早起きは三文の徳とは? 読み方と意味
早起きは三文の徳(はやおきはさんもんのとく)とは、早起きをすると健康にもよく、また、そのほか何かとよいことがあるという意味のことわざです。日常会話のなかでも使われることがあります。
・先週から朝5時に起きる生活を始めた。早起きは三文の徳というけれど、本当に体調もよくなったように思う
・早起きは三文の徳というから、夜型生活ではなく朝型に変えるといいよ
早起きは三文の徳
出典:小学館 デジタル大辞泉
《「徳」は「得」とも書く》早起きをすると健康にもよく、また、そのほか何かとよいことがあるものであるということ。朝起きは三文の徳。
早起きは三文の徳の由来とは?
早起きは三文の徳の由来については、正確にはわかっていません。しかし、「文(もん)」という通貨単位が使われていることからも、昨今誕生したことわざではないと考えられます。ここでは、一般的に由来といわれている3つの説を紹介します。
中国説
中国の古い詩に「3日早起きすれば、一人前の仕事になる」という意味のフレーズがあるようです。この詩句から、早起きすればよいことがあるという意味で「早起きは三文の徳」という言葉が生まれたといわれています。
高知説
「早起きは三文の徳」は、日本由来の言葉という説もあります。
土佐の山内家の執政・野中兼山は、仁淀川の下流に八田堰を造りました。氾濫を防ぐには、しっかりと堤防を固める必要があります。野中兼山は人々に「早起きをして堤の上を歩くように」と命じ、歩いた人には褒美として三文を与えることにしました。
この逸話から「早起きは三文の得」ということわざが生まれ、早起きするといいことがある意味で使われるようになったとされています。
奈良説
高知(土佐)ではなく奈良由来の言葉という説もあります。
かつて奈良では、家の前に鹿の死体を放置していると、三文の罰金が科せられたそうです。日中は「鹿の死体はないだろうか」と家の前を見張ることは可能ですが、夜間まではわかりません。街中を歩いている鹿が家の前で死に、罰金を請求される恐れがあります。
そこで人々は、朝早くに起きて、家の前に鹿の死体がないか確認したのだとか。鹿の死体を見つけたときは、遠くまでは運べないため、隣の家の前に移したともいわれています。
結果として、もっとも遅く起きた家の前に鹿の死体が置かれ、罰金が請求されることに。この逸話から「早起きしないと三文の損がある」といわれるようになり、言い回しが転じて「早起きすると三文の得がある」となったという見方もあるようです。
三文はいくらぐらい?
三文は、現在の貨幣価値では90円ほどのようです。決して高い金額とはいえないため、「早起きは三文の徳」という言葉も、元々は「早起きしてもあまりよいことはない」という意味で使われていたともいわれています。
なお、三文は、きわめて価値が低いことを示す言葉としても使われます。たとえば、三文小説(さんもんしょうせつ)は低級な小説を軽蔑していう言葉です。「三文=価値が低いもの」に由来する言い回しといえるでしょう。また三文判(さんもんばん)は、安物の印判や、出来合いの粗末な印判を指します。
三文小説も三文判も、いずれも「三文=価値が低いもの」として使われているため、「早起きは三文の徳」の「三文」もネガティブな意味が含まれているかもしれません。他人の早起きについて「早起きは三文の徳」という言葉を使うときは、三文が何を指しているか、けなす意味になっていないか確認するようにしましょう。
たとえば、「早起きして資格勉強をしている」という友人に対して「早起きは三文の徳というから、いいことあるね」というケース。この場合「資格勉強=三文=価値が低いもの」となってしまいかねず、友人に対して失礼かもしれません。
徳と得はどちらが正しい?
「早起きは三文の徳」と記載されていることもあれば、「早起きは三文の得」と記載されることもあります。辞書によっては「徳」と「得」の両方が記載されているため、どちらを使っても間違いではないといえるでしょう。
なお「徳」は、立派なおこないや品性のことで「美徳」や「徳望」のように使います。早起きをよい習慣としておこなうときには、「早起きは三文の徳」がしっくりとくるのではないでしょうか。
また「徳」には、「徳用」のように儲けの意味もあります。高知説のように早起きをして金銭的な儲けが発生する場合も、「早起きは三文の徳」が合っているといえそうです。
一方で「得」も、「利益を得ること」や「儲けること」の意味があります。早起きをすることで、健康や仕事などにメリットがあったと感じるときは、「早起きは三文の得」と表記するのもよいかもしれません。
早起きは三文の徳と類似する意味のことわざ
早起きは三文の徳と類似した意味のことわざとしては、次のものが挙げられます。
・先んずれば人を制す
先んずれば人を制す(さきんずればひとをせいす)とは、他人よりも先に事をおこなえば、有利な立場に立てるという意味です。戦いだけでなく勉強や仕事なども、早め早めに始めることで有利になることがあります。
・入試までまだ3年もあるが、先んずれば人を制すというから、今すぐ勉強を始めよう
・じっくりと考えて慎重に行動することも大切だが、あまり慎重すぎるのもよくない。先んずれば人を制すというから、他人よりも早く行動することにはメリットがあるはずだ
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早起きは三文の徳を実践してみよう
早起きをすると、爽快な気分で一日を過ごしやすくなります。慣れないうちは起きるのが辛いかもしれませんが、日々を有効活用するためにも早起き習慣を始めてみましょう。
勉強や運動などの自分のためになることに時間を使えば、さらに充実感を味わえます。また、調理や掃除などの家事を朝に済ますのもよいかもしれません。ぜひ「早起きは三文の徳」を実践してみてください。
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