「ドロン」という言葉、聞いたことがありますか? 昭和世代には親しみのある言葉ですが、今の若い世代にとっては何のことだか分からないかも…。しかも、最近では「ドローン?」と誤解されるかもしれませんね。実は、この表現、ちょっとしたユーモアとして会話に取り入れると面白いのです。
この言葉の背景や活用方法について、一緒に探ってみませんか?
「ドロン」ってどんな意味?
「ドロン」は、昭和の時代から使われてきた言葉。若い世代には馴染みが薄いかもしれませんが、意外とユーモアを含んだ使い方ができる表現なんです。この言葉がどのように生まれ、どんな場面で活用されてきたのかを、ひも解いてみましょう。
「ドロン」の本来の意味
まずは、「ドロン」の意味を辞書で確認しましょう。
どろん
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
[名](スル)
1 急に姿を隠すこと。「借金を残して―する」
2 歌舞伎で、幽霊が出るときや消えるときに連打する大太鼓。どろどろ。
「ドロン」とは、ただ「いなくなる」だけではなく、「急に姿を消す」意味があることがわかりました。軽やかに場を離れるときにぴったりの表現で、昭和生まれの世代には馴染みのある表現です。「今日は早めにドロンしようかな」といった風に、さりげなく場を去りたいときに使われることが多いようですよ。
昭和の時代は、忍者のポーズをとりながら、「お先にドロンします」と言うのが流行ったそうです。
「ドロン」の由来は?
ドロンの由来には諸説ありますが、その中の一つには歌舞伎の下座音楽で使われた「幽霊太鼓」と呼ばれる囃子(はやし)にあるとする説があります。幽霊や妖怪が登場する場面や、夢から覚める場面などで、大太鼓をはじめは小刻みに、次第に高く打っていたのです。この打ち方は、「どろん」と呼ばれていました。
そこから転じて「急に姿を消す」というイメージと結びつき、俗語として定着したのではないかと考えられています。
ビジネスシーンでの「ドロン」の意味と使い方
「ドロン」は職場でも活用できる便利な一言です。「そろそろ帰るね」と言う代わりに、「今日はドロンします」と伝えるだけで、場が和やかになったりします。
堅苦しくならず、自然に席を外せるため、ちょっとしたユーモアを添えたいときにぴったり。上司や同僚とのコミュニケーションを、少し軽やかにしてくれるフレーズではないでしょうか。
日常会話で使える「ドロン」の表現方法
「ドロン」をうまく使いこなせると、会話のトーンが柔らかくなることも。ここでは、日常での具体的な例文を見ていきましょう。
「そろそろ疲れてきたから、ドロンしようかな」
この例文では、「ドロン」が「さりげなく場を離れる」という意味で使われています。疲れたときや少し気分転換をしたいときに、その場を抜け出す様子を軽やかに表現していますね。友人との集まりやリラックスした雰囲気の中で使いやすいフレーズです。
「会議が長引きそうだし、途中でドロンするタイミングを見計らおう…」
この例文での「ドロン」は、「会議を抜ける」という意味で使われています。長時間の会議でタイミングを見て退出したいときなどに、冗談めかして使うことで、重たい雰囲気を和らげることができるかもしれません。
「今日は予定が詰まっているから、この後ドロンする予定!」
この例文では、「ドロン」が「次の予定に向けてその場を立ち去る」という意味で使われています。忙しい日でも、軽やかでポジティブな印象を与える表現です。日常の会話やSNSなどで、予定が詰まっている様子をユーモアを交えて伝えるのに最適でしょう。
「ドロン」の類語・言い換え表現は?
「ドロン」には、似た意味を持つ言葉や言い換え表現がいくつもあります。それぞれの微妙なニュアンスの違いを理解して使い分けることで、表現の幅が広がりますよ。
抜け出す
「抜け出す」は、「ドロン」と同様に、こっそりその場を離れることを意味します。例えば「仕事を抜け出して一息つく」といったように使います。幅広いシーンで活用できる表現です。
フェードアウト
「フェードアウト」は、もともと演劇や映画などで「舞台や画面が徐々に暗くなって消えていく」ことを意味します。日常会話では「目立たないように姿を消す」といったニュアンスで使われますね。「ドロン」に比べると、静かに離れていくイメージが強いでしょう。例えば、「彼女はグループからフェードアウトしていったみたい」というように、徐々に離れていくような状況を表すときに適しています。
雲隠れ
「雲隠れ」は、「姿を消す」ことを指す言葉です。「ドロン」との違いを挙げるなら、やや古風で文学的な響きがある点でしょう。例えば、「重要な局面で雲隠れするなんて…」というように、責任を果たさず逃げるニュアンスも含めて使われることもあります。
他にもある! 昭和のおじさん言葉とその面白さ
昭和の時代に使われていた「おじさん言葉」は、今聞くとどこか懐かしく、温かみさえ感じられます。これらの言葉は、当時の日本社会や人々の気持ちを反映したものでもありますね。ここでは、おじさん言葉の中からユニークなものを3つ紹介しましょう。
バイナラ
「バイナラ」は、「バイバイ」と「さよなら」を組み合わせた、いわゆるダジャレのような挨拶です。この言葉が流行った背景には、昭和のテレビ番組やコメディアンたちの影響があります。当時は、テレビの影響力が絶大で、ユーモア溢れるフレーズが瞬く間に広まったのです。
「バイナラ」は、親しい友人同士の別れ際に使われることが多く、その軽やかな響きから場を和ませる効果がありました。ちょっとふざけた感じが、当時の日本の社交スタイルを象徴しているのかもしれませんね。
よっこらしょ
「よっこらしょ」という言葉は、何かを持ち上げたり、腰を下ろす際に自然と口から出る掛け声です。これはただの掛け声ではなく、身体に負担がかかる動作をする際に、自分を鼓舞するための一言としても使われました。
昭和のおじさんたちは、重い荷物を持つときや、一仕事終えた後の一息つく瞬間に「よっこらしょ」と言っていました。面白いのは、現代でも若い世代が無意識にこの言葉を使っていること。おじさん文化が知らず知らずのうちに引き継がれているのかもしれません。
どっこいしょ
「どっこいしょ」は、「よっこらしょ」と同じように力を込めた動作の際に発する言葉です。はずみをつけて動く際にも使われます。「どっこいしょ」を、「どっことな」とか「どっこいな」と表現する場合もあるようです。
最後に
昭和のおじさんたちが使っていた「ドロン」という表現は、懐かしさだけではなく、現代でも楽しさを加える魅力を持っているようにも思えます。何気ない日常の中で「ドロン」を使ってみると、意外にも軽やかな会話が生まれるかもしれません。
ぜひ、柔らかなユーモアをプラスする一言として、「ドロン」を会話に取り入れてみるのもいいのではないでしょうか。
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