鉄面皮の意味とは?
鉄面皮(てつめんぴ)とは、鉄でできている面(つら)の皮の意味で、恥知らずで厚かましいことや、そのような人・様子を指す言葉です。鉄面皮は、名詞としても形容動詞としても使われます。それぞれの品詞に分けて、例文を紹介します。
てつ‐めんぴ【鉄面皮】
出典:小学館 デジタル大辞泉
[名・形動]《鉄でできている面(つら) の皮の意》恥知らずで、厚かましいこと。また、その人や、そのさま。厚顔。「—な(の)男」
名詞「鉄面皮」の使い方を例文で紹介
鉄面皮を名詞として使った例文をいくつかみていきましょう。
・彼のような人を鉄面皮というのだろう
・いつもお世話になっているのに、まだ頼ろうとするの?鉄面皮とは君のことだ
鉄面皮にはよい意味はないため、使う相手や場面に注意したいところ。親しい間柄であっても、「鉄面皮」と表現すると相手を傷つけてしまう可能性があります。
形容動詞「鉄面皮な」の使い方を例文で紹介
「鉄面皮だ」という形容動詞で使われることもあります。
・彼女は意外と鉄面皮なところがある
・迷惑をかけているとは思っていないようだ。彼はまさしく鉄面皮な男だ
鉄面皮と鉄仮面の違い
鉄面皮と混同されがちな言葉として、「鉄仮面(てっかめん)」が挙げられます。鉄仮面とは、本名・生没年未詳の17世紀のフランス人で、サントマルグリット島やバスチーユなどの牢獄に幽閉され、1703年に死亡したといわれる人のことです。
常に布製の仮面をつけ正体不明だったことから、後年、鉄仮面の伝説が作られました。数多くのさまざまな文学作品のモチーフにもなっています。また、鉄仮面は政治犯ともいわれていますが、太陽王ルイ14世の双子の兄だったなどの噂もあり、作家たちの創作意欲を刺激しています。
なお、鉄仮面には鉄面皮のように「恥知らず」や「厚かましい」といった意味はありませんが、同じく「鉄」と「面」が含まれていることから取り違えて使われるケースが少なくありません。
・彼は鉄仮面を崩すことなく、インタビューに答えた
この場合、鉄仮面は「無表情」の意味で使われていると考えられます。厚い鉄の仮面を被っているように表情が変わらないことを表現しているのでしょう。
間違えて「彼は鉄面皮を崩すことなく……」と表現すると、彼が恥知らずなような意味になってしまいます。正確に意味を伝えるためにも、適切な言葉を選ぶようにしましょう。
鉄面皮と類似する意味を持つ言葉を紹介
鉄面皮と類似する意味を持つ言葉としては、次のものが挙げられます。
・図図しい(ずうずうしい)、いけ図図しい(いけずうずうしい)
・厚顔(こうがん)、厚顔無恥(こうがんむち)
・憎憎しい(にくにくしい)
・破廉恥(はれんち)
・横風(おうふう)
・僭上(せんじょう)
それぞれのニュアンスの違いを、例文を使って紹介します。
図図しい(ずうずうしい)、いけ図図しい(いけずうずうしい)
図図しい(ずうずうしい)とは恥を知らないことや厚かましいことを意味する形容詞です。鉄面皮と同じ意味で使われます。
・彼は図図しくも、居候を決めこんだ
・呼んでもいないのに勝手に家に上がりこむ図図しさに驚いた
図図しいに接頭語「いけ」をつけると、いやになるほど厚かましいという意味になります。接頭語「いけ」は、好ましくない意味の語に付いて、いっそう卑しめ、さげすむ意味を表現する言葉です。たとえば、次のように使われることがあります。
・手ぶらで来ていいよというのは社交辞令でしょう。額面通り受け取るなんて、いけ図図しい
・彼はなんとなくいけ好かない男だ
・いけしゃあしゃあとそのような発言ができるものだ
厚顔(こうがん)、厚顔無恥(こうがんむち)
厚顔(こうがん)とは、面の皮の厚いことや、恥知らずで図図しいことや、その様子です。鉄面皮とも言い換えられます。
・彼は厚顔だ
・厚顔なお願いをしてきた
また、厚顔無恥(こうがんむち)も同様に、図図しくて恥知らずなときに使われます。
憎憎しい(にくにくしい)
憎憎しいとは、いかにも憎らしい、もしくは非常に憎らしいことを意味します。鉄面皮には「憎らしい」という意味はありませんが、あまりにも厚かましい人や恥知らずな人に対して「憎らしい」気持ちを抱くときは、鉄面皮の言い換えに使えるかもしれません。
・彼女の憎憎しい態度を見るに、わたしに対して悪意があるのは明らかだ
・彼は、いかにも憎憎しげに「放っておいてくれ」と言い捨てた
破廉恥(はれんち)
破廉恥(はれんち)とは、恥を恥とも思わず平気でいることや、その様子のことです。恥知らずという意味もあるため、鉄面皮の言い換えにも使われます。
・彼の破廉恥な振る舞いが気になった
・あの先輩は破廉恥な人だ
横風(おうふう)
横風(おうふう)とは、偉そうに人を見くだす態度をとることやその様子のことです。鉄面皮には「偉そうだ」というニュアンスはありませんが、自分をわきまえない厚かましい人に使う言葉である点は同じといえるでしょう。
・いやに横風で失礼な人だ
・さっきから見知らぬ人が、横風な様子でこちらを見ている
なお、横風(よこかぜ)と発音するときは、横から吹き付ける風のことです。道路標識では、黄色のひし形の中に吹き流しを模した絵が記載されています。
僭上(せんじょう)
僭上(せんじょう)とは、身分を越えて出過ぎた行いをすることや、その様子です。鉄面皮と同じく厚かましいという意味合いもありますが、身分をわきまえていないというニュアンスを持たせるときに使われます。
・僭上な振る舞いをお許しください
・そのようなことをするのは、明らかに僭上沙汰だ
鉄面皮と鉄仮面を間違えずに使おう
鉄面皮と鉄仮面は漢字が似ていますが、意味はまったく異なります。
いわゆるポーカーフェイスの人に「鉄仮面」というのは間違っていませんが、「鉄面皮」というと非難をしているような意味になるため注意してください。また、鉄面皮はネガティブな意味の言葉のため、使うシチュエーションや相手を選ぶことが大切です。
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