業種と職種の違いを、上手く説明できますか? 就職活動の際などに、聞いたことがある方も多いでしょう。ですが、違いを説明するとなると、難しいと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
また、転職サイトなどに登録する際、希望の業種や職種を選ぶ欄があることもありますよね。職務経歴を説明するときにも、業種や職種を聞かれることもあるでしょう。この時に、違いがよくわかっていないと、的外れな回答をしてしまうことも…。
そこで、この記事では、業種と職種の違いや、自分の業種や職種がわからない時の調べ方を解説します。
業種とは?
「業種」とは、事業の種類を指す言葉です。例えば、通信業や、不動産業など、どのような事業内容なのかを表す言葉ということですね。
主な業種の一覧は、総務省の「日本標準産業分類」が参考になるでしょう。この日本標準産業分類では、宿泊業、飲食サービス業や、医療、福祉、金融など、20種類の大分類があります。さらにその中でも、中分類があり、細かく種類が分かれていますよ。
例えば、大分類が医療・福祉業、中分類が、一般病院というようなイメージです。たしかに、一言で医療・福祉事業といっても、病院で働いている人もいれば、介護施設で働いている人もいますよね。
こういった細かい違いを考えていくと、きりがないこともありますので、「ざっくりと事業内容ごとに種類を分けたのが、業種なのだ」と、捉えておくと良いでしょう。
どのような業種があるのか、一覧を見てみたいという方は、総務省のホームページで、確認することができますよ。一度見てみると、「こんなに色々な業種があるのか」と驚くかもしれません。
参考:「日本標準標準分類」(総務省)
なお、前述の日本標準産業分類は、あくまで一例です。転職サイトなどで業種を選ぶ際、そのサイト独自のカテゴリになっていることもありますよ。
職種とは?
「職種」とは、事務や、営業、販売など、職務の種類のこと。例えば、業種が不動産業の会社にも、様々な仕事内容の人がいますよね。建てた物件を売るために、営業をする人もいれば、経理関係の事務を社内で担当している人など、仕事は様々です。同じ会社の中にも、複数の職種の人が働いているということですね。
職種と業種の違いがあいまいだと、コミュニケーションが上手くいかないことも。例えば、「あなたの職種は何ですか?」と聞かれて、「不動産業です」と業種だけで答えてしまうと、具体的に何をしていたのか分かりにくいですよね。
職種は、「その人が就いている仕事内容の種類を指す言葉」とおさえておきましょう。自分の職種をすぐに答えられるようにしておくと、転職活動の際や、自己紹介の時にも役に立ちますよ。「不動産会社で、新築物件の営業をしています」などのイメージですね。
職種の経験を活かした転職ケース
人によっては、異業種間で、同じ職種として転職する事例もあるようです。職種によっては、違う業種の会社であっても、そのスキルを活かすことができるからですね。
例えば、給与計算や労務関連の業務は、どんな業種の会社であっても、人を雇用している以上発生する仕事です。こういった場合、「前職は、保険会社で労務を担当していました。今は、広告代理店で同じ仕事をしています」という人も。
また、営業職、販売職も、異業種へ転職するケースはあります。「異業種への転職は、勇気が要る」という声も聞きますが、職種が同じだと、ある程度経験が活かせる可能性もありますよね。
なお、「私の職種が何なのかわからない」という方は、ハローワークインターネットサービスの、「厚生労働省編職業分類」を調べてみるのもおすすめです。ここでは、事務、販売営業、研究職など、主要な職種を一覧で見ることができますよ。
ちなみに、この職業分類は、大分類、中分類、小分類とかなり細かく分かれています。例えば、ネイリストは、大分類としては、「サービスの職業」、中分類は「美容関連サービスの職業」、小分類は「ネイリスト」となっていますよ。
仕事によっては、「これってどの職種なの?」と分かりにくいこともありますよね。迷ったときは、一度、この分類表を見て見ると、ヒントになるでしょう。
参考:ハローワークインターネットサービス「厚生労働省編職業分類」
気を付けたいキャリア選択の落とし穴
ここまでは、業種と職種の意味の違いについて解説しました。キャリアチェンジなどを考える際、自分に合った業種と職種を慎重に選ばないと、後悔することも。業種と職種について、あまり深く考えずに転職した結果、「こんなはずではなかった」という事態に陥ってしまうケースもあるようですね。
キャリア選択の際には、できれば、自分に合った業種と職種の両面から考えるのがおすすめです。例えば、アパレル販売員として、キャリアを積んできた人が、転職を考えているという事例で考えていきましょう。この人の業種は、「織物・衣服・身の回り品小売業」で、職種は、「販売店員」だったとします。
この場合、業種だけで選んで、「職種はなんでも良い」と考えてしまうと、どうでしょうか? 場合によっては、経理事務など、販売以外の仕事を任されてしまうこともあり得ますよね。転職後に、「ああ、私は、アパレル店舗での接客が好きだったんだ。お客様のコーディネートの相談に乗っている時が、一番やりがいを感じられたなぁ」などと、後悔するかもしれません。
では、職種だけで選んでしまった場合はどうでしょうか? 「販売」という職種でも、業種は様々ですよね。例えば、洋服ではなく、家電の販売なども、あり得ます。中には、「私は販売のスキルがあるから、何でも売れる」と考える人もいるかもしれません。ですが、自分が販売する製品に対して、情熱が感じられないと、その仕事を続けるのが次第に辛くなってしまうこともあるでしょう。
ここまで、業種と職種の違いをイメージしやすいように、あえて極端なケースで解説しました。もちろん、全くの異業種や、未経験の職種への転職を考える際、その人の年齢や経歴に応じて、実際の状況は変わってくることも。ですが、後悔しないためにも、キャリア選択の際は、業種と職種の両面をバランス良く考えた方が良いでしょう。
最後に
この記事では、業種と職種の違いや、自分の業種、職種がわからない時に、何を参考にしたら良いのかを解説しました。転職活動の際など、自分のキャリアを考えるにあたって、とても重要なキーワードです。意味の違いを知っておくと、何かと役に立ちますよ。
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塚原美彩(つかはらみさ)塚原社会保険労務士事務所代表
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサル、ポジティブ心理学をベースとした研修講師として活動中。HP:塚原社会保険労務士事務所 ライター所属:京都メディアライン