「稀有」の意味とは?
「稀有な存在」や「稀有な出来事」といった形で使われる、「稀有」という言葉。正しい意味や使い方を知っていますか? 「希有」や「杞憂」など似たような言葉がありますが、果たしてどのような意味があるのでしょうか。そこで今回は、「稀有」の意味や使い方、類語、英語表現などを解説します。
意味
「稀有(けう)」とは、「滅多にないこと」や「とても珍しいこと」を表します。通常は起こらないようなことや不思議なことが起きた際に使う言葉です。滅多にない才能のことを「稀有な才能」と言ったり、ずば抜けた個性のある人のことを「稀有な存在」と呼んだりします。
「稀有」の「稀」は「まれ」とも読み、「滅多にない、少ない」という意味。「有」は「存在があること、持っていること」を指します。このふたつの漢字から、「滅多にないこと」という意味の「稀有」が成っています。
「希有」と書くことも
「稀有」は、場合によっては「希有」と書くこともあります。「稀有」と「希有」は意味も読み方も同じです。「稀有」の「稀」は常用外の漢字であるため、公用文では使用できないことから代わりに「希有」が使われます。そのため、「希有」を使っても間違いにはなりません。
「杞憂」はまったく別の意味
「稀有」と似た響きの言葉に「杞憂(きゆう)」がありますが、まったく別の意味を持った言葉です。「杞憂」とは、「いらぬ心配、取り越し苦労」のこと。悩む必要のないことをあれこれ悩むことを言います。意味を混同しないように注意しましょう。
使い方を例文でチェック!
「稀有」は基本的に「稀有な○○」といった形で用いられます。例文を3つ紹介しましょう。
彼は紛争地域で医師として働く、まことに稀有な存在だ。
滅多にいないような珍しい人物のことを「稀有な存在」と呼びます。困難と言われたことを可能にするという意味で、その道の第一人者になっている人も当てはまりますね。替えが効かない人として、ポジティブな意味合いで使われるのが一般的です。「稀有な人」と言い換えることもできます。
彼は貧乏な家に生まれながら、大金持ちになるという稀有な人生を歩んだ。
「稀有」は「稀有な人生」という使い方をすることも。波乱万丈な人生や珍しい生き方をした人に対して「あの人は非常に稀有な人生を送った」と言ったりします。不思議なことというニュアンスの強い表現です。
彼は科学技術の分野で稀有な才能を発揮した。
予想外の発想で周囲をアッと驚かせるような才能を「稀有な才能」と呼びます。ある分野において天才的な才能を開花させたり、驚くべき功績を残したりするような人を褒めるときに使われます。
類語や言い換え表現とは?
「稀有」のように滅多にないことを表す言葉には、「類まれ」「稀代」などがあります。状況に合わせて適切なものを使い分けられるようになりましょう。
類まれ
「例外的なものや、異例なこと」を「類まれ(たぐいまれ)」と表現します。たとえば、滅多にない優れた才能を持つ人のことを「類まれなる才能」などと評することも。「特別な才能を持った人だ」と称賛するときに使われます。
・A氏は、アカデミー賞を総なめした類まれなる才能の持ち主だ。
稀代
「稀代(きたい、きだい)」とは、「世にもまれなこと」「非常に珍しいこと」。「稀代の名優」「稀代の名馬」というように、100年に1度現れるか否かというくらい素晴らしい才能を持ったものに対して使われます。「希代」と表記する場合もあります。
・彼は歴史に名を残す稀代の発明家だ。
稀少
「稀少(きしょう)」とは、「きわめてまれなこと」。数が少なく価値の高いものなどに対して使われます。「希少」と書くこともあり、意味や読み方に違いはありません。
・昭和時代の日用品も今となっては稀少なものだ。
ただならぬ
「ただならぬ」とは、「普通でないこと」「ただごとではないこと」。どこか異常さを感じさせる状況を「ただならぬさま」、異常な出来事を「ただならぬ出来事」などと言います。「稀有」の持つ滅多にない・不思議であるという意味より、異常なニュアンスをはらんだ表現です。
・あたりの騒々しさからただならぬことが起きたのだと予感した。
英語表現とは?
日本語で「レア」とも言われる「rare」は、「稀有の」「珍しい」などの意味を持つ単語です。日本語と同じように、まれにしか起こらないことや珍しい物事に対して使うことができます。「in rare cases(たまには)」「a rare genius(類まれな天才)」と表現することもできますよ。
・He has a rare career of becoming president from a part-time job.(彼はアルバイトから社長になった稀有な経歴の持ち主だ)
・She has a rare talent to play various roles.(彼女はさまざまな役を演じられる稀有な才能を持っている)
・These are as rare as hen’s teeth today.(こんなものは今日ではめったにお目にかかれませんよ)
・I encountered a rare event that I wouldn’t normally think of.(普通では考えられない稀有な出来事に遭遇した)
最後に
「稀有」とは、「滅多にないことやとても珍しいこと」。珍しい才能を持った人物や不思議な物事に対して使います。ずば抜けた才能や経歴を持つことから異質な存在としてみられることもありますが、基本的には、「替えが効かない、一目置かれた存在」として褒め言葉として使われることが多いでしょう。「稀有な才能」や「稀有な出来事」などを使って、表現の幅を広げてみてくださいね。
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