目次Contents
葬儀後の会食「通夜振る舞い」と「精進落とし」とは?
通夜の後や葬儀告別式(火葬)の後には、喪家が参列者に感謝の意味を伝え、故人をしのぶために食事やお酒を振る舞う会食の機会があります。その代表的なものが「通夜振る舞い」や「精進落とし」です。
まずは、それぞれがどんなものなのか紹介します。
通夜振る舞いとは?
通夜振る舞いとは、通夜に来てくれた方々のお礼として、通夜の後に食事や飲み物を振る舞う会食です。喪主が参列者に感謝の意を示すとともに、故人を共にしのぶ意味があります。
通夜には、葬儀の前に悲しみを和らげるため、お酒を振る舞います。仏教よりも日本の神道の考え方が入っており、喪家の穢れ(けがれ)をお酒で清める意味があるのです。
精進落としとは?
精進落としとは、葬儀の後または法要後に行われる会食です。通夜振る舞いと同様、喪家が参列者に対して感謝の意を伝え、故人をしのびながら語らい、会食を行います。
「通夜振る舞い」と「精進落とし」はどう違う?
通夜振る舞いと精進落としの一般的な違いを紹介します。
行われるタイミング
通夜振る舞いは、通夜が終わった直後に行われます。一方で精進落としは、葬儀告別式(火葬)後、つまり葬儀が終わった後に行われるのが通例です。
参加者と参加形式
通夜振る舞いは、一般的に通夜に参列した弔問客全員に向けて行い、希望者が参加する形になります。精進落としは火葬後に行われるため、参加者は葬儀や火葬の参列者となる遺族や親族、僧侶です。懐石料理などが一人一人に対して用意されることがほとんどです。
料理の内容
本来、どちらも肉や魚を使わない精進料理をいただくものでしたが、現代ではほとんどの場合、一般的な料理が提供される傾向がみられます。通夜振る舞いではオードブルや軽食が用意され、精進落としでは仕出し弁当や懐石料理が用いられているようです。どちらもお酒やソフトドリンクも提供され、特にお酒は清めの意味があります。
元来と現代の「精進落とし」の意味合い
精進落としは本来、仏教の教えからくるものですが、現代においてはその意味が薄れている印象も。本来の精進落としの意味を確認しましょう。
本来の精進落としの意味
家族が亡くなると喪中が始まり、祝いごとや旅行などを控え、3か月から1年にわたって喪に服します。また仏教では家族が亡くなってから49日目に行われる「四十九日法要」が終わるまでの期間を忌中とし、喪中と同様に祝いごとなどは控えます。昔は、喪中や忌中の間は普段の食事についても肉や魚を控え、野菜や豆腐などの植物由来の食材のみを使用した「精進料理」を食して過ごす風習がありました。
そして四十九日の忌明け法要後に、精進料理から通常の食事に戻るタイミングで「精進落とし」を行っていました。精進落としには「忌が明けたから、これで精進料理を食べるのは最後にして、以後は通常の食事に戻しましょう」という意味があります。
現代の精進落としの傾向とは
現在ではこうした意味は薄れ、「葬儀が無事に終わったから、参列いただいた方々に食事を振る舞って感謝の気持ちを伝えましょう」「みんなで故人をしのび、語らい合いながら会食をしましょう」などの意味で行われている傾向にあります。
本来、精進落としで食べる料理は精進料理です。しかし現代において提供されるのは、ほとんどの場合が肉や魚を用いた料理。これは集まった人たちにおいしく食事をしていただき、ゆっくりと故人をしのびながら話していってほしいという目的が、最も重要になっているからでしょう。そのため、お寿司や天ぷら、懐石料理などが提供されることが多いです。
精進料理でないから悪いということではなく、現代においては「故人が最も喜んでくれることは何か」という観点から選択されている、ととらえるとよいのではないでしょうか。
「通夜振る舞い」と「精進落とし」のマナー
最後に、通夜振る舞いと精進落としに参加する際のマナーを確認しましょう。
会食というと気後れして、辞退したくなる方もいるかもしれません。しかし通夜や葬儀に参列した際には、基本的に参加するのがマナーです。
会食といっても、どんちゃん騒ぎをしたり、長居したりするものではありません。先術した通り、喪家から参列してくれたことへの感謝の意味がありますので、きちんとお受けして、故人をしのびましょう。お酒は本来、悲しみや穢れの清めの意味でいただくものです。そのため、食事とお酒、それぞれ少し口を付けるのがマナーとされています。
反対に、長居して大笑いしながらおしゃべりをしたり、たくさん食べたり飲んだり、ひどく酔っぱらったりするのはマナー違反と映ることもあります。故人や遺族との関係性にもよるため一概には言えませんが、一般的なマナーとして押さえておきましょう。
* * *
「通夜振る舞い」と「精進落とし」の意味や違い、マナーを紹介しました。現代においては意味合いが変化している部分もありますが、行われ続けているものです。葬儀に参列する際にはこのような会食の機会があること、また本来の意味を知っていることで、参加する際の心持ちやふるまいも変わってくるのではないでしょうか。
TOP画像/(c)Adobe Stock
メモリアルアートの大野屋 終活・仏事アドバイザー 川島敦郎
1956年東京都出身。大学卒業後ブライダル会社に勤務。企画やプランナー育成に携わり、業界資格の試験官も務めたエキスパート。ブライダルの世界から2005年にメモリアルアートの大野屋に入社。葬儀ディレクター、生前相談アドバイザー、セミナー講師としても活躍し、現在「大野屋テレホンセンター」で仏事アドバイザーとして年間5000件以上の相談に答える。
大野屋テレホンセンター著「もう悩まない! 葬儀仏事お墓ズバリ! 解決アンサー」(二見書房)、監修「小さな葬儀とお墓選び・墓じまい」(自由国民社)
お電話窓口:0120-02-8888