事実無根とは?
事実無根は、「じじつむこん」と読みます。ここでは、事実無根の意味や、言葉の成り立ちを解説します。
言葉の意味
事実無根とは、事実であることを示す根拠がなく、まったくのでたらめという意味です。誰かの主張や流れている情報が真実ではないこと、嘘であることを表します。
事実無根は、根も葉もない噂を流されたり、誤った情報が流されたりする状況で使われることが多いといえる言葉です。そのような嘘や情報を否定するため、「事実無根である」と伝えることができます。
じじつ‐むこん
出典:小学館 デジタル大辞泉
根拠となる事実がまったくないこと。事実に基づいていないこと。根も葉もないこと。「—の話」
言葉の成り立ち
事実無根は、「事実」と「無根」という2つの言葉を組み合わせた言葉です。「事実」とは、実際に起こったことや、存在する事柄を指します。「無根」は、根拠となる事実がないという意味です。
この2つを組み合わせた事実無根は、根拠となる事実がないでたらめという意味になります。噂や情報を裏付ける証拠がなく、真実ではないと伝えるときに使う言葉で、強い否定のニュアンスがあります。
事実無根の使い方・例文
事実無根は実際にどのような使い方をするのか、例文で確認しましょう。
・その社員は社内で流れている、自分についての事実無根の噂をキッパリと否定した
・たとえ事実無根であっても、多くの人に広まることで、事実だと認識されてしまうこともある
・その話がまったくのでたらめであれば、事実無根であることを主張すべきだ
・わが社がA社と合併するという噂が流れているが、まったくの事実無根であることを伝えておく
事実無根の言い換え表現
事実無根には、次のような言い換え表現があげられます。
・根も葉もない(ねもはもない)
・荒唐無稽(こうとうむけい)
・デマ
ここでは、それぞれの意味を詳しく解説します。
根も葉もない
根も葉もないは、物事の根拠がまったくないという意味です。「根も葉もない」の「根」は、話の根拠や原因を表します。植物にとって、根や葉は土台になるもので、それらがないところに花は咲きません。
そのような根も葉も存在しない場所に咲いている「花(噂)」は本物ではないことから、「根も葉もない」という表現が生まれました。
根拠のないでたらめな話という意味で、事実無根とよく似た言葉です。
〈例文〉
・根も葉もない噂でも、テレビで報じられると真実であると信じてしまう人が多いようだ
・彼は、職場で知らないうちに自分の根も葉もない噂が流されているのを知り、上司に相談することにした
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荒唐無稽
荒唐無稽とは、言動に根拠がなく、現実味がないという意味です。「荒唐」は、言うことに根拠がなく、とりとめのないことを指します。「無稽」は、根拠がなくでたらめという意味の言葉です。
「荒唐無稽な人」「荒唐無稽な発言」といった使い方をします。
〈例文〉
・彼が出したアイデアはあまりにも荒唐無稽な内容だったため、採用されなかった
・先日見た映画は話の展開があまりにも荒唐無稽で、気楽に楽しめた
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デマ
デマとは、「デマゴギー」の略で、政治的な目的を持って意図的に嘘の噂を流すことです。それが転じて、なんらかの思惑や悪意により、単なる嘘や噂を探すことにも使われます。
でたらめの話という意味では事実無根と似ていますが、「嘘の噂を意図的に流す」という点が事実無根とは異なるといえるでしょう。
〈例文〉
・彼女はコネで入社したというデマを流され、職場にいづらくなってしまった
・そのデマはSNSに流されるとあっという間に拡散されてしまい、大きな問題に発展した
事実無根の対義語
事実無根の対義語として挙げられるのは、証拠歴然(しょうこれきぜん)です。「歴然」とはまぎれもなくはっきりしているという意味で、はっきりした証拠に基づいていることを指しています。
根拠のないでたらめを指す事実無根とは、対極にあるといえる言葉です。
〈例文〉
・あまりにも証拠歴然としていたため、犯人は自分が犯した罪を認めざるを得なかった
・これほど証拠歴然であるにもかかわらず、彼はそれを「真実ではない」と言い張っていた
事実無根の噂を流された! どうしたらいい?
どれだけ事実無根の話でも、それが広まってしまうと真実だと思われてしまうことがあります。職場で嘘の噂を流された場合、職場にいづらくなることにもなりかねません。
事実無根の噂を流されて社会的評価が著しく低下した場合、刑法の名誉毀損罪が成立する可能性があるでしょう。名誉毀損とは、特定の個人を対象に、公然と事実を摘示し、社会的評価を低下させる行為のことです。その事実が真実であるか虚偽であるかは問われません。名誉毀損の責任を問う方法は、刑事上、民事上の2つの方法があります。
名誉毀損の成立要件では、不特定多数に知られる状態であるという「公然性」が求められます。SNSで嘘を拡散されたり、社内で噂を広められたりした場合は、該当する可能性があるでしょう。一方、個人間でやり取りをしたDMやメール、LINEなどによる事実無根の発言は、公然性がなく、名誉毀損には該当しない可能性も。
そのような問題に悩んだ際、専門家に相談してみるのもよいでしょう。
めいよきそん‐ざい【名誉毀損罪】
出典:小学館 デジタル大辞泉
具体的なことがらを挙げて、相手の名誉を傷つける罪。挙げたことがらの真偽にかかわらず成立する。ただし、相手が死者・公務員・選挙などの候補者である場合、公共の利害に関する場合、挙げたことがらが真実であれば成立しない。刑法第230条が禁じ、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処せられる。
[補説]具体的なことがらを挙げずに侮辱した場合は侮辱罪となる。
事実無根を正しく理解しよう
事実無根とは、根拠に基づかないでたらめという意味です。嘘の噂や情報が流されていることに対し、それを否定するときに使われます。類義語には「根も葉もない」「荒唐無稽」「デマ」などがあり、話の流れに応じて使い分けるとよいでしょう。
対義語には、はっきりした根拠があるという意味の「証拠歴然」があげられます。
事実無根の意味を理解し、正しく使うようにしましょう。
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