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「推察いたします」ってどんな意味? ニュアンスを解説
「推察」と聞くと、少し硬い印象がありますよね。基本の意味や、どんな心情を含んだ言葉なのかを整理します。
♦︎「推察」の意味
「推察」の意味は、“他人の事情や心中を思いやること。おしはかること。推量”(出典:デジタル大辞泉/小学館)。
つまり相手の状況や気持ちなどを、断定せずに想像して理解しようとするさまを表します。
したがって「推察いたします」には、“断定しない”というニュアンスが強く、“相手の置かれた状況を尊重します”という趣旨を丁寧に伝える意味があります。
【相手を気遣うとき】「推察いたします」を使う実務上の場面

「推察いたします」が実務上でよく使われているシーンを、例文や言い換え方とともにチェックしておきましょう。
♦︎相手に気配りを伝えたいとき
ストレートに「忙しいですよね?」などと言わずに、相手の負担を気遣う柔らかい表現をしたい場面でもよく使われます。
例文:「ご多忙の折かと推察いたしますが、ご確認いただけますと幸いです」
>>別の表現に言い換えるなら?
「お察しいたします」でもOK。ややカジュアルな言い換え方です。
♦︎トラブルや遅延の背景への理解を示したいとき
トラブル発生時や業務の遅延について、相手を責めずに理解を示したいときにもよく用いる表現です。
例文:「諸事情がおありだったと推察いたします」
>>別の表現に言い換えるなら?
把握している内容に応じてではありますが「事情は拝察しております」と、言い換えられます。
♦︎クレーム対応やお詫びで相手の気持ちを汲み取りたいとき
クレームへの対応やお詫びの場面では、断定を避けながらも相手の感情に寄り添う表現としてよく使われます。
例文:「ご不快なお気持ちであったと推察いたします」
>>別の表現に言い換えるなら?
より感情に寄り添うフォーマルな言い回しなら「ご心中お察し申し上げます」と言い換えても◎。逆に、もう少し言葉を軽くしたいなら「状況は理解しております」でも十分でしょう。
【誤用に注意】「推察いたします」のありがちな間違い

「推察いたします」は丁寧な言葉です。しかし使い方次第で「わかってますよ」と上から言っているように感じさせてしまうこともあるので、気をつけたいもの。ありがちな間違いを確認しておきましょう。
♦︎誤用:根拠なく「推察」を使う
「推察」には相手の状況を想像するニュアンスがありますが、何ひとつ状況を把握していない場面で使うと、“決めつけ”や“思い込み”の印象が強くなり不適切です。
たとえば納期が遅れている相手に対して状況を確認することもなく、いきなり「行き違いがあったものと推察いたしますが〜」などと伝えてしまえば、“あなたが悪いんですよね?”と暗に責めている印象が強まります。
♦︎誤用:相手の気持ちを勝手に決めつける
“推察”である以上は、相手の気持ちを勝手に決めつけるような使い方は好ましくありません。たとえば「ご不満でいらっしゃるものと推察いたします」などと、相手の心情を勝手に代弁するような用法はNG。クレーム対応やお詫びの場面では、相手の心情に対して慎重な姿勢を忘れるべきではありません。
♦︎誤用:同僚や友人に使う
「推察いたします」は近しい間柄ではよそよそしく、距離を感じさせる表現なので不向きです。同僚や友人に日頃の会話で用いてしまえば、違和感を生じさせます。ただし、フォーマルにかしこまるべきシチュエーションであれば使っても問題はありません。
これは失敗!「推察いたします」で赤っ恥の事例

ビジネスシーンでは失礼のない文章を求められがちではありますが「良かれ」と思って使っても、あらぬ誤解を招くケースがあります。筆者が見聞きした事例から、アラサー世代が「やってしまった」エピソードを紹介します。
♦︎失敗:気遣いのつもりが大げさになってしまった
30代前半のAさんが、メールの返信がない取引先に対して連絡をしたときのこと。
「朝、急ぎでメールをしたのですが夕方になっても返信がこないので『ご事情がおありであったものと推察いたします』と書いたうえで、メールを早めに確認してほしいとリマインドのメールを送ったんです。すると担当者がその日は休みをとっていたらしく、夜になって先方からはお詫びのメールが届きました。
でも一連のやり取りにCCで入っていた先輩から、翌日に『急ぎの用事でもないのに即日でリマインドはやりすぎだし、そもそもメールが半日来ないだけで事情も把握していないのに、勝手に推察しているような文もおかしいよ』と指摘を受けました。
気遣いのつもりで書いた一文でしたが、大げさになってしまったようで反省しました」
♦︎失敗:社内チャットで浮きまくった
20代後半のBさんは、日頃から言葉遣いについて上司から指導を受ける機会が多く、いつも敬語には細心の注意を払っていたとのこと。しかし、やらかしてしまい…。
「社内のグループチャットで同僚に簡単な報告をするだけだったのですが、上司も見ているからと思って、普段よりも丁寧な言葉を選んだんです。
そこに『ご多忙のことと推察いたしますが…』と添えたら、同僚たちから『なんか違和感(笑)』と指摘されちゃいました。敬語の温度感って難しいですね、丁寧すぎるのもダメなんだなって勉強になりました」
「推察いたします」は“思いやり”をもって使う言葉
「推察いたします」は、ときに勝手に決めつけているとも受け取られやすい表現なため、相手との距離感や状況への理解を確認しながら使うのがポイントです。
気遣いを示したいときに適しているフレーズで相手の気持ちを断定しないのが特徴ですから、相手との関係を円滑にする潤滑油的な言い回しと心得ておきましょう。
TOP画像/(c)Adobe Stock

並木まき
ライター、時短美容家、メンタル心理カウンセラー。企業研修や新人研修に講師として数多く携わっている。シドニー育ちの東京都出身。28歳から市川市議会議員を2期務め政治家を引退。数多くの人生相談に携わった経験や20代から見てきた魑魅魍魎(ちみもうりょう)な人間模様を活かし、Webメディアなどに執筆。



