私たちは、日常生活で無意識に多くの情報に影響されています。特に目に見えないメッセージが潜んでいるという「サブリミナル効果」は、私たちの意思決定や行動に影響を与えているのでしょうか…?
この記事では、「サブリミナル効果」について簡単に紹介いたします。
サブリミナル効果とは? 科学的根拠に基づく心理現象の解説
サブリミナル効果について耳にしたことがあっても、その詳細や実際の仕組みは意外と知らないものです。まずは、どんなものなのか確認していきましょう。
サブリミナル効果の定義
サブリミナル効果とは、非常に短時間の知覚刺激が意識的には認識されないものの、潜在意識に影響を及ぼすとされる現象を指します。「サブリミナル(subliminal)」は心理学の用語で、「識閾(しきいき)下の、潜在意識の」という意味を持つ形容詞です。
この効果は、1957年にアメリカの広告業者が行った実験から広く知られるようになりましたが、その後の再現実験で証明されず、心理学の分野では学説としては認められていません。
サブリミナル効果が生まれた背景
サブリミナル効果は、1950年代にアメリカで話題になった広告実験によって広く知られるようになりました。1957年、映画館で放映されたフィルムに「コーラを飲め」「ポップコーンを食べろ」といったメッセージを1コマだけ挿入し、これが消費者の行動に影響を与えたとされました。
この実験結果は衝撃的なもので、広告やメディアにおける新たな手法として注目を集めました。しかし、再現実験が行われた結果、当初の主張は実証されず、この効果が実際に存在するかどうかは疑問視されるように…。現在も、学説としては認められていません。
参考:『知恵蔵』(朝日新聞出版)
サブリミナル効果の危険性と倫理的課題
サブリミナル効果には、倫理的な問題やリスクも存在します。どのような危険性が潜んでいるのか、過去の事例をもとに考えてみましょう。
テレビ業界とサブリミナル効果の関係
かつてテレビ放送において、サブリミナル的なコマ挿入があったと批判されたケースがありました。それを受けて、日本民間放送連盟の放送基準では、「視聴者が通常、感知し得ない方法によって、なんらかのメッセージの伝達を意図する手法(いわゆるサブリミナル的表現手法)は、公正とはいえず、放送に適さない」としています。
NHKも同様の基準を設けており、サブリミナル効果が視聴者に対して不適切な影響を与えないように注意が払われていますよ。
参考:日本民間放送連盟
法的規制と現代におけるサブリミナル効果の扱い
サブリミナル効果の使用は、その潜在的な危険性から、現代では多くの国で法的規制の対象となっています。日本民間放送連盟やNHKが、視聴者が認識できない形でメッセージを伝える「サブリミナル的表現手法」を放送基準で禁止しているというのは先述したとおりです。
アメリカでも、サブリミナルメッセージが商業広告に使われることを規制する動きがあり、連邦通信委員会(FCC)は、このような手法を厳しく取り締まっています。
このように現代において、広告やエンタメ業界がこうした手法を使うことは倫理的に問題視されています。一方で、インターネットやSNSでの情報の流布が進む中で、サブリミナル的な影響を完全に排除することは難しいといわれているのも事実です。
そのため、消費者や視聴者自身も情報の受け取り方に対して意識的になることが求められているといえるでしょう。
サブリミナル効果に関するよくある質問
ここでは、サブリミナル効果に対して、多くの人が抱く疑問に答えていきます。よくある質問を通じて、さらに理解を深めていきましょう。
サブリミナル効果は本当に効くの?
サブリミナル効果が実際に有効かどうかは、明確に証明されてはいません。これまで多くの研究が行われてきましたが、現状では無意識に与える影響は限定的であり、直接的な行動変化を引き起こすほど強力なものではないとされています。
しかし、視覚や聴覚を通じて無意識に働きかけることは一定の影響を与える可能性があるため、広告やメディアでの使用については依然として議論が続いています。
どんなときに、サブリミナル効果は使われる?
サブリミナル効果は、サスペンスドラマや映画などの中で「洗脳手段」として描かれることがあります。具体的には、登場人物が無意識に影響を受け、操作される演出として使われるということですね。
ほかには、サブリミナル効果を応用したとされる睡眠学習法や、成功を促すと謳われるCD・DVDが販売される便乗商法も後を絶ちません。これらの商品は、“深層心理に働きかけて効果を上げる”と主張していますが、その実効性は科学的に証明されているわけではないようなので注意が必要です。
私たちは、知らないうちに操作されているの?
かつて広告やエンタメ業界では、短時間の映像や音声を使って、視聴者の購買意欲や感情に影響を与える試みが行われてきました。しかし、その影響は極めて限定的であり、意識的な行動を直接的に操作できるほど強力なものではないとされています。さらに、こうした手法が公正でないとされ、規制もされています。
しかし、SNSやオンライン広告では、私たちの興味や行動に基づいた情報が無意識に流れてくるため、知らないうちに影響を受けているリスクはあるかもしれません。操作されないためには、私たちが情報を意識的に受け取ることが重要です。
最後に
サブリミナル効果は、心理学の分野では学説として認められていないことがわかりました。とはいえ、インターネットやSNSを通じて私たちが知らないうちに影響を受ける可能性は依然として存在します。
重要なのは、情報を受け取る際に自分自身で意識的に判断すること。情報に対して批判的な視点を持つことで、自主的な行動が取れるようにしておきたいですね。
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