「毅然とした態度」「毅然とした対応」というように使われる「毅然」という言葉。普段当たり前のように使っていますが、どのような意味か知っていますか? ビジネスシーンでは、感情に流されず冷静な対応をとるときにも使われ、「毅然とした人」=「仕事ができる人」と捉えている人も多いはず。今回は、「毅然とした」の意味や使い方、類語、英語表現について解説します。
「毅然とした」とはどんな意味?
【毅然(きぜん)】
意志が強くしっかりしていて、物事に動じないさま。「何を言われても―としている」「―たる態度を失わない」
<「小学館 デジタル大辞泉」より>
「毅然(きぜん)」とは、「意志が強くしっかりとしていて、物事に動じないさま」を表します。周囲の意見に流されず、強い芯を持っている人は「毅然としている」といえるでしょう。
「毅然」の「毅」という漢字は、「強い心構え、態度がしっかりして動じない」という意味をもちます。また、「然」は、前に置かれた漢字の後について、その状態を表す言葉です。似たような熟語に「断然」「俄然」などが挙げられます。以上のことから、「毅然」という言葉は、「物事に動じない状態」「きっぱりとした様子」を表す言葉になるのです。
使い方を例文でチェック!
「毅然とした」という言葉は、職場でのクレーム対応や会議などで使われることが多いもの。ここでは、「毅然とした態度」がどのようなものか具体的に説明します。
反対意見を述べてくる上司に対して毅然とした態度で接した。
目上の人に対しても媚びることなく、自分の意見を主張できる人は、「毅然とした人」といえるでしょう。このような人は、「嫌われたくないから」「波風立てたくないから」などの理由で他人に従うことはありません。どんな場合でも「自分はこう思う」とはっきり主張することができます。相手の立場や顔色を見て意見を変えることがなく、公平な態度を貫くことができるので、周囲からの信頼も厚いでしょう。
Aさんは、お客様からのクレームにも毅然とした対応をとっていて感心した。
職場で働いていると、お客様や取引先から理不尽な要求をされることもあるでしょう。非常識なことをされているとはわかっていても、仕事相手であるため断りづらく、意見を飲み込んでしまうこともあるかもしれません。しかし、あまりに理不尽な要求を受け入れていると相手が図に乗ってくる可能性もあります。こちらに非がある部分はお詫びしつつ、きっぱりと断る勇気も必要です。
彼女は面接官の前で毅然とした口調で話した。
「毅然」は、「毅然とした口調」「毅然とした顔つき」などと表現されることもあります。他人に媚びず、きちんと自分の考えや意見を述べる人は尊敬されます。「毅然とした人」は、話すことの筋が通っており、ブレることがないので、周囲を引っ張っていくリーダーとしての資質も兼ね備えています。
類語や言い換え表現は?
「毅然とした」の類語には、「泰然」「決然」「断然」などがあります。いずれも状態を表す「然」という漢字がついている熟語です。それぞれどのような意味なのか、また使い方もチェックしていきましょう。
泰然
「泰然(たいぜん)」とは、「落ち着いていて、物事に驚かないさま」を表します。「泰然自若(たいぜんじじゃく)」という四字熟語に使われているように、どっしりと構えて物怖じしない様子が特徴です。何かトラブルが起きても、騒ぐことなく落ち着いて対応することを「泰然たる態度」と表現することも。「毅然とした態度」と使い方が似ています。
・強豪校を前に、リーダーは泰然と構えていた。
・まだ若いのに、泰然たる態度で話す彼に感心した。
決然
「決然(けつぜん)」とは、「きっぱりと決心したさま。思い切ったさま」。心に固く誓い、覚悟を決めるさまを表します。何があってもこれを成し遂げると覚悟するときに使われる言葉です。したがって、揺るぎのない態度を表す「毅然」と同じようなニュアンスを持つ言葉といえます。なお、「決然」は、「決然としてしりぞける」「決然として言い放つ」など、行動を伴う言葉とともに用いられます。
・議会で理不尽な要求を決然としてしりぞけた。
・覚悟を決めたのか、兄は決然とした口調で話し始めた。
断然
「断然(だんぜん)」には、「態度のきっぱりとしているさま」「最後まで押し切って物事をやり遂げるさま」という意味があります。たとえ周囲に反対されても、自分の信念を曲げることなくやり遂げる強引さをも感じさせる言葉です。現在では「絶対に、決して」という意味で、「断然こっちの方がいい」「断然認めない」などと表現されることが多いです。
・今日から断然酒をやめることにした。
・父から結婚を断然反対された。
英語表現とは?
「毅然とした」という言葉は、日本語では当たり前のように使われていますが、英語ではどのように表現したらいいのでしょうか? 同じようなニュアンスを持つ単語をいくつか紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
1:firm
「firm」は、「しっかりとした」「確固とした」「揺るぎない」などの意味を持つ単語です。態度や動作がしっかりとしている場合や、強い信念や固い決意を表したいときにも使うことができます。
・She took a firm stance.(彼女は毅然とした態度をとった)
・You must be firm with him because he is full of tricks.(彼はごまかすことばかりするので、毅然とした態度をとらなければならない)
2:resolute
「resolute」は、「意志が固い」「毅然とした」などの意味を持つ単語です。明確な目的や目標があり固い意志を持っているときや、物事に勇敢に挑み、決して怯まないことを表します。「resolute approach」で「毅然とした対応」と表現することができるので、セットで覚えておきましょう。
・He took a resolute approach to the sudden trouble.(彼は突然のトラブルに対して毅然とした対応をとった)
・I answered the question from the president resolutely.(社長からの質問に毅然として答えた)
正しい意味を理解して場面に合わせて活用して
「毅然とした態度」がどのようなものか理解できましたか? 周囲の人の意見や情報に流されてしまう人もいる中、しっかりと自分の意見を持ち、はっきりと主張できる人は尊敬されるでしょう。公平な態度で仕事にのぞみ、クレームやトラブルにも冷静に対応することができれば、リーダー的な立場に抜擢される可能性も。この機会に「毅然」の正しい意味や類語を覚えて、上手に使い分けてみてください。
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