常在戦場とはどんな意味?
戦場に行くといわれても、現代人にとってはあまりピンとこないかもしれません。しかし常在戦場は、使い方によって日常会話でも用いられる言葉です。
この章では、四字熟語の意味や言葉の由来、例文などを解説します。
常に戦場にいる心得のこと
常在戦場(じょうざいせんじょう)とは、いつでも戦場にいるような心構えで物事に取り組もうといった「心得」を指す四字熟語です。
「戦場」というと、現代人には馴染みがなく、どういった心構えが必要なのかわからない人もいるかもしれません。しかし、戦場が生死を分ける過酷な状況であることから、常に緊張感のある状態を例えた表現と考えるとわかりやすいでしょう。
じょうざい‐せんじょう【常在戦場】
出典:小学館 デジタル大辞泉
いつでも戦場にいる心構えで事をなせという心得を示す語。
常在戦場の由来
常在戦場という四字熟語は、戦国時代〜江戸時代に活躍した、とある一族に由来するといわれています。この時代には、牧野家という一族がおり、一家は「常在戦場」を家訓としていたようです。
牧野家は、現在の愛知県豊川市牛久保町にかつて存在していた藩の藩主でした。この場所は交通の要所となっていることから、各方面から敵が攻めてくる可能性があったようです。
このことから、牧野家はいつでも戦いに挑める心構えを家訓にしたと考えられています。
常在戦場の例文
常在戦場とは、常に緊張感をもって行動する、物事を行うといった意味で用いられる言葉です。常在戦場を日常会話の中で用いる際は、以下の例文を参考にしてください。
・今日から新クォーターとなるため、再度気を引き締め、常在戦場の心構えで仕事に臨んでください
・ゴールデンウィークを経て、なんだか気が緩んでしまった。こういうときはミスが起こりやすいから、常在戦場の気持ちで仕事に打ち込もう
常在戦場の類語・言い換え表現、反対語
常在戦場という四字熟語には、類語や言い換え表現、反対語があります。まずは常在戦場と似た意味をもつ言葉として「治に居て乱を忘れず」や「いざは常、常はいざなり」といった2語を紹介します。そして、常在戦場の反対語として「戦を見て矢を矧ぐ」を解説します。
1つの語句を覚える際は、その類語や反対語もあわせて覚えておくことで、ボキャブラリーの向上が期待できるでしょう。
治に居て乱を忘れず
治に居て乱を忘れず(ちにいてらんをわすれず)とは、平和な時でも争いや混乱の時代に備える、準備を怠らないといった意味で用いられることわざです。
治とは統治の行き届いた、戦乱のない状態のことです。そのような状況下でも、常に混乱の時代へ備える心構えを表しています。
常在戦場と比較すると「意識」や「準備」に重きが置かれた四字熟語です。
いざは常、常はいざなり
いざは常、常はいざなり(いざはつね、つねはいざなり)とは、平和な日常に甘んじることなく、いつでも何か問題があったときのことを考えて過ごす大切さを説くことわざです。
常在戦場とは異なり、戦場にいるような緊張感を表した言葉ではないものの、近しい意味があります。常在戦場をもう少しソフトな表現にしたもの=いざは常、常はいざなりと考えるとわかりやすいかもしれません。
反対語は「戦を見て矢を矧ぐ」
常在戦場の反対語は「戦を見て矢を矧ぐ」です。これは、戦いが始まってから弓矢の準備を始めるという意味のことわざです。当然、戦いが始まってから武器を準備しても遅いでしょう。
このことから、事が起きてから準備を始めることの愚かさを表現した言葉として使われるようになりました。まさしく、いつ争いが起きてもいいように備える常在戦場とは、真逆の意味であるといえます。
常在戦場に関連深いとされる人物
前述したように常在戦場ということわざは、牧野家の家風に由来しているとされる言葉です。しかし常在戦場と関連深い人物は、牧野家だけではありません。山本五十六もまた、常在戦場と関連深い人物といわれています。
この章では、山本五十六と牧野忠成という、2人の人物について解説。四字熟語とどのように関係しているのか、見ていきましょう。
山本五十六(やまもと いそろく)
山本五十六(やまもと いそろく)は、第26、27代連合艦隊司令長官を務めた人物です。
そもそも常在戦場とは、長岡藩士にとっては「精神規範」ともされる言葉でした。同人も例外ではなく、他人に揮毫(きごう)を頼まれたときは「常在戦場」と書いていたそうです。なお揮毫とは、現代でいうところのサインのようなものです。
牧野忠成(まきの ただなり)
牧野忠成(まきの ただなり)は、天正9年、三河国牛久保で名を馳せた、牧野康成の長男として誕生しました。その後、越後長岡藩主として活躍した同人は、安土桃山時代から江戸時代前期にかけて武将・大名を務めました。
戦国時代から平和な時代への移行期にあっても、家臣をよくまとめ上げた人物としても知られています。長岡藩250年の歴史において、その基礎を築きました。
「戦い」に関する四字熟語
常在戦場のように「戦い」に関する四字熟語は複数あります。たとえば「攻城野戦」や「牛歩戦術」です。いずれも戦いにおける「戦術」を表した言葉であり、前者は攻め方、後者は妨害行為のことを指します。
ここでは「攻城野戦」と「牛歩戦術」について、語句の意味を解説します。同じく戦いに関連した言葉として、常在戦場とともに覚えておきましょう。
攻城野戦(こうじょうやせん)
攻城野戦(こうじょうやせん)とは、野原や平地で戦闘をし、城を攻めるといった戦術を指す言葉です。攻城とは、文字通り城を攻めることであり、野戦とは野外で戦うことを意味する熟語です。
牛歩戦術(ぎゅうほせんじゅつ)
牛歩戦術(ぎゅうほせんじゅつ)とは、意図的にゆっくりと歩を進めることで、相手の妨害をする戦術を指す言葉です。戦争といった意味での「戦い」だけでなく、政策を引き延ばすなどの時間稼ぎといった意味合いでも用いられます。つまり何らかの目的のために、あえて作業の進捗を遅らせるといった策略にも、広く用いられる言葉ということです。
常在戦場を正しく使おう
常在戦場とは、字の如く「常に戦場に在る(いる)」ような心構えを指す言葉です。牧野家という一族に由来する四字熟語ですが、他にも山本五十六を始め、長岡藩士の間で非常に大切にされてきた言葉なのだとわかります。
常に緊張感をもった心構えは、現代人にも必要なものかもしれません。仕事を始め、さまざまな場面で「常在戦場」を忘れないようにしたいですね。
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