日々の仕事や暮らしの中で、「これは大きな転機かもしれない…」と感じる瞬間があります。そんなとき、ふと浮かんでくるのが「奇貨、居くべし」という言葉です。「奇貨、居くべし」という言葉には、ある人物の直感と行動が深く刻まれています。
「奇貨、居くべし」の意味や背景に触れることで、今をどうとらえればいいのか考えるための手がかりになるかもしれません。
「奇貨居くべし」とは?|意味と由来を押さえる
歴史ドラマや小説、マンガで目にすることもある「奇貨、居くべし」。この言葉には、ある人物の大胆な発想と行動力が詰まっています。まずは意味や由来を通して、その背景にある物語をひもといてみましょう。

「奇貨、居くべし」の意味
「奇貨、居くべし」は、「きか、おくべし」と読みます。「奇貨居くべし」と表記することが多いでしょう。辞書には次のように記されています。
奇貨(きか)居(お)くべし
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
《秦の商人呂不韋(りょふい)が趙に人質になっていた秦の王子子楚(しそ)を助けて、あとでうまく利用しようとしたという「史記」呂不韋伝の故事から》珍しい品物は買っておけば、あとで大きな利益をあげる材料になるだろう。得がたい好機を逃さず利用しなければならない意にいう。
「奇貨、居くべし」とは、好奇を逃してはならないというたとえとして使われます。

「奇貨、居くべし」の由来は?
「奇貨、居くべし」は、中国の歴史書『史記-呂不韋伝』に記された一場面に由来します。
のちに秦の宰相となる呂不韋(りょふい)が、若き日、商人として各地を巡っていた頃のことです。当時、秦の王子であった子楚(しそ)は、政略のために趙に人質として送られ、不遇の暮らしを送っていました。
その姿を見た呂不韋は、「この人物は将来、大きな存在になるかもしれない」と直感し、自らの手で支援することを決めました。そのときに彼が発したとされるのが、「此奇貨可居」という言葉です。
「奇貨」とは、めったに得られない貴重な存在を意味し、「可居」は“自分のもとにとどめる価値がある”という意を持ちます。つまり、子楚という人物を未来の可能性と見なし、そこに賭けた呂不韋の思いが、この言葉に込められているのです。
現代のフィクション作品における「奇貨、居くべし」
小説や漫画をきっかけに、この言葉を知ったという人も多いかもしれません。物語の中で「奇貨、居くべし」がどのように描かれているのかにふれることで、言葉の意味がより立体的に感じられるようになります。

宮城谷昌光さんの小説『奇貨居くべし』とは?
宮城谷昌光(みやぎたに・まさみつ)さんの長編歴史小説『奇貨居くべし』では、秦の宰相となる呂不韋の波乱の生涯を描いています。呂不韋の生涯を通して、この言葉の重みや背景が丁寧に描かれていますよ。
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)
『キングダム』と「奇貨、居くべし」
漫画『キングダム』では、呂不韋が「奇貨、居くべし」という言葉を用いる場面が描かれています。この表現は、彼が商人としての経験を活かし、得難い機会を見逃さずに活用する姿勢を象徴しています。
物語の中で、呂不韋は子楚を見出し、その潜在的な価値を評価して支援を行います。この行動が後に彼自身の地位向上につながることから、「奇貨居くべし」の意味が強調されています。読者はこのエピソードを通じて、先見の明や機会を捉える重要性について考えるきっかけを得るかもしれません。
最後に
「奇貨、居くべし」という言葉は、時代を超えて人の判断や直感の重みを語りかけてきます。そこには、目の前のものをどうとらえるか、どこに価値を見出すかという問いが含まれているかのようです。
誰かにとってはただの瞬間でも、自分にとっては忘れがたい機会になることもあります。そう思えるだけで、日々の見方が少し変わるかもしれません。
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