【目次】
・「亥の子餅」とは?
・亥の子祭とは
・関東には「亥子祭」はないの?
・「亥の子餅」を食べる地域
・「亥の子餅」の作り方とは? おすすめの材料も
・2021年の亥の子はいつ?
・和菓子を食べる風習ってほかにもある?
・最後に
11月に、「亥の子餅」と呼ばれる和菓子を食べる風習があるのを知っていますか? 見た目にも愛らしい「亥の子餅」。この風習について解説しましょう。
「亥の子餅」とは?
旧暦の亥の月の最初の亥の日、亥の刻にイノシシのような形をした「亥の子餅」を食べると万病除けになると言われています。
旧暦の亥の月は、今で言う11月。亥の刻は午後10時ごろを指します。もともとは無病息災のまじないとした中国の俗諺(ぞくげん)をもとに、平安時代に宮廷で行われたのが始まりだそう。紫式部による『源氏物語』にも、「亥の子餅」は登場しています。
鎌倉時代に入ると、武家にも似たような儀式が広まりました。イノシシは子だくさんであることから、無病息災に加えて、子孫繁栄の意味合いも付け加えられたといいます。
江戸時代には、旧暦の亥の月の最初の亥の日を「玄猪(げんちょ)の日」と呼ぶようになり、「亥の子餅」は、「玄猪餅(げんちょもち)」と呼ばれるようにもなりました。
また、中国に起源をもつ陰陽五行説において「亥」は、水の気を持つため火災を逃れるという説も。このことから、江戸時代、庶民たちはこの日に炬燵(こたつ)や火鉢を出したそうです。今でも、茶の湯の世界では、この日を「炉開き」としており、茶席には「亥の子餅」が登場します。
亥の子祭とは
京都御苑の西、蛤御門(はまぐりごもん)の向かいに位置する護王神社では、毎年11月1日に「亥子祭」が行われます。
祭礼が始まるのは、夕方5時ごろ。平安装束を身につけた女性や子どもが献上した、胡麻・小豆・栗の粉を神職が杵と臼でつき、3種の「亥の子餅」を神前に供えます。
拝殿で優雅な儀式が行われた後、6時30分ごろになると、「亥の子餅」を皇室に献上するための行列が京都御所へ向かいます。献上後には境内にて、「亥の子餅」の振る舞いがあり、参拝者が無病息災を祈願します。
関東には「亥子祭」はないの?
「亥子祭」は、秋の稲刈りの後に西日本各地で盛んに行われてきましたが、関東・東日本では、「十日夜(とおかんや)」が行われます。
「十日夜(とおかんや)」は、旧暦10月10日に行われていた収穫祭で、この日に田の神が山に帰るとされていました。子どもたちが歌を歌いながら、藁で作った槌(つち)などで地面をたたきながら家々をめぐり、お菓子やおこずかいをもらいます。近年は日本版ハロウィンなどとして取り上げられたりもしていますね。
「亥の子餅」を食べる地域
主に関西地方で食べられる「亥の子餅」は、イノシシをモチーフにした和菓子です。あんを求肥(ぎゅうひ)に包んで、ゴマをあしらってウリボウ(イノシシの子ども)をかたどるお店も多いですね。
材料や形状に決まったスタイルはないので、いろいろなお店で選んでみるのも楽しいかもしれません。
「亥の子餅」の作り方とは? おすすめの材料も
「亥の子餅」は家庭で作ることもできます。インターネットで検索すれば、さまざまなレシピが出てきますので、できそうなものを選んでやってみましょう。
たとえば、餅粉にシナモンを混ぜたものを、水と砂糖で練り上げたものを丸めるといった簡単なものもありますよ。イノシシをイメージしながら丸めるところなどは、子どもと一緒に楽しんでもいいですね。
2021年の亥の子はいつ?
さて、今年2021年の亥の子は、11月11日(木)です。そのころに和菓子屋さんをチェックするのを忘れないようにしましょう。
和菓子を食べる風習ってほかにもある?
「亥の子餅」以外にも、時期を決めて和菓子を食べる風習がたくさんあるのを知っていますか? 日本古来の風習に、和菓子は密接に結びついているのです。
1:水無月(みなづき)
6月30日は、一年のちょうど半分、折り返しの日にあたります。この日は「夏越の祓(なごしのはらえ)」と言い、京都を中心に周辺地域では水無月を食べる風習があります。
古く旧暦の6月1日は「氷室開き」と言い、氷室から氷や雪を取り出して、天皇に献上する伝統行事が行われていました。水無月は「白いういろうに、甘く煮た小豆をのせたもの」ですが、ういろう部分は氷室の氷をかたどったものだと言われています。小豆は厄除けのご利益があるとされ、水無月を食すことで無病息災を願うのです。
2:月見団子
中秋の名月には、月見団子を食べますね。旧暦では7月から9月までを秋としており、秋の真ん中に出る満月という意味で、8月15日の「月」を「中秋の名月」と言いました。新暦になってからは、9月7日から10月8日までの間の「満月」をこう呼びます。もともとは秋の収穫の時期とも重なることから、「芋名月(いもめいげつ)」と呼ばれていました。
関東の月見団子は、白くて小さな丸いお団子を、三方にピラミッド型に積み上げます。一方、関西地方では里芋に見立てたお餅が登場。俵型の白いお餅に、帯状にしたあんこを巻きつけます。地域によって、全然違うところがおもしろいですね。
3:おはぎ・ぼたもち
春のお彼岸には「ぼたもち」、秋のお彼岸には「おはぎ」を食べます。
「彼岸」とは、本来、仏教の言葉で、煩悩と迷いの「此岸」にいる人々が、修行によって到達できる世界を「彼岸」と言いました。
お彼岸は春と秋の年2回、春分の日と秋分の日を挟んで、それぞれ前後3日間を指します。夜と昼の長さが同じになることから、彼岸に通じやすくなると考えられており、この期間に先祖を供養すると、極楽へ行けるとされていたようです。
このお彼岸のお供えの定番は「ぼたもち」と「おはぎ」。実はこの2つは同じもので、春に牡丹が咲くことから「ぼたもち」、秋には萩の花が咲くことから「おはぎ」と名前だけが異なるのです。
4:ひちぎり
3月3日のひな祭りには、白酒や菱餅、ひなあられとたくさんの食べ物が登場しますが、「ひちぎり」もその一つ。引き伸ばした蓬餅の真ん中にあんこをのせたもので、餅を丸める時間もないほど忙しいときに引きちぎって作ったことから、この名前がついたと言われます。
「ひちぎり」は、真珠を抱くアコヤ貝に見立てられることもあり、真珠のように大切な娘を守るという意味があるそうです。
5:柏餅
5月5月の端午の節句には柏餅を食べます。柏餅に使われる柏の葉は、古来、器として使われていたそうで、また新芽が出るまで古い葉が落ちないことから、子孫繁栄を願って縁起物としても使用されるようになりました。
柏餅が現在の形になったのは江戸時代のこと。最初は塩あんだったのですが、時代が進むにつれ、甘いあんが使われるようになりました。柏餅が全国に広がったのは、参勤交代によるものだそうです。
最後に
お月見が終われば、夜はすっかり冷えますね。炬燵が恋しくなりそうです。そんな季節の変化を感じたら、昔ながらの風習に触れるいい機会。今年の秋は、ぜひ「亥の子餅」をいただきながら過ごしてみましょう。
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