皆さんは、「甲斐甲斐しい」と聞くとどんな様子をイメージしますか? 健気に努力をする人、熱心に誰かの世話をする人を褒めるときに使うことが多いかもしれませんね。しかし、甲斐甲斐しいには様々な意味があるので、使う際は注意が必要です。そこで今回は、「甲斐甲斐しい」の正しい意味や使い方、類語・対義語についてみていきましょう。
甲斐甲斐しいの意味とは?
甲斐甲斐しいは、「かいがいしい」と読みます。意味を辞書で調べてみると、4つあります。「動作が手際よく、キビキビしているさま」「骨身を惜しまずに仕事に打ち込むさま」「物事が期待通りになるさま」「頼りがいがあるさま」です。
甲斐甲斐しいは古文の中で、「物事が期待どおりになるさま」「頼り甲斐があるさま」という意味として用いられていたようです。しかし、現在では、主に2つ目の「骨身を惜しまずに仕事に打ち込むさま」や、健気な様子に対して使うことが多いですね。言葉の意味が広いため、前後の文章から判断するようにしましょう。
使い方を例文でチェック!
日常生活において「甲斐甲斐しい」は、どのような場面で使われるのでしょうか? 主な使い方を3つ紹介します。
1:母親は、仕事から帰ると甲斐甲斐しく祖父の看病をしている。
甲斐甲斐しいという言葉は、人を指すときに使用するのが一般的です。特に、献身的に誰かの世話をしている人に対して、「あんなに熱心に世話をしていて偉い」というニュアンスで使われることが多いでしょう。
2:彼女は、仕事も家事も器用にこなしていて、実に甲斐甲斐しい。
「甲斐甲斐しい」は、テキパキと働き、頼もしい人に対しても使います。手際がよく、なんでも器用に仕事をこなす姿を見て、感心するときに使われることもあるようです。ただし、現在では、「健気」「献身的」というニュアンスで用いられることが一般的なので、意味を誤解されないように注意しましょう。
3:姉は普段は何の手伝いもしないくせに、人がいる前では甲斐甲斐しく世話をする。
「甲斐甲斐しい」は、「頼もしい」「熱心に取り組む」など基本的には褒め言葉として使われます。しかし、甲斐甲斐しい様子がこれみよがしに見えたり、献身的な姿が嘘くさいと感じられたときには、例文のように嫌味で使われることも。嫉妬や悪意からあえて嫌味で言っているケースもあるでしょう。
類語や言い換え表現は?
甲斐甲斐しいは、基本的に褒め言葉として使われることが多いですが、場合によっては嫌味に聞こえてしまう可能性も考えられます。誤解されないためにも、言い換え表現を覚えておくといざというときに役立ちますよ。早速みていきましょう。
1:まめまめしい
「まめまめしい」は、「ほね惜しみせず、よく働く様子」「誠実である」などの意味があります。よく気が付いて真面目に働く人や、夫や上司に対して忠実に尽くす人に対して使われることが多いですね。
・勤続3年目の彼は、毎日まめまめしく働いている。
・結婚前は気が強かった彼女も、今では夫にまめまめしく尽くしている。
2:熱心
毎日仕事や目標に向かって頑張っている人に対しては、「甲斐甲斐しい」ではなく「熱心」などの言葉に言い換えて使ってみても良いでしょう。「熱心な仕事ぶりだね」「熱心な姿勢に感心しました」など、褒め言葉として使うと喜ばれるかもしれません。
・熱心な仕事ぶりが評価されて、彼女はリーダーに抜擢された。
・何事にも手を抜かず、熱心に取り組む姿に感動しました。
3:粉骨砕身
「粉骨砕身(ふんこつさいしん)」とは、「力の限り懸命に働くこと」。これ以上はできないくらい努力するという意思を伝えたいときに、「粉骨砕身の思いで頑張ります」などと表現します。「ベストを尽くします」「全力を尽くします」などと言い換えても、相手に意欲が伝わるでしょう。
・会社の再建のために、夫は粉骨砕身した。
・今度こそ全国大会で優勝するために、粉骨砕身します。
対義語は?
何事も一生懸命取り組む「甲斐甲斐しい」とは反対の言葉として「だらしない」「不甲斐ない」「頼りない」などが挙げられます。それぞれの意味を詳しくみていきましょう。
1:だらしない
見た目や行動などがしっかりとしていない人に対して「だらしない」は使われます。髪に寝癖がついていたり、サイズの合っていない服を着ていると「だらしない人」という印象を持たれてしまいがちです。また、約束の時間に遅刻したり、お金の使い方が荒いと周囲の信頼を失ってしまうかもしれません。
・お金にだらしない人とは付き合うなと父に叱られた。
・酔っぱらった彼は、家に帰ると床にだらしなく寝そべった。
2:不甲斐ない
「情けないほど、意気地が無い」ことを「不甲斐ない」と表現します。行動や口にすることが弱々しく、情けない様子が伝わってきますね。また、期待通りの行動ができず、役に立たないと思ったときに、自分自身のことを「不甲斐ない」と感じることもあるでしょう。無力感に苛まれたときに使われる言葉です。
・肝心なときに逃げ出すなんで不甲斐ない男だ。
・大変な時期に手助けをすることができず、不甲斐ないものです。
3:頼りない
「頼りない」とは、「頼りにならない」「あてにならない」という意味です。困ったときに力になってくれたり、助けてくれる人は心強いものですが、肝心なときに逃げ出したり、力になってくれない人は信頼できないものです。献身的に誰かの世話をする「甲斐甲斐しい」人とは正反対ですね。
・同僚に応援を頼むも、頼りない返事が返ってきた。
・肝心なときにいないなんて頼りにならない人だ。
最後に
「甲斐甲斐しい」は、一生懸命働くこと、尽くす様子を表します。基本的には褒め言葉として使われることが多いですが、場合によっては嫌味で使われるケースもあります。また、現在「甲斐甲斐しい」は、「健気に働く、努力する」というニュアンスが強いので、人によっては同情されていると感じさせてしまう可能性も。相手や状況に応じて「熱心だね」や「頼もしいね」と言い換えたほうが喜んでもらえるかもしれません。
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