの兵員で、損害をかえりみず数の力で敵軍を押しきろうとする戦術。転じて、多人数で物事に対処すること。
「速戦即決」
「速戦即決」(そくせんそっけつ)とは、短期間で勝負を決め、長期戦を避ける戦略のことです。論争などで、物事の決着を短時間でつけることも意味します。
・現場を指揮するリーダーには、ときに速戦即決な対処が求められる
・競合に先手を取られないよう、速戦即決の判断をお願いしたい
そくせん‐そっけつ〔‐ソクケツ〕【速戦即決】
出典:小学館 デジタル大辞泉
持久戦にならないように、短時間で勝負をきめること。また、論争などで、短時間で物事の決着をつけること。
「遠交近攻」やその他の語句をビジネスで活用しよう
「遠交近攻」は、遠くの者と友好関係を結び、近くの敵から順に攻めるという戦略の順序を表す四字熟語です。会議や提案書などに使用すれば、課題の優先順位や目指すべき方向性をシンプルに伝えられます。
状況に応じ、他の四字熟語と織り交ぜながら使うのもおすすめです。言葉への理解を深め、ぜひビジネスシーンで活用してください。
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