「危急存亡の秋」という言葉を、ニュースや演説で耳にしたことのある人もいるでしょう。ただ、その正確な意味や由来を知らないまま、雰囲気で理解している人も多いかもしれません。
そこで、この記事では、「危急存亡」および「危急存亡の秋」という表現について、意味や背景、使い方を丁寧に解説していきます。
「危急存亡」とは? 読み方と意味を確認
「危急存亡」という四字熟語には、どこか張り詰めた空気を感じさせる響きがあります。まずは基本的な読み方と意味を確認していきましょう。

「危急存亡」の読み方
「危急存亡」は「ききゅうそんぼう」と読みます。すべて音読みで構成された四字熟語です。
「危急存亡」の意味
「危急存亡」とは、危機が迫り、生きるか死ぬかが分かれるような、非常に切迫した状態を指します。運命の分かれ道にあるような状況を表す言葉です。
「危急存亡」の成り立ち
「危急存亡」という言葉は、「危急」と「存亡」という二つの語から成り立っています。
「危急」は、まさに危険が目の前に迫っている状態を指します。一方の「存亡」は、存続するか滅びるかという運命の分かれ目を意味します。
二つの言葉が合わさることで、極めて切迫した状況をあらわす表現になっています。
「危急存亡の秋」とは? 言葉の由来と使い方
「危急存亡の秋」という表現は、日常ではあまり聞き慣れないかもしれません。ただ、その背景を知ると、言葉の持つ緊張感や重みが自然と伝わってきます。ここでは、「危急存亡の秋」が生まれた由来や、「秋」という語の使われ方について見ていきましょう。

「危急存亡の秋」の読み方と意味
「危急存亡の秋」は「ききゅうそんぼうのとき」と読みます。辞書で意味を確認しましょう。
危急(ききゅう)存亡(そんぼう)の秋(とき)
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
《諸葛亮(しょかつりょう)「前出師表」から》生き残るか滅びてしまうかという危ういせとぎわ。
「危急存亡の秋」とは、存続できるか滅びてしまうかという、きわめて重要で緊迫した局面を指します。
なぜ「秋」なのか?
ここでの「秋」という言葉は、季節としての「秋」ではありません。「大事な局面」や「切迫した時期」といった意味で使われています。その際は、「秋」を「とき」と読むのです。
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)
「危急存亡の秋」の由来は?
「危急存亡の秋」という言葉は、『三国志』に登場する諸葛亮(しょかつりょう)の『前出師表(ぜんすいしのひょう)』に由来しています。そこには次のような一文があります。
「今天下三分、益州疲弊、此誠危急存亡之秋也」
これは、「いま天下は三国に分かれ、益州の力は衰えている。まさに国の存続がかかった重大なときである」という意味です。劉備の死後、蜀を再興し北伐を目指すにあたり、諸葛亮が若き君主・劉禅にあてたこの言葉には、国の命運を背負う強い決意がにじんでいます。
参考:『日本国語大辞典』(小学館)
「危急存亡」をどう使う? 現代的な用例を紹介
四字熟語の中には、意味を知っていても使いどころがわからないものもあります。「危急存亡」もそのひとつかもしれませんが、現代の社会や生活の中でも目にする機会があります。ここでは、実際に使われている例を通して、用法を確認していきましょう。

このままでは、会社の未来は危急存亡の秋を迎える
例えば、経営の行方が不透明だったり、選択を誤れば事業の継続が難しくなるような状況で使われます。経済や企業に関する記事などでも見かける表現です。
地球環境は今、危急存亡の秋にある
地球温暖化や生物多様性の損失など、環境問題への懸念が高まる中で、このような表現が用いられることもあります。行動の遅れが将来に大きな影響を及ぼす可能性があるという、切迫した状況に合った言い回しといえます。
最後に
「危急存亡の秋」という言葉を深く知ると、時代背景や感情の重みが感じられるのではないでしょうか。日常ではあまり使われない言葉かもしれませんが、その歴史や意味を理解することで、言葉が持つ微妙なニュアンスをより豊かに感じ取れるようになるでしょう。
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