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わずかな時間を、つい軽んじて見過ごしてしまうことはないでしょうか? 「一寸の光陰軽んずべからず」という言葉は、時間の価値を思い出させてくれる表現です。勉強や仕事、そして日常のささやかな場面でも、時間との向き合い方を見直したい人にとって、大切な手がかりとなるかもしれません。
意味や由来、日常での使い方を確認しながら、時間の重みについて考えてみましょう。
「一寸の光陰軽んずべからず」の意味と由来|時間の価値を伝える言葉
「一寸の光陰軽んずべからず」とは、どんな意味が込められた言葉なのでしょうか? まずは言葉の、読み方と意味から確認していきます。
「一寸の光陰軽んずべからず」の読み方と意味
「一寸の光陰軽んずべからず」は、「いっすんのこういんかろんずべからず」と読みます。辞書には、こう書かれています。
一寸(いっすん)の光陰(こういん)軽(かろ)んずべからず
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
わずかな時間でもむだに過ごしてはいけない。→少年老い易(やす)く学成り難(がた)し
「一寸」は長さの単位ですが、ここでは「わずかな時間」を表します。「光陰」は、時間や月日の流れをあらわす言葉です。「光陰矢のごとし」という表現があるように、時間はあっという間に過ぎ去ってしまうという感覚が込められています。
つまり、「一寸の光陰軽んずべからず」は、わずかな時間でも大切にしようという意味です。
参考:『角川類語辞典』(小学館)

「一寸の光陰軽んずべからず」の歴史的背景
「一寸の光陰軽んずべからず」は、「少年老い易く学成り難し」に続く語句として広く知られています。ただし、一般的に出典とされる中国の思想家、朱熹(しゅき)の詩集に「少年老い易く学成り難し、一寸の光陰軽んずべからず…」という一節は収録されていません。
この句が文献として確認されているのは、室町時代前期の僧・惟肖得巖(いしょうとくがん)が詠んだ漢詩「進学軒」です。江戸時代初期にまとめられた漢詩集『翰林五鳳集(かんりんごほうしゅう)』に収められており、日本で長く親しまれてきた言葉であることがうかがえます。
つまり、この有名なフレーズは、実際には朱熹のものではなく、日本の僧侶によって詠まれた漢詩に由来する可能性が高いということです。明治期の文献などにもたびたび登場し、特に教育の場面で引用されてきた言葉ですが、長く伝わってきた言葉の背景にある、意外な歴史の一面だといえるでしょう。
参考:『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)
「少年老い易く学成り難し」の意味と関係は?
「一寸の光陰軽んずべからず」と並んで引用されることの多い「少年老い易く学成り難し(しょうねんおいやすくがくなりがたし)」は、「若いと思っているうちにすぐ年をとってしまうため、学問はなかなか身につかない。だからこそ、寸暇を惜しんで勉強せよ」という考え方を表しています。
「一寸の光陰軽んずべからず」と「少年老い易く学成り難し」は、ともに時間の尊さを説いており、あわせて使うことで、限られた時間をどう生かすかを問いかけてきます。若いときの学びや、日々の積み重ねを大切にしたいと感じたときに、思い出したい言葉ですね。
「一寸の光陰軽んずべからず」の使い方を例文を通して理解を深める
「一寸の光陰軽んずべからず」を使った、日常で見聞きしやすい例文を挙げます。

「怠けたい気持ちが出てきたときは、『一寸の光陰軽んずべからず』を思い出してください」
「一寸の光陰軽んずべからず」は、気持ちが折れそうなときに思い出したい一節ですね。日々の努力を大切にする気持ちを支える表現として使うことができます。
「毎朝10分でも、積み重ねれば大きいよ。『一寸の光陰軽んずべからず』って言うでしょ」
時間を積み重ねることの大切さを伝える表現として、「一寸の光陰軽んずべからず」を使っています。
ごく短い時間でも毎日続ければ大きな成果につながることを信じて、日々のすきま時間を生していきたい、と思える表現ですね。
「一寸の光陰軽んずべからず」が登場した物語|『名探偵コナン』
「一寸の光陰軽んずべからず」は、多くの物語の中でも引用され、世代を超えて受け継がれてきました。ここでは、『名探偵コナン』での登場シーンについて紹介しましょう。

『名探偵コナン』での登場
「一寸の光陰軽んずべからず」という言葉は、『名探偵コナン』にも登場します。「一刻千金… 一寸の光陰軽んずべからず…」「時は金なり… ーと言いますしね…」というセリフには、限られた時間を無駄にせず、目標を果たそうとする登場人物・諸伏高明(もろふし・たかあき)の姿勢を表現しています。
身近なアニメに「一寸の光陰軽んずべからず」のような古い成句が使われることで、言葉の意味を知るきっかけになりそうですね。
最後に
「一寸の光陰軽んずべからず」は、時間を無駄にせず、大切にしようという思いを伝える言葉です。ふだん何気なく過ごしている瞬間も、意識しながら積み重ねれば、理想の未来を形づくるでしょう。何かを始めるきっかけや、歩みを止めない後押しとして、「一寸の光陰軽んずべからず」を思い出してくださいね。
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