「泥濘」という漢字を見て、すぐに読み方がわかる人は、そう多くはないかもしれません。しかし、この言葉の意味を知ると、身のまわりの景色や、心の動きと重ねて感じられる場面が出てくるかもしれませんよ。
この記事では、「泥濘」の読み方や意味をひもときながら、その使い方や表現の広がりにも目を向けていきます。
「泥濘」とは? 読み方と意味を紹介
「泥濘」という熟語は、見た目に少し重たさがあるかもしれません。まずは読み方と意味から見ていきましょう。

「泥濘」の読み方は「でいねい」もしくは「ぬかるみ」
「泥濘」は、「でいねい」と読むこともありますが、日常的には「ぬかるみ」と読むのが一般的でしょう。ひらがなで見かけることの多い言葉ですが、小説や新聞などでは漢字表記で登場することもあります。
「泥濘」の意味
「泥濘(ぬかるみ)」の意味を辞書で確認しましょう。
ぬかる‐み【泥=濘】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
雨や雪解けなどで地面がぬかっている所。「―に足を取られる」「―にはまる」
「泥濘」は、雨や雪などの影響で地面がやわらかくなり、足を取られてしまうような状態を指します。舗装されていない道や田畑のあぜ道など、ぬかるんだ足元を表すときに使われますね。
「泥濘」の使い方を例文で確認
「泥濘」は、ぬかるんだ地面を表す言葉ですが、それだけにとどまりません。比喩的に使われる場面では、動きづらさや先の見えない感情を映すこともあります。ここでは、2つの例文を通して、表現の広がりを見ていきましょう。

「雨上がりの山道は泥濘がひどく、足を取られながら一歩ずつ進んだ」
この例文では、物理的な泥濘の様子を描写しています。進もうとしてもすぐには前に出られず、足を取られてしまう状態が伝わってきますね。自然の中での不自由さを、静かな調子で表現しています。
「泥濘に足を踏み込んだよう」
こちらは比喩的な表現です。事態が複雑に絡まり合い、身動きがとれなくなる様子を「泥濘」に重ねています。「泥沼にはまる」と同じ意味をもち、思うように進めない、抜け出すきっかけが見えないといった心情や状況を描くときに使われますよ。
英語で「泥濘」を表すと?
「泥濘」を英語で表現する場合、物理的なぬかるみなのか、比喩的な「抜け出しにくさ」なのかによって、選ぶ単語が少し変わってきます。
mud
地面がぬかるんだ状態を表すもっとも基本的な表現です。例えば“I stepped into the mud.”(泥濘に踏み込んでしまった。)というように使います。

quagmire
抜け出せないひどい状態を表すときには、“quagmire”が使われます。政治問題や人間関係、複雑な課題を語るときなどに使われることがあります。比喩的に「泥沼状態」を伝えたいときに選ばれる表現です。
例えば、“They were caught in a political quagmire.”(彼らは政治的な泥沼にはまっていた。)というように使われます。
最後に
「泥濘」という言葉は、単にぬかるんだ足元を描くだけでなく、進みにくさを抱えたときに寄り添う表現でもあります。静かな語感とともに、その言葉が持つ手ざわりを感じながら使ってみると、少し違った景色が見えてくるかもしれませんね。
TOP画像/(c) Adobe Stock