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「病葉」という言葉は、あまり馴染みがないかもしれませんが、古くから日本の詩や文学の中で登場しています。本記事では、「病葉」の読み方や意味、由来をはじめ、俳句、文学作品、楽曲、さらにはアニメに登場するケースまで詳しく解説していきます。
「病葉」とは? 読み方や意味、由来をわかりやすく解説
「病葉」、「びょうば」ではなく、何と読むのでしょうか? まずは気になる読み方から確認していきましょう。
病葉の読み方と意味とは?
「病葉」は、「わくらば」もしくは「びょうよう」と読みます。意味を辞書で確認しましょう。
わくら‐ば【▽病葉】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
病気や虫のために変色した葉。特に、夏の青葉の中にまじって、赤や黄色に色づいている葉。《季 夏》「―や大地に何の病ある/虚子」
「病葉」は、健康な緑の葉と異なり、病気や虫の影響で変色した葉のことを指します。見た目にはまだ木に残っているものの、すでに弱っていることが特徴です。
日常的に使われることは少ないですが、文学や詩歌では象徴的に扱われることがあります。
病葉の語源は?
「病葉」という言葉の語源には諸説あります。
代表的な説のひとつは、「別葉(わくるは)」を由来とするものです。健康な葉とは異なり、変色している葉を指す意味で使われたとされています。
もうひとつの説では、「わ」は「若葉」、「くら」は「虫が食らう」という意味を持ち、虫に食われて変色した葉を表す言葉として生まれたともいわれています。
参考:『日本国語大辞典』(小学館)

「病葉」は季語として使われる? 俳句や短歌における役割
季節の移ろいや人の心情を映し出す病葉は、単なる葉の変色ではなく、詩的な感性を刺激する表現として親しまれています。
ここでは、季語としての病葉の役割と、病葉を詠んだ歌を紹介しましょう。
病葉はどの季節の季語?
病葉は、夏の終わり頃に見られる葉の変色を指すため、俳句では夏の季語として扱われます。秋に散る枯葉とは異なり、まだ枝に残る葉であることが特徴です。夏の終わりの静けさや、季節が移りゆく中での儚さを象徴する言葉として、古くから用いられてきました。
病葉を詠んだ俳句や短歌の例
病葉を用いた俳句や短歌には、自然の変化を描写するだけでなく、人の心情を重ね合わせた表現も多く見られます。以下に具体的な例を紹介しましょう。
例:「わくらばに取り付いて蝉(せみ)のもぬけかな」〈与謝蕪村〉
(病葉にしがみつくように残る蝉の抜け殻。その姿が、移ろいゆく季節の中で取り残されたように感じられる)
この句では、病葉と蝉の抜け殻という2つの存在を通じて、夏の終焉とともに感じる寂しさが表現されています。病葉は、目に見える自然の変化だけでなく、移ろう時の流れや人の心情をも映し出す表現として、多くの詩歌に取り入れられていますよ。
参考:『小学館 全文全訳古語辞典』(小学館)
病葉をテーマにした文学作品とは?
「病葉」という言葉は、文学作品のタイトルにも使われ、その象徴的な意味が作品のテーマと深く結びついていたりします。特に、京極夏彦さんの『病葉草紙』や白川道さんの『病葉流れて』は、病葉の持つ儚さや移ろいを巧みに描いています。

『病葉草紙』とは? あらすじや魅力を紹介
『病葉草紙』は、京極夏彦さんによる連作奇譚集で、江戸時代中期の貧乏長屋を舞台に、本草学者・久瀬棠庵(くぜとうあん)と大家の藤介(とうすけ)が織りなす物語です。長屋で起こる奇妙な出来事に対し、棠庵は「虫のせいですね」と診断し、事件を意外な方向へ導いていきます。
本作は、棠庵の若き日を描いており、彼の人間味あふれるキャラクターや、藤介との軽妙な掛け合いが魅力です。また、最終話ではタイトルの『病葉』の意味が明らかになり、読者に深い余韻を残します。
『病葉流れて』とは? 映画や原作をチェック
『病葉流れて』は白川道さんの小説で、ギャンブルにのめり込む大学生・梨田雅之の青春を描いています。彼は同じ大学の永田一成と出会い、博打麻雀の世界に足を踏み入れることに…。やがて、喫茶店で働くテコと恋に落ちるものの、ギャンブルに溺れる日々が続きます。
この物語は、主人公の葛藤や人間関係を通じて、病葉の持つ儚さや移ろいを象徴的に表現しています。2008年には亀井亨監督により映画化され、村上淳が主人公・梨田を演じました。
『鬼滅の刃』のキャラクター「病葉」とは?
『鬼滅の刃』には、「病葉」という名前のキャラクターが登場しています。どのような役割を持ち、作中でどのように描かれているのかを確認してみましょう。

病葉はどんなキャラクター?
病葉は下弦の参に位置する鬼で、顔に三つの×印の傷があり、エルフのような耳を持つ特徴的な外見をしています。物語の中で、鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)が下弦の鬼たちを召集した際、無惨の怒りを恐れて逃亡を試みますが、捕らえられて命を落とす役どころです。
病葉と宇随天元の関係とは?
一部のファンの間では、病葉が音柱・宇髄天元(うずいてんげん)の弟ではないかという説が存在するようです。この説の根拠として、病葉と天元が似たデザインのピアスをしていることや、病葉の素早い動きが忍者を思わせること、さらに病葉の襟巻きが天元の修行時代のものと似ていることなどが挙げられています。
ただし、これらは公式に確認された情報ではなく、あくまでもファンの間での考察にとどまります。
最後に
病葉という言葉は、単なる枯葉ではなく、まだ木に残る儚い葉を指します。そのため、日本語の表現の中でも特に繊細なニュアンスを持つ言葉のひとつです。俳句や短歌、文学作品、さらには漫画にまで登場し、多くの場面で象徴的に使われています。この記事を通して、病葉の持つ意味の深さを感じていただけたら幸いです。
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