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「私利私欲」という言葉は、一般的に否定的なニュアンスで使われることが多いですね。しかし、本当に「私利私欲」は悪いことなのでしょうか? この言葉の背景には、人間が持つ本能や社会との関わり方が深く影響しています。
そこで、本記事では、「私利私欲」の意味や使い方に加え、類語や対義語、ポジティブな側面など、多角的な視点から解説していきます。
「私利私欲」とは? 意味や使い方を解説
日常生活の中で「私利私欲に走る」や「私利私欲を捨てる」といった表現を耳にすることがあります。しかし、具体的にどういった意味を持つのかを深く考えたことがある人は多くないかもしれません。ここでは、「私利私欲」の基本的な意味と使い方について説明します。
「私利私欲」の意味とは?
まずは、私利私欲の意味を辞書で確認しましょう。
しり‐しよく【私利私欲】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
自分の利益を第一に考え、それを満たそうとする気持ち。「―に目がくらんで信用を失う」
「私利私欲」とは、自分自身の利益や欲望を優先する心のあり方を指します。他者のことを考えずに行動する場合に、この言葉を使うことが多いでしょう。
「私利私欲」の使い方と例文
「私利私欲」という言葉は、人の行動や価値観を表す場面でよく用いられます。「彼は私利私欲にまみれている」と言えば、他人のことを考えずに自分の利益ばかり追求しているという印象を与えます。
一方、「私利私欲を超えた決断が求められる」と使えば、個人の利益を超えた選択を重視すべき場面で使われますね。

「私利私欲」の類語・言い換え表現を知ろう
言葉の意味を正しく理解し、適切に使い分けることで、表現の幅が広がります。「私利私欲」に近い意味を持つ言葉を知ることで、より場面に合った表現を選ぶことができるでしょう。
自己中心的
「自己中心的」とは、自分の考えや都合を最優先し、周囲の意見や感情を考慮しない性質を指します。相手の立場に配慮せず、自分本位な行動を取る場合に使われることが多いです。
利己主義
「利己主義」は、自分の利益や快楽を追求する考え方を意味します。他人の迷惑も顧みないような振る舞いを指すこともあるでしょう。
エゴイスト
「エゴイスト」は、利己的な人を指します。自分の欲望や利益を優先し、他者への配慮が欠けるところが特徴です。
「私利私欲」の対義語とは? ポジティブな表現を学ぶ
「私利私欲」の反対の意味を持つ言葉を知ることで、より広い視点で物事を捉えられるようになります。対義語を理解することで、異なる価値観を受け入れる柔軟な思考が身につき、適切な表現を選ぶ手助けにもなるでしょう。
公明正大(こうめいせいだい)
「公明正大」とは、私心がなく、公平で誠実な態度を貫くことを意味します。偏りのない考え方や行動が求められる場面で使われることが多く、リーダーシップを発揮する際にも重視される姿勢です。
無私(むし)
「無私」とは、個人的な利益や欲望にこだわらず、周囲のために尽くす姿勢を指します。特に、利害を超えて公の利益を考えたり、他者を優先する行動をとる場合に使われる表現です。
献身的(けんしんてき)
「献身的」は、他者や社会のために自らの時間や労力を惜しまず尽くす態度を指します。仕事や人間関係において、自分の利益よりも周囲の幸福や成功を優先する姿勢を表し、信頼関係を築くうえで重要な要素です。
「私利私欲」に関する議論|本当に悪いことなのか?
「私利私欲」という言葉には否定的な意味が強く込められていますが、すべてが悪いとは限りません。時代や価値観によって、この言葉に対する解釈は変化していたりもします。自己の利益を追求することが、必ずしも社会にとってマイナスになるわけではないため、単純に善悪で判断するのは難しい部分がありますね。

「私利私欲」のいい面と悪い面
私利私欲があるからこそ、人は目標を持ち、努力を続けることができるともいわれています。自分の成長や成功を求める意識が、向上心や挑戦する姿勢につながることもあります。ビジネスの世界では、一定の私利私欲がなければ成果を上げることが難しい場面もあるでしょう。
一方で、私利私欲が強くなりすぎると、周囲との摩擦を生んだり、協調性を損なったりする原因になりかねません。過度に自己中心的な行動は、人間関係や組織のバランスを崩すことにもつながるため、どのようにコントロールするかが重要になります。
「私利私欲がない人」は本当に理想的なのか?
私利私欲をまったく持たない人が、必ずしも理想的とは限りません。自己犠牲の精神が強すぎると、周囲の期待に応えようとするあまり、自分自身の幸福や健康、家族を犠牲にしてしまうこともあるでしょう。
他者のために尽くすことは素晴らしいことですが、過度な無私の姿勢が続くと、精神的な負担が大きくなることも考えられます。私利私欲を適度に持ちながら、周囲との調和を大切にすることが、よりよいバランスにつながるのではないでしょうか?
「私利私欲」を英語でどう表現する?
英語で「私利私欲」を表す言葉はいくつかあります。その中から2つを紹介しましょう。

self-interested
“self-interested” は、自己の利益を優先する考え方を表す言葉です。「私利私欲のある」「自分本位な」というニュアンスで使われます。特に、ビジネスや政治の文脈で用いられることが多いです。
例文:He made a self-interested decision without considering others.
(彼は他人のことを考えずに私利私欲に基づいた決定をした。)
dog-eat-dog
“dog-eat-dog” は、「私利私欲にかられた」「弱肉強食の世界」といった意味を持つ表現です。競争の激しい環境や、自己利益を最優先する厳しい状況を指す際に使われます。
例文:It’s a dog-eat-dog world in the corporate industry.
(企業の世界は私利私欲が渦巻く弱肉強食の世界だ。)
最後に
「私利私欲」という言葉は、一般的には否定的に捉えられることが多いでしょう。しかし、必ずしも悪いものとは限りません。自分の成長や目標達成のためには、ある程度の自己利益を追求することも必要です。一方で、それが過度になると、周囲との関係に影響を及ぼすこともあるでしょう。
大切なのは、私利私欲と他者への配慮のバランスを取ることです。自分の利益ばかりを追い求めるのではなく、時には周囲と協力し、共に成長する姿勢を持つことが、人間関係を円滑にし、よりよい社会を築くことにつながるのではないでしょうか。
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