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「ご理解いただけますと幸いです」の意味
「ご理解いただけますと幸いです」は「こちらの状況をご理解いただけるとありがたいです」や「ご納得いただけると助かります」という意味を持つ依頼表現です。
相手に無理やり理解を求めるのではなくあくまで「お願い」というニュアンスで、丁寧な表現にすることによって「理解してほしい」という直接的な要求を和らげる効果が見込めます。
ビジネスメールでは依頼や事情説明の後に添えられることが多く、文章全体が柔らかく締まる効果もあります。
ビジネスシーンでの「ご理解いただけますと幸いです」の使い方

実際のビジネスシーンで使われている文例を紹介します。
例文1:納期を変更するお願いメール
「諸事情により、納品日を〇月〇日に変更させていただきたく存じます。
大変恐れ入りますが、ご理解いただけますと幸いです」
「納期を変える」という、こちら都合のお願いをする場面です。
「ご理解いただけますと幸いです」と添えることで、相手に「迷惑をかけるのは承知していますが、事情を汲み取っていただけると助かります」という依頼のニュアンスになります。
余談ですが、もし「ご了承いただけますと幸いです」を使うと「承諾してください」というやや強い印象になるため、ここでは「ご理解」がより自然でしょう。
例文2:社内での調整を依頼する文面
「今回の会議は進行上の都合により開始時刻を繰り上げさせていただきます。
ご不便をおかけしますが、ご理解いただけますと幸いです」
会議時間の変更は、社内メンバーにとって予定を動かす手間が発生します。
そこで「ご不便をおかけしますが」と前置きし「ご理解いただけますと幸いです」と続けることで、相手の負担を認めながらも理解をお願いする形をとっています。
もしも「ご協力いただけますと幸いです」とすると「必ず参加してほしい」という意味が強くなって柔らかさが欠けるため「ご理解」が最適でしょう。
「ご理解いただけますと幸いです」の不適切な使い方・NG例は?

「ご理解いただけますと幸いです」は定型句のように使えるフレーズ。しかし不適切な使い方もあります。
アラサー世代が間違えやすいポイントを解説します。
多用しすぎるのはNG!
毎回のメールに入れると形式的に見えて、相手から軽く受け取られてしまいます。
「とりあえず書いている定型文」のように受け取られると誠意が伝わりにくくなりますので、重要な依頼や事情説明のときに限定して使うよう心がけましょう。
相手に行動を求めたいシーンでは不適切
「ご理解いただけますと幸いです」はあくまで「状況をわかってほしい」というお願いです。
したがって、たとえば「今回のアンケートにご理解いただけますと幸いです」などとしてしまうと、相手に「回答する」という行動をお願いしたいのに理解を求めるだけで終わってしまい、文章として不適切に。
この場合は「回答いただけますと幸いです」や「回答にご協力いただけますと幸いです」が適切です。
相手に責任を転嫁するニュアンスはNG!
「ご理解いただけますと幸いです」を乱用すると、まるで「理解しないほうが悪い」と受け取られるリスクがあります。特に、トラブル時の謝罪文では注意が必要でしょう。
たとえば「システム障害により取引ができませんでした。ご理解いただけますと幸いです」としてしまうと「システム障害なんだから、理解して当然」という響きが含まれ、不誠実に見えがちです。
トラブル対応時には、より丁寧な表現が求められることから「システム障害によりご迷惑をおかけいたしました。誠に申し訳ございません。復旧までお時間をいただきますが、ご容赦いただけますと幸いです」など、適切な言い回しを用いましょう。
「ご理解いただけますと幸いです」の言い換え例

「ご理解いただけますと幸いです」の言い換えについて、状況に応じて使えるバリエーションを増やしましょう。
言葉の表現を増やすとコミュニケーションに幅が出るだけでなく、無用な誤解も防げます。
♦︎「ご協力いただけますと幸いです」
相手からの理解を得るにとどまらず、相手の行動を求めたい場合には「ご協力いただけますと幸いです」と言い換えたほうがスマートです。
♦︎「ご容赦いただけますと幸いです」
相手に迷惑や不便をかけてしまった or しまう場面では、「理解」だけでなく丁寧な謝罪表現を使いましょう。
「申し訳ない」という気持ちを込めた言葉を用いることで、無用な反発を防げます。
♦︎「ご理解賜りますようお願い申し上げます」
目上の相手や取引先などには、さらに丁寧な表現が適切な場合もあります。「いただく」を「賜る」に変え、「幸いです」を「お願い申し上げます」に変えると、ニュアンスは似ていても格段に改まった表現に。
公式文書や案内文でも使える文面です。
「ご理解いただけますと幸いです」は使いどころを見極めて
「ご理解いただけますと幸いです」は丁寧で便利な表現ではあるものの、万能なフレーズではありません。
・理解“だけ”を求める場合に限って使う
・了承・協力・容赦といった別の表現と混同しない
・謝罪の場面では誤用に気をつけ、誠意をしっかり示す
といったポイントを踏まえながら、相手への配慮を忘れない使用を心がけましょう。
TOP画像/(c)Adobe Stock

並木まき
ライター、時短美容家、メンタル心理カウンセラー。企業研修や新人研修に講師として数多く携わっている。シドニー育ちの東京都出身。28歳から市川市議会議員を2期務め政治家を引退。数多くの人生相談に携わった経験や20代から見てきた魑魅魍魎(ちみもうりょう)な人間模様を活かし、Webメディアなどに執筆。