「杜氏」という言葉は、日本酒や焼酎の製造において欠かせない存在として知られています。しかし、その読み方や意味、役割について正確に理解している人は意外と少ないかもしれません。
この記事では、杜氏の読み方や意味、歴史、職業としての実態、さらには人気の焼酎についても詳しく解説していきます。
杜氏とは? 読み方と意味を解説
杜氏という言葉は、特に酒造りの世界でよく耳にするでしょう。まずは読み方や基本的な意味について確認していきましょう。

杜氏の読み方と意味
「杜氏」は「とうじ」と読みます。「もりし」と読まれることもありますが、これは誤りです。正しい読み方は「とうじ」ですので覚えておいてください。辞書で定義を確認しましょう。
とうじ【×杜氏】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
酒づくりの職人の長。また、その職人。さかとうじ。とじ。
この言葉は日本酒や焼酎の製造現場で、酒造りを統括する職人を指します。製造工程を監督し、品質を管理する重要な役割を担っています。
「杜氏」の名前の由来
「杜氏(とうじ)」という名前は、もともと「家刀自(いえとじ)」という主婦を意味する古称に由来するという説があります。かつて宮廷の造酒司(みきのつかさ)でも、造酒の神や酒甕に関する呼称として「刀自」が使われていたことが確認されています。
これは、酒造りが女性の役割だった時代を反映している可能性があるといわれています。実際に、古い職人図絵では酒造りの姿が女性として描かれていることもありますよ。
一方で、中国の伝説における酒造の祖「杜康(とこう)」という名前が関連づけられ、「杜氏」という表記が定着したという見方もあります。
「杜氏」の歴史と役割
室町時代以降、日本酒の清酒(澄酒)の醸造法が広く普及するにつれ、全国各地に酒造業者が現れました。この時期から、酒造職人と酒蔵の役割分担が進んでいったと考えられています。日本酒の醸造は冬の約3か月に限られることが多かったため、酒造りを職人団に委ね、酒蔵の経営者は販売に専念するという体制が広まりました。
このような仕組みは、特に冬季に仕事の少ない雪国や山村の農民にとって貴重な働き場となり、酒造りを職業とする人々の集団が自然に形成されました。
こうして、丹波杜氏、越後杜氏、南部杜氏、但馬杜氏、備中杜氏といった各地の杜氏集団が誕生し、それぞれが伝統的な技術を受け継ぎながら酒造業者と密接な関係を築いてきました。この流れは現代に至るまで続いています。
参考:『日本大百科全書』(小学館)
「杜氏」という職業とは? 年収やなる方法を紹介
「杜氏」は伝統的な技術と経験が求められる仕事であり、特に日本酒や焼酎の品質に大きな影響を与える重要な役割を担っています。杜氏になる方法や年収について、詳しく見ていきましょう。

杜氏になるには
杜氏になるための特定の資格は存在しませんが、一般的には以下のようなステップを踏むことが多いです。
1.蔵人としての経験を積む:まずは酒蔵で蔵人として働き、酒造りの基礎を学びます。
2.専門的な知識の習得:醸造学を専門とする大学や専門学校で、発酵や微生物に関する知識を深めることも有益です。
3.経験と信頼の積み重ね:長年の実務経験を通じて技術を磨き、蔵元や他の蔵人からの信頼を得ることが重要です。
近年では、蔵元自らが杜氏を兼任するケースや、女性の杜氏も増えてきています。
杜氏の年収
杜氏の年収は、経験や技術、勤務先の規模などによって異なります。一般的には、年収500万円前後といわれているようです。特に優れた技術を持つ杜氏や、大手の酒蔵で働く場合などは、1,000万円以上の収入を得ることもあるでしょう。
杜氏と納豆の関係|納豆を食べてはいけない理由
酒造りの現場では、納豆の摂取が厳しく制限されている場合があります。これは、納豆菌が、酒造りに必要な麹に悪影響を及ぼす可能性があるためだそう。
ただし、実生活で納豆を食べたことがどれほどの影響を及ぼすのか、科学的には検証されているわけではないそうです。しかし、多くの酒蔵関係者は納豆を避けるそうですよ。

「杜氏」に関連する英語表現
「杜氏」を英語で表現するなら、“a chief brewer”が適しているでしょう。特に日本酒や焼酎に特化した職人を指す際には、“a chief brewer of sake”とするといいですね。
国際的な舞台で日本酒や焼酎の魅力を紹介する際には、こうした表現を知っておくと便利かもしれません。
参考:『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)
最後に
「杜氏」という言葉は、伝統的な技術や文化を受け継いできた人々を指す特別な名称です。彼らの仕事は非常に繊細で、長年にわたって磨かれてきた技術と経験によって支えられています。杜氏たちの技を理解することで、日本酒や焼酎の奥深さをより楽しむことができるでしょう。
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