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「帰馬放牛(きばほうぎゅう)」という四字熟語をご存じでしょうか? 現代の会話ではあまり耳にする機会のない言葉かもしれません。けれど、争いのない日常を願う気持ちが込められたこの言葉には、どこか温かな余韻があります。
この記事では、「帰馬放牛」の読み方や意味に加え、使い方や類語、英語表現まで丁寧に紹介します。
「帰馬放牛」とは?|読み方と意味を丁寧に紹介
「帰馬放牛」は、文字の並びからしても、静かな場面を思い浮かべる人がいるかもしれません。まずは、基本的な読み方と意味から見ていきましょう。

「帰馬放牛」の読み方と意味
「帰馬放牛」は「きばほうぎゅう」と読みます。「帰馬」は軍用の馬を故郷に帰すこと、「放牛」は軍用の牛を野に放つことを意味します。
これらを合わせた「帰馬放牛」は、戦争の終結と平和の到来を象徴する言葉として使われるようになりました。また、「二度と戦わない」という誓いのような意味でも用いられることがあります。
「帰馬放牛」の由来とは?|歴史的背景を簡単に解説
「帰馬放牛」という言葉は、中国の古典『書経(しょきょう)』武成(ぶせい)に由来しています。以下で詳しく見ていきましょう。
中国古典から生まれた言葉
周の武王(ぶおう)が、殷の紂王(ちゅうおう)を討って凱旋した際、武器を倉に納めて学問を尊び、戦に用いた馬は河南省にある華山の南へ、牛は桃林の野に放ちました。
これは「二度と戦を起こさない」という姿勢を示す行動であり、「帰馬放牛」という言葉がその精神を象徴しています。
「帰馬放牛」はどんな場面で使う?|例文でイメージをつかもう
ここでは、「帰馬放牛」の使い方を具体的な例文とともに見ていきましょう。

「長年続いた紛争が終結し、ようやく帰馬放牛の日を迎えた」
「戦いが終わり、平和が訪れたこと」を象徴する使い方です。実際の戦争に限らず、争いや混乱が収まり、落ち着いた状態になることを表す際にも使えます。
「争いを繰り返すより、帰馬放牛の心で互いに歩み寄るべきだと思う」
現代社会の対立や分断に対して、「争いをやめて平和を選ぶべき」という価値観を伝える表現です。「帰馬放牛の心」は態度や心構えとしての使い方になります。
「帰馬放牛」の類語や言い換え表現は?
「帰馬放牛」は、戦の終わりと平和の訪れを表す言葉です。ここでは、同じように「平穏な世の中」や「争いのない状態」を指す表現を3つ紹介します。
天下泰平(てんかたいへい)
「天下泰平」は、世の中が平和に治まり、人々が安心して暮らしている状態を表す四字熟語です。「何ごともなく穏やかな日々が続いている」といった場面で使われます。

安寧秩序(あんねいちつじょ)
「安寧秩序」は社会が安定し、安心できる秩序が保たれていることを意味します。「帰馬放牛」が戦の終結に焦点を当てるのに対し、こちらはその後に続く静かな日常の様子を強調する言葉だといえるでしょう。
鼓腹撃壌(こふくげきじょう)
「鼓腹撃壌」は、中国の古い逸話に由来します。ある老人が太平の世を喜び、お腹をたたいて地面を踏み鳴らしながら歌ったという故事から、「平和な暮らしを心から楽しむこと」を意味します。
戦争のない世界に感謝し、穏やかな生活を満喫する姿を表す表現です。
最後に
「帰馬放牛」という言葉には、ただ戦いを終えるという意味だけでなく、人々が武器を置き、静かな暮らしに戻っていく希望が込められています。現代に生きる私たちにとっても、争いではなく、穏やかな対話と共存を大切にする姿勢を思い出させてくれる表現かもしれません。
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