「好事多魔」の意味は?
「好事多魔」は「良いことが続いている時ほど悪いことが起こりやすい」という意味の四字熟語で、「こうじたま」と読みます。「好事」とは良い流れや順調な状態のことで、「魔」は文字通り悪いことや予期せぬアクシデントを表します。
漢文(中国の文章)に由来する言葉で、原典は明の時代に伝えられた戯曲「琵琶記」にあります。中国からたくさんの言葉が日本に伝えられる過程で、漢文はより読みやすい書き下し文として広まりました。本来は「好事多磨」と書かれていたものが、「好事多魔」または「好事魔多し」に変化したといわれています。
ビジネスで「好事多魔」を使うなら?
「好事多魔」はビジネスシーンでも使われる四字熟語です。ビジネスだけでなく、日常生活でも使うシーンはあるので、この機会に「好事多魔」の使い方をマスターしておきましょう。
「好事魔多し」と使われることも
「好事多魔」は「好事魔多し」の形で使われることが多く、こちらのほうがポピュラーかもしれません。正しい発音としては「好事、魔多し」となり、読点の位置でしっかりと間を空けたほうが伝わりやすくなります。
例文1
子どもが有名大学に合格して安心していたら、旦那の給料が3割も下がっちゃった。好事多魔とはまさにこのことね。
例文2
好事多魔とはよく言うけど、自分の努力が実った時は素直に喜んだほうが人生楽しいと思うよ。
「好事多魔」は嬉しい出来事に浮かれる自分を戒める言葉ですが、あまり慎重になりすぎると目の前の喜びが半減したり、新しいチャレンジへの意欲を失ったりしてしまうかもしれません。
「好事多魔」の類義語や対義語はある?
「好事多魔」にはそれぞれ、似た意味の言葉と、反対の意味を持つ言葉があります。それぞれ、ご紹介します。
類義語1:そうは問屋がおろさない
こちらは慣用句というより、言葉遊びに近い言い回しです。問屋が商品を卸さなければ、そもそも商売ができません。このことから、「順調そのものに思えてもほんの少し邪魔が入るだけで状況が大きく変わってしまう」という意味の言葉として使われるようになりました。
類義語2:一寸先は闇
一寸とは約3センチのことですが、この場合はより慣用的な表現で「ほんの少しの」という意味で使われています。
明るい場所でも、少し先に進めば目の前が見えないほど暗くなるかもしれないという言葉です。
類義語3:寸善尺魔
善はポジティブ、魔はネガティブな出来事のこと。つまり、「良いことはあっという間に過ぎ去るが、悪いことは長く続く」という意味に解釈できます。
「幸福と不幸は二人連れ」もニュアンスとしてはよく似ている言葉です。
対義語1:順風満帆
「順風満帆」は「行く手をさえぎるハードルがなく、何をやってもうまくいく」状況を表す言葉です。
「帆」は船のマストにあたる部分のことで、追い風をいっぱいに受けて船が目的地にむかってまっすぐ進んでいる様子を表しています。
対義語2:渡る世間に鬼はなし
「世間には敵や邪魔者が一切いない」という意味の言葉です。この場合の「鬼」は怖い存在、信頼してはいけない存在を表しています。このことわざをパロディにした長寿ドラマが有名ですよね。
「好事多魔」の英語表現はある?
日本独特の言葉かと思いきや、英語にも似たような言葉があります。語彙力の幅が広がるので覚えておくといいかもしれません。
英語表現
「好事多魔」の英語表現は、いろいろなパターンがあります。代用的なものを一つご紹介します。
Lights are usually followed by shadows.
この場合の「lights」は光、「shadows」は影という意味。直訳すると、「光(良いこと)の後ろには影(悪いこと)がついてくるから気をつけよう」になり、まさに「好事多魔」です。
「A + be動詞+followed by B」で「Aの後ろにはBがついてくる(追いかけてくる)」という意味になります。丸暗記ではなく文法を合わせて覚えることで英語表現の幅が広がり、コミュニケーションが楽しくなるでしょう。
まとめ
漢文が由来となっている「好事多魔」は、浮かれすぎる自分や周囲を戒める、慎重な日本人らしい言葉ですね。
英語にも同じような表現があるので、もしかすると世界中に似たような言葉が存在するのかも。一つの言葉で、世界各国の表現を調べてみるのもまた面白そうですね。
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コマツマヨ
WEBサイトライティングをメインに、インタビュー、コラムニスト、WEBディレクション、都内広報誌編集、文章セミナー講師など幅広く活動。