然り(しかり、さり)とは?意味をご紹介
然りは、「しか(り)」と読みます。「然りげない」のようにほかの言葉とつなげるときは、「さ(り)」と読むこともあります。
「然り」は、古くから使われている言葉です。奈良時代の和歌をまとめた万葉集などでも、「然り」と書いて「しか(り)」「さ(り)」と読ませている例が散見されます。
元々「然り」は、「然有り(しかあり)」が縮まってできたとされています。「然(しか)」とはすでに存在する物事のことで、その物事が「有る(ある)」のが「然り」です。つまり「然り」とは、すでにわかっていることや以前からあることを指すと考えられます。
「そのとおり」
然りは、「そのとおり」の意味で使われます。あまり口語では使われませんが、小説や現実でも「然り(しかり)」と返事をすることがあるようです。
・「先生、これは今日習ったとおりに解釈すればよいのですか?」「然(しか)り」
・「鍵をかけずに出ていきますよ。後は宜しくお願いします」「然(しか)とわかった」
「同様だ」
然りは、「同様だ」の意味で使われることがあります。何かと比べたときや、別のモノや事象と同じ状態が続くときなどは「然(しか)り」や「然(さ)り」と表現できます。
・「新商品を買ったのですが、前の商品との違いがわかりません」「然(さ)もありなん」
・「うるさく騒いでいるのは彼女だけではない。お前も然(しか)りだ」
「さりげない」
然りは、「さりげない」の意味で使われることもあります。意図的ではないとき、あるいは意図的に見せようとしていないときなどは、「然(しか)り」や「然(さ)り」を使って表現することがあります。
・以前から置いてある花瓶だが、然(しか)りとした風情にセンスを感じる。
・然(さ)りとない言葉に、彼女の知性と優しさが表れていた。
然りを使った表現を例文でご紹介
然(しか)りや然(さ)りを使った慣用句的な表現もあります。よく使用する言葉としては、次のものが挙げられるでしょう。
・逆もまた然り(ぎゃくもまたしかり)
・然りとて(さりとて)
・然りげない(さりげない)
・然知ったり(さしったり)
いずれも日常会話に使えますが、少々文語的な印象を与えます。ぜひ覚えて、豊かな表現を目指してみてはいかがでしょうか。
逆もまた然り(ぎゃくもまたしかり)
「逆もまた然り(ぎゃくもまたしかり)」とは、「反対でも同じだ」「反対側にとっても同様のことがいえる」などの意味で使う言葉です。たとえば次のようなシチュエーションで使います。
・喧嘩をしたことで、君は傷ついているだろう。しかし、逆もまた然り。相手も傷ついているのだ。
・わからないことがあったら、お気軽に相談してください。逆もまた然りです。わたしもわからないときは相談いたします。
逆もまた然りと類似する言葉として「逆もまた真なり(ぎゃくもまたしんなり)」が挙げられます。「AがBであることが正しいだけでなく、BがAであることも正しいといえる」といった意味で使うことが一般的です。逆もまた然りと同じく、少々文語的なニュアンスがありますが、使い方を覚えておくとよいでしょう。
たとえば、あるお菓子を買うとトレーディングカードが1枚もらえるとしましょう。そのトレーディングカードを集めている人や、トレーディングカードに載っているアイドルやゲームが好きな人にとっては、非常に嬉しいキャンペーンです。そのため、「トレーディングカードが欲しいからお菓子を買う」といったケースも出てくるでしょう。
しかし、トレーディングカードに興味のない人にとっては、トレーディングカードがついていることはお菓子を買う動機にはなりません。つまり、「トレーディングカード目的でお菓子を買う人もいるが、逆もまた真なり」といえるのです。
然りとて(さりとて)
「然りとて(さりとて)」とは、「そうはいっても」という言葉で、逆接の接続詞として使うことがあります。文語的なニュアンスがありますが、口語として使うケースが多く、日常的に口にする人も少なくありません。
・今日は本当に暑いね。然りとて、学校に行かないわけにもいかないし……。
・付き合いが減ってきたので、季節の挨拶状を送るのをやめた。然りとて、お中元やお歳暮まで省略するのは駄目だろう。挨拶というよりは礼儀だから、きちんと送ってはどうだろうか。
然りげない(さりげない)
「然りげない(さりげない)」とは、「わざとらしくない」「元々あったもののように」「自然だ」という意味の言葉です。日常会話でよく使う言葉のため、ニュアンスを覚えておきましょう。
一般的に、然りげないはポジティブなニュアンスで使います。わざとらしくならないように配慮されているときなど、行動をした相手のセンスを褒める意味で「然りげない」と表現する傾向にあります。
・深呼吸すると、かすかにアロマの香りを感じる。このような然りげない配慮が、この家を居心地よくしているようだ。
・彼女の然りげないおしゃれが、奥ゆかしくセンスのよさを感じさせる。
然知ったり(さしったり)
「然知ったり(さしったり)」とは、次の意味で使う感嘆詞です。
・待ってました!
・(失敗などをして)しまった!
たとえば、歌舞伎の見せ場で、俳優が格好よく見えを切ったときなどは「然知ったり!」と掛け声をかけるタイミングです。状況をすでに知っていて、楽しみにしていたときなどに使います。
また、思わず失敗をしたときは、「然知ったり……」とつぶやき、残念な気持ちを表現できるかもしれません。
然りを上手に活用しよう
然りという言葉は、文語的な表現ですが、意外と日常会話でも使われることがあります。趣のある表現をしたいときなどに、然りげなく使いましょう。
とはいっても、意味が間違っていると相手に正しく伝わりません。意味を然りと理解して、使いこなしてください。