「スピンオフ」の意味や語源とは?
映画やドラマ作品で、「スピンオフ」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか? エンターテインメントの世界で使われる印象が強い「スピンオフ」ですが、実はビジネス用語でもあるのです。そこで今回は、「スピンオフ」の3つの意味や、有名な「スピンオフ作品」、類語表現などを紹介します。
語源
「スピンオフ」は、英語の「spin off」に由来します。「spin off」とは、「回転する」という意味の「spin」に、「離れる」という意味の「off」を組み合わせた単語です。物が回転すると遠心力によってくっついていた物体が離れることから、予期せず生まれた「副産物」や「派生物」を指すようになりました。
映画やドラマで使われる「スピンオフ」
「スピンオフ」といえば、映画やドラマ、アニメで使われるイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。映画やアニメにおける「スピンオフ」とは、「人気作品の続編」のこと。特に、本編では脇役だった登場人物が主役として描かれたり、主人公の意外な過去がストーリー化されるなど、本編から派生した作品であることが特徴です。
あえて主人公以外の登場人物の視点から描くことによって、物語の世界観がより多面的で深みのあるものに仕上がるというメリットがあります。
ビジネスで使われる「スピンオフ」
ビジネスにおける「スピンオフ」は、「企業が特定の部門を分離して、別の子会社を作ること」。例えば、事業部などの一部門を独立させて、新会社を設立するケースが当てはまります。元の企業から出資を受けて独立することが多く、新会社の株式が親会社の株主に分配されることが特徴です。事業形態の見直しや、基軸である本社の集中化を避ける目的として行われることが多いようです。
技術開発で使われる「スピンオフ」
科学技術の分野における「スピンオフ」とは、「技術開発で思いがけなく発生する副産物」のこと。さらに、国が宇宙開発や軍事目的で開発した技術を、民間産業に転用することを指します。例えば、元々アメリカが軍事用に開発したGPSが、後にスマホで人の位置情報を確認したり、追跡できるシステムに転用されたケースです。反対に、民間の技術が軍事用に転用されることを「スピンオン」と言います。
有名な「スピンオフ」作品
映画やドラマなどで、有名な「スピンオフ」作品とはどのようなものがあるのでしょうか? 映画作品では、アメリカの冒険映画『ハナプトラ2/伝説のピラミッド』(2001)から『スコーピオン・キング』(2002)が「スピンオフ」作品として製作されました。
また、邦画では、大ヒット映画『踊る大捜査線 THE MOVIE』(1998)から『交渉人真下正義』『容疑者 室井慎次』が製作されたのが有名です。「スピンオフ」作品では、主人公に対抗する悪役や容疑者などが主役になるパターンが定番ですね。
「スピンオフ」作品の類語とは?
映画やドラマなどで本編以外のストーリーを指す言葉には、「番外編」や「外伝」「サイドストーリー」などがあります。それぞれの特徴や違いに着目してみていきましょう。
1:番外編
物語において、本編とは異なる話のことを「番外編」と言います。本編のストーリーの道筋から外れた物語であることが特徴です。「番外」はもともと、「予定されたものではないこと」「普通のものとかけ離れていること」を指します。このことから転じて、本編とはかけ離れた内容の作品のことを「番外編」と呼ぶようになったのかもしれませんね。
主な作品としては、『釣りバカ日誌 番外編』『進撃の巨人 番外編』などが挙げられます。
2:外伝
「外伝(がいでん)」とは、「正式な記録以外の伝記」のこと。本伝に載っていない逸話や神話などを集めたもののことを指します。映画やアニメなどで使われる「スピンオフ」や「番外編」とは違い、中国の説話集などやや硬い内容であることが多いです。また、歴史ものやSF作品では、架空の伝説に重厚なイメージを与えるためにあえてタイトルに「○○外伝」とつけることもあります。
映画では、アクション時代劇『カムイ外伝』、中国の古典文学『水滸伝』を基にした『タイガー・ハンター 水滸外伝』などがあります。
3:サイドストーリー
「サイドストーリー」は、「本編の傍らを流れる物語」というような意味合いで用いられる言葉です。映画やドラマの本編では語られてこなかった物語を「サイドストーリー」と呼ぶことが多いですね。本来であれば、日本語で「外伝」や「番外編」と表現するところを、英語で表現することでより柔らかい響きになります。一般的に学園ドラマや恋愛ものなどで多く使われる傾向があるでしょう。
4:アナザーストーリー
英語の「another」には、「もう一つの、別の」という意味があることから「アナザーストーリー」は、「本編とは別の話」のことを言います。「サイドストーリー」と同じく、元々は「外伝」の代わりに使われるようになった言葉です。しかし近年では、“もう一つの物語”として、本編とは別の結末を迎える作品(SFやパラレルワールドもの)に使われることが多いようです。
主な作品には、『男と女 アナザーストーリー』『ヘブンリー・ブルー 天使の卵 アナザーストーリー』などがあります。
最後に
ドラマや映画で使われるイメージが強い「スピンオフ」という言葉ですが、実は、ビジネス用語でもあったのは意外でしたね。元々の英語表現である「spin off」の意味を覚えておくことで、それぞれの意味のニュアンスを掴むことができるでしょう。
近年では、NetflixやHuluなどの定額制動画配信サービスが普及し、多くの映画やドラマが気軽にみられる時代になりました。それに伴い映画やドラマでは数多くの「スピンオフ作品」が制作されています。「スピンオフ」を見ることで、今まで知らなかった作品の裏側や世界観にどっぷり浸ることができるはずです。皆さんもお気に入りの「スピンオフ」作品を見つけてみてはいかがでしょうか?
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