偕老同穴の意味とは?
偕老同穴(かいろうどうけつ)とは、夫婦仲のよい様子を指す言葉です。また、カイロウドウケツ科の海綿動物の総称としても使われます。
意味1.夫婦が仲睦まじく、契りが固いこと
偕老同穴の「偕(かい)」とは、「ともに」という意味です。つまり、偕老同穴とは「ともに老いて、同じ墓穴に埋葬される」ことで、一般的には夫婦が仲よく暮らすことを指します。
偕老同穴は、中国の書物・詩経を由来とする言葉です。詩経には「偕老同穴」というフレーズはありませんが、異なる部分に「偕老」と「同穴」があり、2つをつなげて1つの言葉として使われるようになりました。
意味2.海綿動物の総称
偕老同穴は、カイロウドウケツ科の海綿動物の総称です。深海の泥中に直立し、円筒形で全長30~80cmほど、体壁はかごの目状です。
偕老同穴の内部には、雌雄一対のドウケツエビが共生していることがあるため、最初はドウケツエビのことを「偕老同穴」と呼んでいました。しかし、現在では、ドウケツエビが暮らしている海綿動物のほうを「偕老同穴」と呼ぶようになっています。
偕老同穴は水深200mほどの深海に生息しています。下端は束状の骨片でできていて、植物の根のように海底に身体を固定していますが、潮の流れが速いときは横倒しになった形で生活するといわれています。
かいろう‐どうけつ
出典:小学館 デジタル大辞泉
1 《「詩経」邶風・撃鼓の「偕老」と「詩経」王風・大車の「同穴」を続けていったもの。生きてはともに老い、死んでは同じ墓に葬られる意》夫婦が仲むつまじく、契りの固いこと。
2 カイロウドウケツ科の海綿動物の総称。深海の泥中に直立する。円筒形で、全長30〜80センチ。体壁はかごの目状で、内部の胃腔に雌雄一対のドウケツエビが共生することから、はじめエビをカイロウドウケツと呼んだが、後に海綿の名となった。相模 (さがみ) 湾・駿河 (するが) 湾や土佐湾に生息。
偕老同穴を使ったスピーチ例
偕老同穴は、結婚式や金婚式のスピーチでも使われることがある言葉です。ただし、日常会話に使うほどよく知られた言葉ともいえないため、スピーチで使うときは、最初に漢字や言葉の意味を説明しておくほうがよいかもしれません。
結婚式でのスピーチ例
結婚式や披露宴で、「偕老同穴」という言葉を使ってスピーチをすることがあります。
「この度はご結婚おめでとうございます。いつも仲よく、見ているだけでも笑顔になれるお二人ですね。中国の詩経ではいつまでも仲よく暮らす姿を偕老同穴と表現するようです。その言葉を聞いて、まっさきにお二人のことが頭に浮かびました。偕老同穴で、いつまでも仲よく暮らしてください」
なお、結婚式や披露宴などのおめでたい席では、「老いる」や「死ぬ」「墓穴」などの言葉は避けるほうがよいかもしれません。偕老同穴の意味を説明するときには、なるべく「老いる」や「墓穴」などの言葉を使わないように意識したいところです。
金婚式でのスピーチ例
金婚式では、祝われる本人がスピーチをすることがあります。その際に偕老同穴を使ってみるのもよいでしょう。
「今日は、わたしたちのために集まっていただいてありがとうございました。50年、半世紀と思うと非常に長い時間ですが、あっという間の50年間でした。健康に仲よく暮らせたのは、やはり妻のおかげです。改めて、偕老同穴の契りを結び、ともに暮らしていきたいと思います」
偕老同穴と類似する意味を持つ言葉
偕老同穴と同じく、仲よく暮らすことを意味する言葉としては、次のものが挙げられます。
・比翼連理(ひよくれんり)
・鴛鴦(えんおう)、鴛鴦の契り(えんおうのちぎり)
・水魚の交わり
・挙案斉眉(きょあんせいび)
それぞれの意味や使い方、偕老同穴との違いを紹介します。
比翼連理(ひよくれんり)
比翼連理(ひよくれんり)とは、比翼の鳥と連理の枝のことで、夫婦仲の睦まじい様子をたとえた言葉です。偕老同穴と同じく夫婦仲のよさを指す言葉ですが、墓穴まで一緒というよりは欠かせない存在といったニュアンスが含まれるといえるでしょう。
比翼の鳥とは、雌雄それぞれが目と翼を一つずつ持ち、2羽が常に一体となって飛ぶ中国の空想上の鳥です。お互いがいないと飛べないため、お互いにとって欠かせない存在を指すときに使われます。
また、連理の枝とは、1本の木の枝が他の木の枝と連なって木目が通じ合っていることです。異なるバックボーンを持つ2人の人物が、長く一緒にいることで一体となっている様子を指しています。いずれも夫婦やパートナー間の深い契りをたとえた言葉です。
・お互いがお互いにとって欠かせない存在のわたしたちは、まさに比翼連理といえるだろう
・あの夫婦は比翼連理という言葉にふさわしい仲のよさだ
鴛鴦(えんおう)、鴛鴦の契り(えんおうのちぎり)
鴛鴦(えんおう)の鴛はオスのオシドリ、鴦はメスのオシドリのことで、鴛鴦とつなげていうことでオシドリのつがいを指します。また、オシドリの雌雄がいつも一緒にいるところから、夫婦仲の睦まじい様子にも使われます。
・どこに行くにもあの夫婦は一緒で、まさに鴛鴦のようだ
・鴛鴦のように仲のよい夫婦になりたい
鴛鴦の契り(えんおうのちぎり)も、鴛鴦や比翼連理と同様、夫婦仲の睦まじいたとえです。
水魚の交わり
水魚の交わりとは、非常に親密な交友のことです。劉備が諸葛孔明と自分との間柄をたとえとされる言葉で、水と魚との切り離せない関係のような親密さを示します。偕老同穴のように夫婦仲に限定せずに使われます。
・お互いがお互いを必要としているのは、まさに水魚の交わりといえるだろう
・彼女との関係は、水魚の交わりといえる
挙案斉眉(きょあんせいび)
挙案斉眉(きょあんせいび)とは、妻が夫に礼儀を尽くし尊ぶたとえです。また、夫婦が互いに礼儀を尽くし尊敬して、仲がよいたとえにも使われます。場合によっては男尊女卑的なニュアンスが含まれることに注意が必要といえます。
・挙案斉眉の古風な女性だった
・仲のよい夫婦に憧れるが、挙案斉眉よりは偕老同穴を目指したい
偕老同穴の意味を把握しよう
偕老同穴はともに老いて、同じ墓穴に入るほど仲のよい夫婦を指す言葉です。結婚式や金婚式などのおめでたい席のスピーチにも使われるため、意味を押さえておきましょう。
また、比翼連理や鴛鴦の契りなども夫婦仲のよい様子を指す言葉です。意味を理解しておくと、スピーチを求められたときに活用できます。
メイン・アイキャッチ画像:(c)Adobe Stock