仕事を前に進めるために必要なコミュニケーション術 その2
仕事の依頼を受ける時、営業する時、何かを交渉する時、いろいろな立場のチームメンバーで協働する時など、相手の要望や期待を受け取り、それをもとにコミュニケーションを重ねて行く場面は、仕事をする上で欠かせません。どうすれば相手の要望や期待を明確に引き出して、関係者の合意をスムーズにとり、話や物事を前に進めることができるのでしょうか?
営業のハイパフォーマーが使っている法則をヒントに、仕事をサクサク進めるためのコミュニケーション術をご紹介していきます。
前回の記事では、コミュニケーションのベースとして大事な2つのことをお届けしました。
・相手本位になること
・言葉のキャッチ・オープン
相手と話し始める時にまず大切なこと、それは、この2つを土台に話してもらう環境をつくることです。
環境をつくるために必要なのは、「ラポール」と「動機」
相手に話してもらうには、「ラポール」と「動機」の2つの要素が必要です。
◆ステップ1:ラポール
「ラポール」という言葉は、カウンセリングなど心理学分野で使われる言葉。元々はフランス語で、「うちとけた関係」を意味しています。
会議や商談のメインアジェンダなど本題に入る前に、相手とうちとけた関係になっていると、緊張がやわらぎ、互いに率直な意見交換をしやすくなります。部署横断のプロジェクトで初対面のメンバーがはじめて集う場、お客様と久しぶりにお会いする場、職場のメンバーで重要なアジェンダについて決着しなければいけない場など、特に緊張感が漂う時に意識したいものです。
この「ラポール(うちとけた関係)」を実現するには、関心を示す・ほめる、共通の話題を出すことが効果的です。
関心を示す・ほめる
人は他人から関心を示されたりほめられたりすると嬉しく、親しみを感じるものです。ほめるときは、見えすいたお世辞と思われないように、相手も自覚しているような話題を選びましょう。相手をよく観察したり、事前に情報収集したりしすることが大切です。
共通の話題を出す
相手が興味・関心を持っていることや相手に関することで自分との共通項があると、このラポールづくりは効果的です。共通する点が何も見つからない場合は、時事や天候など誰もが興味をもちそうな話題から入るといいでしょう。
◆ステップ2:動機づけ
相手にとってその時間、自分と話すことに動機が生まれると、あなたの話に興味・関心を抱きはじめます。また、「何か有益な情報をくれるのではないか」「いい提案をしてくれるかもしれない」という期待を感じてもらえれば、抱えている情報や考えを積極的に話してくれるようになり、その後のやりとりをスムーズに進めることができます。この動機づけは、会議や商談の最初だけでなく、そもそもそれらのアポイントを打診するときや、会議中・商談中も意識できると、相手にとっての優先順位をあげたり、その場の目的のリマインドにもなったりするので効果的です。
動機を生み出したり増大させたりするために具体的に何をすればいいのかというと、相手にとって想定されるニーズに触れたり、メリットを伝えたりすることです。
ニーズに触れる
相手が抱えていそうな問題や要望、関心のありそうな話をもち出し、相手のニーズに関する仮説を立てます。例えば法人営業の商談場面であれば、事前にお客様のホームページを見て取り組まれていることから関心事項を想像したり、過去の取引情報を洗い直して今後話題にすべき内容に当たりをつけたりするなどです。
メリットを伝える
抱えている問題を解決したり、要望を実現したりする上で、自分・自社や今回の仕事がどのように役立てるのかを伝えます。社内の会議場面でしたら、会社の中長期計画や事業戦略、相手の部署の計画・方針等から議題との関係性を見出し、相手にとって今回の話が役に立つと感じてもらえるとよいでしょう。営業の場面でしたら、具体的な実績やノウハウ、事例などを用いると効果的です。
ここまでご紹介した、ラポール(関心を示す、ほめる、共通の話題を出すことでうちとける)や、動機づけ(ニーズに触れる、メリットを伝える)でのポイントは、相手にとって“適度な”やりとりです。
相手によってフィットする内容・量は異なる
「Aさんとは話がすぐ終わるのに、Bさんはいつも時間がかかる」「Cさんは本題以外の話題もよくする」など、人によってかかる時間や話の範囲が異なると感じることはありませんか? それはまさに、人によってコミュニケーションをとるときのスタイルが異なるためです。
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人の行動傾向は「感情を表す/抑える」と「意見を主張する/聞く」の2つの観点から4つのスタイルに分類でき、各スタイルによって適切なコミュニケーションの取り方が異なります。
早く本題に入りたい人に、相手と共通の話題を探ろうと今度の長期連休の話を長々とし続けたり、メリットについて長々と伝え続けてしまったりする。一方、もっとプライベートな話を含めて仕事相手と距離を近づけたい人に「本日はお時間ありがとうございます。では始めさせてもらいます。今回のアジェンダは…」と早々に本題に入る。
こういうことが起きると、相手はその先の話に関心が削がれたり、なんとなく話が合わないと感じられたりする恐れがあります。その結果、プロジェクトにコミットしてもらえなくなったり、営業活動をうまく運べなくなったりと、とても残念に。あくまでも、ここでも前回触れた「相手本位」なラポールと動機づけが大事になるわけです。
特に、初対面で相手に関する情報がない場合や、一対一でなく複数が参加する会議や商談だと、相手・参加メンバーにとっての適度な内容・量がどれくらいなのか探りながら会話をしなければいけないため、ラポールや動機づけは難しくなります。相手の反応を観察して、反応がよく、会話に被さってくるようならもう少しやりとりを増やしてみるなど、柔軟に調節できるようになるといいでしょう。
〈今回お伝えしたこと〉
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リクルートマネジメントソリューションズ 小松苑子
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ HRDサービス開発部研究員。2008年に人材派遣会社に新卒入社して営業を経験後、新規営業モデルや若手の教育体系を構築。2017年に同社に入り、主に営業力強化や、新入~中堅社員の領域の企業研修など人材育成サービスの企画に従事。