適宜とは状況や各自の判断にあわせること
適宜(てきぎ)とは、次の意味で使う言葉です。
・その場の状況に適している様子
・その場の状況にあわせて、各自が判断して行動すること
適宜とは、状況や各自の判断にあわせた様子・行為です。そのため、「適宜、行動してください」と伝えるときには正解がありません。各自が自分の頭で状況を判断し、その場にふさわしいと思う行動を取ります。
ビジネスシーンで適宜を使う!例文をご紹介
ビジネスシーンで適宜という言葉を使うことがあります。いくつか例文をご紹介します。
・夏季休暇は、各自が適宜申請・取得してください。
・おおよそのアウトラインに沿っていれば、細かな点は適宜決めてもらっても構わない。
相手の判断で自由に行動してほしいときには、「適宜」を使って表現しましょう。
ただし、「適宜」と言っておきながら、後になってから、「ルールを守ってほしい」「グループ内で統制が取れていない」などのダメ出しをするのはNGです。完全に相手の裁量に任せられるときに「適宜」を使うか、一定のルールを示した後に「適宜」を使うようにしてください。
ビジネスシーンで使うときの注意点
適宜は、各自の判断で決めるときに使う言葉です。そのため、「適宜」と言った人の判断と、「適宜」と言われた人の判断が異なることもあります。ビジネスシーンで「適宜」を使うときは、自由意思で行動できるのか確認しておくほうがよいでしょう。
たとえば、1日かかる長いシンポジウムに参加し「昼食は適宜とってください」と言われた場合なら、議題のスケジュールを確認して、必要性の高いディスカッションを逃さないように調整する必要があります。
また、「適宜」と言った人の意向を確認することも大切です。たとえば、上司が「トラブルが起こったら適宜連絡してください」と言った場合について考えてみましょう。取引先から何本か電話がかかってきたものの、簡単に処理できる内容ばかりだったため、上司に連絡しなかったとします。
部下にしてみれば「トラブルはなかった」ため、上司に連絡しないのは「適宜」の判断です。しかし、上司にとっては取引先から電話が来ること自体、トラブルのひとつと判断しているため、「適宜連絡を受けていない!」と問題視しているかもしれません。
上司が「適宜」と言った時点で、「どのようなトラブルを想定していらっしゃいますか?」と確認しておくことで、認識のずれを回避しやすくなります。面倒でも一言、確認してください。
目上の人には適宜はおすすめできない
「適宜」と言葉を発した人になんらかの意図があるときは、適宜は適宜ではなくなります。また、相手の意図を理解していないときは、認識のずれが起こりやすくなるため、「適宜」という言葉を使ったことで、かえってトラブルを招きかねません。相手との関係性も考慮して、適宜を使ってよいか判断しましょう。
そもそも、適宜は目上の人にはあまり使わないほうがよい言葉です。「自分の判断で好きに行動して」といった、ある意味投げやりなニュアンスがあるため、相手に「不親切だ」と思われる可能性があります。また、指示を出しているニュアンスもあり、相手が不快に感じるかもしれません。
日常生活でも適宜は使える!例文をご紹介
ビジネスシーン以外でも、適宜という言葉を使うことがあります。いくつか例文をご紹介します。
・交通手段の指定はないので、適宜準備して朝9時までに集合しよう。
・課題曲の楽譜をもらったら、適宜アレンジして弾いてください。
・具材やソース、バターなどはすべてテーブルにそろえているよ。適宜組み合わせて、サンドイッチをつくってね。
適宜と混同しがちな言葉
「適」という漢字は、さまざまな熟語として使われます。いずれも「状況から判断して」や「自由に」といったニュアンスがあるため、適切な言葉がどれなのか迷ってしまうことがあるかもしれません。
適宜と混同しがちな熟語としては、次のものが挙げられます。
・適時
・随時
・適切
それぞれの意味や使い分け方を、例文をとおして見ていきましょう。
適時
適時(てきじ)とは「それをするのにちょうどよいとき」という意味で、時間に焦点をあてた言葉です。一方、適宜は時間だけでなく、方法や行動などもすべて「ちょうどよい」ことが求められます。
・今日の仕事が終わったら、適時解散してください。
・紅茶の色を見て、適時ティーバッグを取り出してね。
随時
随時(ずいじ)とは「適当なときに行動すること、そのときどき」という意味で、時間に焦点を当てた言葉です。ただし、「ちょうどよいとき」を表す適時とは異なり、随時は「好きなとき」のニュアンスがあります。
・随時、家に来てもよいよ。
・このイベントではスケジュールが決まっていません。随時帰ってもらって結構です。
適切
適切(てきせつ)とは、「過不足なく当てはまる様子」を意味する言葉です。同じ「適」を使った熟語に「適当(てきとう)」がありますが、適切には適当なニュアンスがなく、厳密にあっている状態を指します。
・受験願書を適切な方法で封筒に入れた。
・その方法が本当に適切かどうかは、今すぐには判断できない。
適切な言葉を適宜使用しよう
適宜とは、ちょうどよい状態かどうかを判断して行動することを指す言葉です。使い勝手のよい言葉ですが、相手に指示を出しているニュアンスになるため、目上の人には使わないほうがよいでしょう。
また、どのような状態を「ちょうどよい」と判断するかは個人差があるため、適宜という言葉を使うことで相手と認識のずれが生じる可能性があります。ある程度の規範があるは、適宜という言葉を使わない、もしくはルールを説明してから適宜の言葉を使うようにしてください。
「適」を使う言葉の数は多いです。適切な言葉を適宜使用することを心がけましょう。
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