ご承認の意味について
会社の上司や社外の人に依頼する時などに、「ご承認のほど、よろしくお願いいたします」「ご承認いただきたく存じます」といった表現が用いられることがあります。そもそも「ご承認」とはどのような言葉なのでしょうか。
この記事では、ご承認という言葉の意味や使い方の注意点、そして類似した表現やそれらとの違いについて説明していきます。
ご承認の意味
まずは、意味について確認していきます。「承認」という言葉に着目しましょう。承認とは、「正当・事実であると認めること」「肯定の意を示すこと」「聞き入れること」などを意味します。
承認を使った例文としては、「新しい新型コロナウイルスの治療薬を承認する」「樹立したばかりの新政権を国家承認する」「報道内容を事実として承認する」など。いずれの承認からも、「正しいと認める」「聞き入れる」「肯定する」といった意味を読み取ることができます。
そして、尊敬の意味を表す「ご」が接頭語として合体。ゆえに、「正当であると認めてください」という意味の丁寧な表現になるのです。
ご承認の使い方と注意点について
ご承認の使い方ですが、この単語に続く言葉のつけ方には注意が必要です。基本的に、上司などの目上の人に対して、ご承認という言葉は使われます。
そのため、目上の人に依頼する時に「ご承認ください」と言うと、やや命令のニュアンスを含み、直接的かつ強い口調に感じられることも。そこで、「ご承認いただければ、ありがたく存じます」「ご承認のほど、よろしくお願い申し上げます」と伝えると、柔らかい感じの表現になります。
承認にあたっては、相手に動いてもらう必要があります。つまり、相手に一定の負担を求めるということ。そのため、命令に受け取れるような直接的な表現は避けたほうがいいでしょう。
なお、「ご承認」は接頭語「ご」がついていることからもわかるように、丁寧な表現であり目上の人に使うもの。したがって、部下などの目下の人や同輩などに対しては使いません。
ご承認を使った例文を紹介
次に、ご承認を使った例文を説明します。
1:「ご承認のほど、よろしくお願いいたします」
上司や社外の人などに、依頼する時に使う表現です。「ご承認ください」と比べると、「ほど」があることで、承認を求める表現が直接的ではなくなり、和らいだ雰囲気になりますね。このように、直接的にならないように伝えるのも、相手に悪印象を与えない重要な伝達手段と言えます。
2:「ご承認賜りますよう、お願い申し上げます」
「賜る(たまわる)」には、二つの意味があります。「いただく」「ちょうだいする」という意味の謙譲語と、「お与えになる」という意味の尊敬語です。ここでは、「承認を与えてほしい」という文脈なので、後者の意味になりますね。
「賜る」という言葉自体、「神が賜った恵み」「陛下が官位を賜る」といったように使われるので、非常に丁寧で格式のあるニュアンスを含みます。承認を求める相手が、極めて目上の人である場合などに使用することになるでしょう。
格式があるゆえに、頻繁に使うと「堅苦しいな」と受け取られる可能性もあるため、利用頻度には気をつけましょう。
3:「ご承認いただき、誠にありがとうございます」
承認してもらったことへのお礼の表現です。「いただく」は、「もらう」の謙譲語。自分がへりくだることで、承認してくれた相手への敬意を表しています。
ご承認の類似表現を紹介
ご承認には、類似した表現が存在します。それらについても見ていきましょう。いずれもよく目にする表現ではありますが、ニュアンスが微妙に異なります。
1:了承
「了承」という言葉には、相手から提案・報告・要求等を理解して承知するという意味があります。「理解した上で認める」というニュアンスが含まれるところが、承認との相違点でしょう。
例文:
「この度は、価格改定についてご了承いただきまして、誠にありがとうございます」
「アンケートにご協力をお願いすることがあります。あらかじめご了承ください」
2:承諾
「承諾」には、相手の申し出や頼みを聞き入れるという意味があります。「結婚を承諾する」という文は、よく見られる表現です。
例文:
「この度は、弊社の要望をご承諾いただき、誠にありがとうございました」
「個人情報の利用目的をご承諾いただいた場合に限り、署名と捺印をお願いいたします」
3:了解
「了解」には、「悟ること」「会得すること」「理解して認めること」という意味があります。自分の心の中で理解して、認めるといったニュアンスです。「暗黙の了解」という言葉はまさに、心の中で物事を理解する行為と言えます。
例文:
「了解した。これより、本部へ帰還する」
「会議において反論しないということは、参加メンバー全員の暗黙の了解となっていた」
最後に
承認には、「正当・事実であると認める」という意味があります。いわば、お墨付きをもらうための行為と言えるでしょう。正当性というのが、承認には強くリンクしています。
他にも、相手に事情の理解を求める「了承」や、申し出を聞き入れてほしい「承諾」、悟った上で認める「了解」とは微妙なニュアンスの違いが読み取れますね。普段、何気なく大体同じような単語として使っていることが多いですが、細かく見てみると、実は違うのです。
とりわけ、文章やメールなどでこれらの言葉を使う時は、文脈に応じて、どれを使用するのが妥当かどうか判断する必要があるでしょう。
また、「ご承認」という単語に続く言葉のつけ方には注意する必要があります。語句によっては、直接的な表現になってしまい、強い印象を与えかねません。基本的に、目上の人に使う表現なので慎重になりたいものですね。
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