疑問1「香典袋はどう選べばいい?」
香典は、正式には白い無地の封筒に「御霊前」や「御仏前」など、ケースに応じて正しい表書きを記載し、その下に自分の名前をフルネームで書きます。
近年は文房具店やコンビニエンスストアなどのお店に行くと、メーカーによる既製品で、弔事用の表書きや水引が印刷された香典袋が売られていますので、それを使ってかまいません。
水引は弔事用の「結び切り」を使用します。「何度も繰り返してはいけない。1回で終わらせなければならない」という意味が込められており、ほどけないようにかたく結び、短く切ってあります。
水引の色は黒白もしくは双銀が一般的ですが、地域によっては黄白が使われることもあります。
◆表書きは宗教に合わせて選ぶ
選ぶ際に気をつけたいことの一つが表書きです。故人や遺族が信仰されている宗教によって変わります。仏教が大半ですが、まれに神道やキリスト教、無宗教の方がいますので使い分けましょう。無宗教の場合は「御霊前」か「御花料」がよいとされています。
〈参考〉
・仏式(仏教):御霊前、御香典、御香料(法事の際は御仏前・御佛前)
・神式(神道):御霊前、御玉串料、神饌料(法事の際は御神前、御榊料、御玉串料)
・キリスト教式:御霊前、御花料(法事の際は御花料)
・無宗教:御霊前、御花料(法事の際は御花料)
「知らないと恥ずかしい“香典”基本マナー|相場金額・書き方・渡し方は?<仏事・終活プロが解説>」
◆蓮は仏教のみ
香典袋に蓮のお花が描かれていたり、型押しされていたりすることもありますが、これは仏教のみに使用できます。キリスト教や神道、無宗教の場合は避けましょう。
◆入れる金額に見合った水引を選ぶ
もう一つ注意が必要なのは、水引がついている香典袋にはランクがあるということです。水引の立派さと中に入れる金額がリンクしています。
一般的な目安としては、水引の絵が印刷されているものは5,000円ほど、細い紐で水引が付いているものは5,000円から10,000円ほど。さらに太くて立派に見える水引が付いているものは30,000円から50,000円、もしくは10万円といわれています。立派な水引のものに5,000円を入れてお渡しすれば恥をかいてしまいます。
たいていの場合、香典袋の商品には入れる金額目安が表示されていますので、確認して適したものを購入しましょう。
疑問2「お供物はどんなときに持っていく?」
葬儀に参列するときや法事に出席するときには、お香典に加えてお供物を持参する方もいます。一般的には、より丁寧に供養の気持ちを表したいときに行います。
例えば、故人と生前にお付き合いが深かったため、香典だけではとても思いが伝わらないと考えて、お供物も一緒に持っていくという方もいれば、生前に故人がとても好きだったお菓子を知っており、それを買って持っていくという方もいます。
また、お供物を送るよくあるパターンがもう一つあります。訃報を受けたけれど、遠方で葬儀に参列できない。ただ、そこまで関係の深い知り合いではないから、お香典を送るのは少し微妙といったときです。その場合にはお供物をだけを宅配便などで送るということはあります。
しかし決まりはなく、故人との関係性や自身の思いによって変わります。
お供物の内容は、お花やお菓子などの食品、お線香が一般的です。お花や食品は宗教は関係なくお渡しすることができますが、お線香は仏教のみです。
疑問3「お供物はどんな風に選べばいい?」
では、お供物はどのように選ぶとよいのでしょうか。
◆食品
食品は、故人が生前に好きだったものを送るのが一番よいでしょう。ただ、ほとんどの方は好きだったものを知らないでしょうから、一般的にお供物としてふさわしいもの、もらった親族の方が扱いやすく食べやすいものを選ぶとよいでしょう。
まず生ものは控えること。故人が生前に生ケーキが好きだった場合などは例外ですが、基本的に生菓子や生ケーキなど、日持ちのしないもらって困るようものは控えるようにしましょう。
故人や遺族が仏教を信仰されている場合は特に、生肉や生魚はもちろん、ハムやソーセージなども含めて避けてください。仏教では殺傷は厳禁という大きな教えがあり、動物由来のものは一切食べません。
お菓子は、贈答用で小分けにされたものがよいでしょう。たとえば、大きいバウムクーヘンは小分けになっていないものだと切らないといけないので、日持ちはするものであってもご遺族に手間をかけさせてしまいます。食べやすいかどうかも気を配りましょう。
◆お花
お花のお供物には、葬儀の場合、祭壇の横に並んでいる名札のついた「供花(きょうか)」というものがありますが、ごく親しい間柄の親族や関係会社から送るものです。
それとは別に、葬儀に一般参列する方が、籠盛りのフラワーアレンジメントを持参してお渡しすることもあります。このように故人が親しい友人で、生前に好きだった花を香典に加えて持っていくことは問題ありません。なぜ籠盛りがよいかというと、花束で持っていくと飾る花瓶がないことがあるからです。籠盛りであればそのまま祭壇に置くことができます。
花屋で故人が生前好きだった花、もしくは「葬儀(もしくは法事)のお供え用に持っていきたいから作ってほしい」などと伝えればふさわしいお花を見繕ってもらえるでしょう。
◆お線香
仏教の場合は、お線香をお供物として持っていくことがあります。贈答用のお線香を選びましょう。
昔は仏壇店で購入するのが一般的でしたが、今は仏壇店自体が少なくなっているので、百貨店や量販店で、お盆の時期はスーパーマーケットでもよく取り扱っています。また、最近ではインターネットで購入する方も多いです。
疑問4「お供物に掛け紙は必要?」
基本的に、お供物に「掛け紙」は必要です。掛け紙とは、表書きと自分のフルネームもしくは苗字を書いた、包装紙の上に掛ける弔事用の紙です。
お店でお菓子などを買うときに「葬儀(もしくは法事)のお供物として送りたいのですが」などと伝えれば、たいていの場合、弔事用の包装紙で包んでくれ、水引と「御供」もしくは「御霊前」や「御仏前」といった表書きが印刷された掛け紙をかけてくれます。お渡しするときには表書きの下に自身の名前を書きましょう。
もしお店に掛け紙の用意がない場合は、自分で文房具屋などで買って表書きと名前を書いてお渡しします。
ただし、お供物を香典と一緒にお渡しするときは、掛け紙はしないのがマナーです。例えば、お香典とお菓子を同時にお渡しする際、お菓子の箱に掛け紙をかけてはいけません。香典袋に表書きと名前が書かれているはずですので、お菓子にも掛け紙をかけてしまうと、表書きと名前がダブってしまいますよね。このように重ねてはならないのです。この場合は、包装紙に包まれたお菓子の箱の上に香典袋を乗せてお渡しします。お供物だけをお渡しするのであれば、掛け紙を必ずつけましょう。
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葬儀や法事の際に持参する香典やお供物の選び方や買い方、準備の仕方についての素朴な疑問に回答しました。弔事のマナーの答えは一つではありません。また最も大切なのは故人との関係性やお悔やみの気持ちの深さで選択することです。あなたの気持ちを込めて香典やお供物を選び、お渡ししましょう。
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メモリアルアートの大野屋 終活・仏事アドバイザー 川島敦郎
1956年東京都出身。大学卒業後ブライダル会社に勤務。企画やプランナー育成に携わり、業界資格の試験官も務めたエキスパート。ブライダルの世界から2005年にメモリアルアートの大野屋に入社。葬儀ディレクター、生前相談アドバイザー、セミナー講師としても活躍し、現在「大野屋テレホンセンター」で仏事アドバイザーとして年間5000件以上の相談に答える。
大野屋テレホンセンター著「もう悩まない! 葬儀仏事お墓ズバリ! 解決アンサー」(二見書房)、監修「小さな葬儀とお墓選び・墓じまい」(自由国民社)
お電話窓口:0120-02-8888
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