仏事のプロが教える、葬儀の流れとマナー
お世話になった方や親しい友人・知人などの突然の訃報により、お葬式に参列することになったら、通夜と、葬儀・告別式のどちらに参列すればいいのか、どのような流れで進むのか、お焼香やご挨拶はどのようにすればいいのかわからないということもあるのでは。
そこで、今回は、通夜や葬儀・告別式に一般の弔問客として参列する際の基本的流れやふるまいマナーを紹介します。
通夜・葬式の流れとマナー
仏式の「通夜」とは、本来は、葬儀と告別式の前日に故人の遺族や親族、特に親しかった方々だけが集まり、眠らず夜通し故人をしのぶというものでした。そして翌日に「葬儀」を執り行い、葬儀が終わると、この世の最後の別れを告げる「告別式」を執り行い、火葬場へ向かいます。
ただ、現代では、通夜は葬儀と同様の儀式になってきました。葬儀は、昼間に執り行うことが多く、平日働いている人は参列できないことが多いため、夕方から夜に行われる通夜に行く人が圧倒的に多くなりました。
そのため、現在は通夜であっても葬儀と同じように行われることが多いです。
Q. 通夜と葬儀、どちらに参列すればいい?
A. 葬儀が正式な儀式ですので、葬儀に参列すると良いです。
どちらに参列すればいいかと聞かれれば、葬儀と答えます。正式な儀式だからです。もちろん、通夜と葬儀、両方に参列すれば、より故人の供養になります。親しい間柄であったのであれば、それが最も良いでしょう。
しかし、先ほども記載した通り、日中は仕事の為、通夜だけに参列するという方も多くなっています。
通夜・葬式の流れ
通夜と葬儀・告別式の一般的な流れを紹介しておきます。なお、先述の通り、近年は通夜は葬儀と同様に行われることが多いため、今回は葬式の流れとして紹介します。
◆1. 会場についたら入る前にコートを脱ぐ
会場についたら、受付に向かいます。もしコートを着ていたら、会場に入る前に脱いで脇に抱えます。コインロッカーや、受付にクロークを設けていることもあります。
◆2. 受付で記帳し、香典を渡す
受付では、「このたびはご愁傷様です」と挨拶をした後、名前や住所などを記帳し、香典をお渡しします。記帳台がある場合は先に記帳し、その後受付で挨拶をし香典をお渡しします。
ここで注意が必要なことが2つあります。まず、お香典は、受付で先に袱紗から出して袱紗の上に置いて手に持ち、挨拶をした後、お渡しします。
もう一つは、たとえ、受付の方が知り合いだったとしても、長く話し込まないこと。スムーズに受付を済ませるようにします。
◆3. 焼香を行う
開式まで時間がある場合、控室などに案内されればそこで待ちます。時間になったら、案内に従って式場に入ります。
僧侶がお経をあげ、ご遺族、参列者が順番に焼香を行います。焼香とは、仏教における供養の儀式です。
香木を細かく砕いた「抹香(まっこう)」を右手の親指・人差し指・中指の3本で抹香をつまみ、額の高さまで上げ、押しいただきます。その後、つまんだ抹香を香炉にくべます。
ここで、立礼焼香という、立ったまま行う焼香の手順を紹介します。
1. ご遺族に向かって一礼する。
2. 祭壇に向かい、ご本尊と遺影写真に対し、合掌しながら一礼する。
3. 一歩んで焼香台の前に立ち、焼香を行い、合掌します。
4. 再度、ご本尊と遺影写真に対して一礼をしたら、下がる。
5. 再度、ご遺族の向きに軽く会釈をして、順路に従って退く。
一般的に、これが一連の流れとなります。最近では参列者に対して「お先に失礼します」の意味合いで会釈をする方もいます。本来する必要がないことですが、行う際に注意しないければならないのは、祭壇にお尻を向けてしまうことです。参列者に会釈をする場合には、祭壇にお尻を向けないように注意しながら行いましょう。
Q. お焼香の回数は何回?
A. 宗派によって回数は異なります。
焼香の回数は、ご喪家の信仰する宗派のやり方にそって行います。事前に、葬儀の司会者や担当者から「お焼香は○回でお願いします」などの案内があれば、それに従いましょう。
◆4. 通夜ぶるまい
通夜の場合、儀式が終わると「通夜ぶるまい」が行われます。遺族側が参列者を食事やお酒でもてなし、故人の生前の思い出などを語り合う場ですので、通夜ぶるまいは、基本的にお断りをしないのがマナーです。
通夜ぶるまいのお部屋に行ったら、できるだけ食事や飲み物に口をつけて、少しお話をします。長居する必要はありません。食事の席は遠慮したいという方もいるかもしれませんが、お断りするのは失礼ということをマナーとして覚えておきましょう。
5. 花入れの儀に参加する
葬儀・告別式が終わると、火葬場への出棺の前に、祭壇のお花を棺の中に入れる「花入れの儀」が執り行われることもあります。その後、棺が霊柩車にのせられ、火葬場へ向かいます。一般参列の方は、手を合わせながらお見送りします。
知っておきたい葬儀のあれこれ・疑問
Q. 通夜と葬式の両方に参列したら、香典は両方に必要?
A. 両方に必要はありません。
通夜に参列し、香典をお渡ししていれば、翌日の葬儀・告別式に再度用意する必要はありません。記帳は両日とも行い、受付の方に「通夜にも参列しております」と伝えると良いでしょう。
Q. 遺族へ挨拶する際のマナーとかけるべき言葉は?
A. 長々と話さず、「お悔やみ申し上げます」が基本です。
遺族へ挨拶する機会は、通夜であれば通夜ぶるまいの場となるでしょう。参列者全員に対応するご遺族に配慮し、基本的に、長々と話さないことがマナーです。伝える言葉は「お悔やみ申し上げます」だけでかまいません。もしさらに一言かけてあげたいと思ったなら、「何か力になれることがあればいつでも言ってくださいね」と言うくらいに留めましょう。
Q. キリスト教式の場合の、お悔やみの言葉は?
A. 「安らかにお眠りください」と伝えましょう。
キリスト教式では、亡くなったら「神のもとに召される」ため、仏式の「お悔やみ申し上げます」や「ご愁傷様です」はふさわしくありません。「どうか安らかにお眠りください」という主旨を伝えましょう。
Q. 会場で知り合いの人を見つけたら、話をしてもいい?
A. 式場の外では、話をしてもかまいません。
通夜や葬儀・告別式の参列者の中に、知り合いを見つけることもあるでしょう。式場内では私語は慎むべきですが、ロビーや控え室などであれば、話してもかまいません。また通夜ぶるまいの席では、故人をしのび、生前の思い出を話されるのもよいでしょう。
* * *
通夜や葬儀・告別式の一般的な流れと、一般の弔問客として参列する際の基本マナーを解説してきました。宗派や地域によっても異なることがありますので、一概には言えませんが、基本を押さえておけば、厳粛な儀式の場にふさわしい振る舞いができるでしょう。
さて、葬儀マナーで多くのご質問を頂くのは香典についてです。お包みする金額や香典袋の書き方などの香典マナーについては次の機会に紹介します。
メモリアルアートの大野屋 終活・仏事アドバイザー 川島敦郎
1956年東京都出身。大学卒業後ブライダル会社に勤務。企画やプランナー育成に携わり、業界資格の試験官も務めたエキスパート。ブライダルの世界から2005年にメモリアルアートの大野屋に入社。葬儀ディレクター、生前相談アドバイザー、セミナー講師としても活躍し、現在「大野屋テレホンセンター」で仏事アドバイザーとして年間5000件以上の相談に答える。
大野屋テレホンセンター著「もう悩まない!葬儀仏事お墓ズバリ!解決アンサー」(二見書房)、監修「小さな葬儀とお墓選び・墓じまい」(自由国民社)
お電話窓口:0120-02-8888