大局観とは?
ビジネスにせよ、政策にせよ、人生にせよ、何かを始める・続けていくにあたっては、現状を把握し、未来を長期的に予測する力が重要になってきます。つまり、大局観が必要というわけです。
この記事では、「大局観」という言葉の意味や英語表現、大局観がある・ない人の特徴などについて見ていきましょう。
「大局観」とは、物事の全体的な状況や成り行きに対する見方や判断のこと。言葉の使い方としては、「あの社長には、業界に対する大局観がない」「大局観の欠いた戦略」といった表現がありますね。
また「大局観」という言葉は、囲碁や将棋などで、「ある局面における優劣の判断や形勢の見方」という意味でも用いられますよ。
大局観がある人の特徴について
それでは、大局観がある人とは一体どのような人なのでしょうか? その特徴を紐解いていきましょう。
1:長期的視点に基づいて考える
大局観がある人は、目先のことだけにとらわれるのではなく、長期的視点に基づいて考えて行動します。短期的に見ると合理的でも、長期的に見ると不合理なことはあるもの。物事が長期的にどう変化していくのかを予測しつつ、逆算して今はどうすべきかを判断できるというわけです。
2:多面的に物事を見ることができる
物事には、様々な側面があります。自分にとって都合のいい側面もあれば、悪い側面もある。前から見ると立派な建物だったが、横から見ると張りぼてだった。大局観がある人は、多面的な観点を持っています。
なるべく多様な観点から物事を見ることができれば、一つの視点しかない場合に比べて、本質により一層迫ることができるのです。また、視点が多様なので得られる情報も多くなり、判断材料が増えます。
3:物事の本質をつかんでいる
大局観がある人は、物事の全体像をつかめるので、物事の本質をとらえることができます。また、日ごろから長期的にかつ多面的に物事を見る習慣がついているので、異なる分野でも物事の見方を応用できるでしょう。
物事の本質を理解するというのは、すぐにできることではありません。それは、いろいろな知見を集めて「こうでもない」「ああでもない」と自問自答しながら、本質に迫るというプロセスが必要です。深く考えていく中で、理解に至るまでの事実を積み上げていき、自分オリジナルの大局観を持てるようになっていきます。
大局観がない人の特徴について
では、対照的に大局観がない人には、どのような特徴があるのでしょうか? 確認していきましょう。
1:短期的な思考
大局観がない人は、目先のことしか考えていません。「深く物事を考えない」とも言えるでしょう。自分にとってメリットになりそうなことがあれば、すぐに飛びついてしまう傾向にあります。
例えば、「絶対もうかる」とか「あなただけに特別」といったうまい儲け話を吹っ掛けられて、うっかり信じ込んでしまい、挙句の果てに何百万円も失うことになった… というような事件は、たびたびニュースで話題になりますよね。
よくよく考えてみれば、お金もうけに限らず、どんなことでも「絶対」というのは基本的にありえないことでしょう。確率論で言えば、何割かは失敗してしまうもの。しかし、それに考えが及ばないのが、短絡的思考に陥ってしまっている状態というわけですね。
物事は様々な観点から見て、ある程度時間をかけて総合的に判断するといいでしょう。自分では判断できないのであれば、信頼できる人と相談するという手もありますよ。
2:行動の指針となる軸がない
大局観がない人は、自分の中に行動の原理となる「軸」がないのも特徴と言えます。軸がないので、周りの意見にも何となく流されてしまうのです。自分の中で明確な基準がないので、考えがぶれてしまうことがあります。
自分は何が正しいと思うのか、どう生きていくべきなのかといったことを自問自答しなければ、軸というのは形成されません。自分の中に軸ができれば、ぶれることなく物事を見ることができるようになります。要するに「考える」ということですね。
大局観と未来予測
さて、大局観で重要なことは「いかに良い未来につながるか」ということです。未来予測がキーワードになってくるでしょう。
そして、大局観というのは立場によって具体的な内容が変わるものであることを念頭に置く必要があります。例えば、経営者・天文学者・文化人類学者・官僚が持っている大局観というのは、それぞれの内容に差異があるものです。各々が意識する時間のスケールの違いも見逃せません。
このように、大局観によって時間的なスケールの違いがあることを念頭に置いた上で、総合的に判断することが重要になります。どのような未来が予測されて、その予測される未来の中で自分たちはどのような状況にいるのが望まれるのかを考えるといいでしょう。「予測される未来」と「期待される未来」を分けてみるわけです。
大局観の英語表現について
大局観は英語でどのように表現するのでしょうか? それについても、確認しておきましょう。
1:big picture
「picture」には、形成・状況・実態という意味があります。つまり「big picture」で「大きな実態」、すなわち全体像という意味につながるわけですね。
例文:
「in the big picture(大局的に見れば)」
「grasp the big picture(大局を押さえる)」
「have the big picture right(大局を正しくとらえている)」
2:wide perspective
「perspective」には、見方・予想・観点という意味があります。このようなことから「wide(広い)」がつくことで、「広い見地」つまり大局観という意味につながるのです。
例文:
「from a wide perspective(大局観から)」
「wide perspective on society(社会に対する大局観)」
最後に
以上、大局観について見てきました。大局観がなければ、目先のことしか見えなくなり、失敗しやすくなります。生活費に困るとはいえ、目先のお金のことしか考えなくなると、簡単に足をすくわれてしまうことも。
ただ、自分オリジナルの大局観を構築するというのは簡単な作業ではありません。日本国内に目を向ければ、超少子高齢化や物価高、経済の低迷などが目につく一方、海外に目を向ければ中国・インド・ロシア・イスラーム圏といったような非西欧の国々が力をつけて、独自の論理の主張をするといった現実もあります。国内・国外ともに先が読めない状態と言えるでしょう。
さまざまなファクター同士の複雑な相互作用の中で、どのような未来が来るのかを予測し、その未来の中で自分はどうあるべきかを地道に考えていく必要がありそうですね。
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