普段の会話や職場で、誰かの「ちょっとしたミス」に気づいたとき、どう伝えるか迷うことはありませんか? あるいは、自分が間違えてしまったとき、どう振る舞えばいいのか悩むこともあるかもしれません。
そんなとき、ヒントになるのが「過(あやま)ちて改めざる是(これ)を過(あやま)ちと謂う」という言葉です。この表現に込められた意味や、現代での受け止め方を探っていきます。
「過ちて改めざる是を過ちと謂う」の意味と出典をたどる
誤りをどう受け止め、どう向き合うか? この言葉は、そんな場面での姿勢をそっと示してくれます。まずは、「過ちて改めざる是を過ちと謂う」の意味や由来を整理してみましょう。

「過ちて改めざる是を過ちと謂う」の意味
「過ちて改めざる是を過ちと謂う」は、「失敗しても、それをきちんと反省し、改めることが大切である」という教えを示しています。過ちそのものよりも、間違いをそのままにすることを問題としているのです。
「過ちて改めざる是を過ちと謂う」の由来は?
「過ちて改めざる是を過ちと謂う」は、『論語‐衛霊公』に記された「過而不改、是謂過矣」に由来します。
読み下すと「過ちて改めざる是を過ちと謂う」となります。他にも、「過って改めざる是を過ちという」、「過ちを改めざる是を過ちという」と表現することもありますよ。いずれも意味の違いはなく、言葉の本質に変わりはありません。
参考:『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)

「過ちて改めざる是を過ちと謂う」の使い方を例文とともに確認
「過ちて改めざる是を過ちと謂う」が、どのような場面で自然に使えるのかを考えてみましょう。身近な出来事や仕事のなかでも、心に浮かぶタイミングがあるかもしれません。
言い過ぎたことに気づいて謝った彼の姿に、「過ちて改めざる是を過ちと謂う」という言葉が重なりました。
素直な謝罪に触れたとき、この言葉の意味が自然と心に浮かびます。誠実な姿勢が、関係の修復につながっていく様子を表しています。
デザインミスをそのままにして進めようとした自分に、「過ちて改めざる是を過ちと謂う」という言葉が突き刺さりました。
目をそらしたい気持ちに向き合い、行動を変える場面です。完璧でなくても、気づいたときに正せるかどうかが問われているのかもしれません。
謝罪をためらっていた同僚に、「過ちて改めざる是を過ちと謂う」とだけ伝えたことがあります。
直接的な指摘ではなく、言葉を通じてそっと促す使い方です。距離を取りながらも、相手への信頼や期待が込められています。

「過ちては改むるに憚ること勿れ」とは?
「過ちて改めざる是を過ちと謂う」とよく似た表現に、「過ちては改むるに憚(はばか)ること勿(なか)れ」があります。こちらも『論語』に記された、心に残る言葉のひとつです。
この言葉は、「誤りに気づいたなら、ためらうことなく改めるべきである」という意味を持ちます。
由来は『論語・学而』。過ちを恥じて立ち止まるのではなく、勇気を持って正すことの大切さを説いています。
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)
最後に
「間違えたら終わり」ではなく、「改めることが大切」という視点は、忙しい日々のなかで忘れがちな優しさがあるといえるかもしれません。「過ちて改めざる是を過ちと謂う」に触れることで、他人にも自分にも、少しだけ寛容になれるような気がします。
完璧を目指すよりも、柔らかく修正しながら進んでいく姿勢が、今の時代にはより自然なのかもしれません。
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