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「此方」という漢字は、日常生活の中で見かけることはあまりないでしょう。けれど、ビジネスメールなどでは時折見かけることがあります。読み方を間違えると、少し恥ずかしい思いをしてしまうことも…。
この記事では、「此方」の読み方や意味、使い方、「其処」・「彼処」などの関連表現まで丁寧に紹介していきます。
「此方」とは?|読み方と意味を丁寧に紹介
「此方」は日常でもよく使われる表現です。まずは「此方」の読み方や意味を確認しましょう。

「此方」の読み方は?
「此方」は「こちら」や「こっち」と読みます。「こち」、「こなた」といった読み方もありますが、現代ではあまり耳にしません。
「こっち」は近世からみられる読み方で、「こちら」よりもくだけた感じの語になります。ここでは「こちら」に注目して、意味を確認してみましょう。
こち‐ら【×此▽方】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
[代]
1 近称の指示代名詞。
(ア)話し手に近い方向をさす。「―を向いてください」
(イ)話し手のいる、またはその方向にある場所をさす。「―に来てからもう三年になる」
(ウ)話し手の近くにある物をさす。「―も御試着なさいますか」
2 一人称の人代名詞。話し手自身、また話し手の側をさす。当方。「―はいつでも結構です」
3 三人称の人代名詞。話し手のすぐそばにいる人をさす。同等以上の人に用いる。この人。「―が私の兄です」
「此方(こちら)」は、相手と話しているときに、自分側や自分に近いもの・人・場所を指すときに使います。
例えば、「此方をご覧ください」は自分の近くのものを示す表現ですし、「此方は担当の佐藤です」と言うときには、話し手の近くにいる人を紹介する形になります。
また、「此方は準備ができています」というように使うと、話し手の属する側を指します。ビジネスシーンなどでよく使われますね。
「此方」は場面に応じて、物・人・場所、そして話し手自身を指す多様な意味を持つ便利な表現だといえるでしょう。
「此方こそ」の使い方とは?|ビジネスシーンでの使い方
「此方こそ」は、相手の言葉に丁寧に応じたいときに使える表現です。ややかしこまった印象があり、ビジネスシーンでも自然になじみます。

「此方こそよろしくお願いします」
相手から「よろしくお願いします」と言われたときに、自分も同じ気持ちであることを表現するフレーズです。
「此方こそありがとうございます」
「此方こそありがとうございます」は、相手から感謝の言葉を受けたときに、自分も同様に感謝の気持ちを伝える表現です。
「此方(こちら)」と「其方(そちら)」・「彼方(あちら)」の違いは?
「此方」、「其方」、「彼方」は、方向や場所、人などを指し示す言葉で、会話の中で話し手と聞き手の位置関係を表すときに使われます。では、それぞれの違いはどこにあるのでしょうか? 意味の違いを整理してみましょう。

「此方」と「其方」の違い
「此方」は、話し手側や話し手に近いもの・場所・人を示します。対して「其方」は、聞き手側に属するものを指します。つまり、「此方」は“自分側”、「其方」は“相手側”という使い分けになります。
例えば、会話の中で「此方から伺いますね」と言えば、話し手の立場での動きや意思を示し、「其方のご都合に合わせます」といった表現では、相手を尊重する気持ちが込められています。
「此方」と「彼方」の違い
「彼方」は、話し手・聞き手のどちらからも離れた位置にあるものや人、場所を指します。「此方」は話し手に近いものを表すのに対して、「彼方」は距離感があることが特徴です。
例えば、「彼方に見える山々」などのように遠くにあるものを指すときなどに使われます。
こうして見ると、「此方・其方・彼方」は、話し手と聞き手の位置関係に応じて、丁寧に使い分けることができる便利な表現であることがわかります。日常の中でも、意識して使うと文章や会話に奥行きが生まれそうですね。
参考:『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館)
最後に
「此方」という言葉は、日常的によく使われていますが、意味や使い分けについて深く考える機会は少ないかもしれません。
「其方」、「彼方」と並べてみることで、自分と相手、あるいは第三者との距離感を自然に表現できる日本語の繊細さが感じられますね。日々の会話や文書の中でも、こうした言葉を意識して選ぶことで、やり取りが丁寧になるのではないでしょうか。
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