「畏怖」とはどんな意味?
「畏怖(いふ)」とは、「おそれおののくこと」。神仏や自然など、人間の力ではどうにもならない圧倒的な力を持っているものに対して使われます。ただ恐怖を感じているのではなく、恐れの中にも尊敬や崇拝の気持ちが含まれていることが特徴です。
「畏」は、「畏れる(おそれる)」「畏る(かしこまる)」と読むように、「怖がること、敬うこと」という意味です。その字形は一説によると、幽鬼や虎に似た恐ろしいものを恐れ憎むことを表しているとか。また、「怖」は、「おそれる感情」を表します。
使い方を例文でチェック!
「畏怖」は、日常生活で馴染みのない言葉なので、あまり使ったことがない方が多いかもしれません。実際使う場合には、「○○を畏怖する」「畏怖の念を抱く」などのように使うのが一般的です。使い方をチェックしていきましょう。
◆畏怖する
〈例文〉古の人々は、神を畏怖する気持ちが強かったようだ。
「畏怖」は、文中では「畏怖する」「畏怖される」というように使われます。特に科学では証明できないような不可解な現象に対して、おそれたり尊敬の念を抱く場合に使われることが多いでしょう。
◆畏怖の念を抱く
〈例文〉夜中じゅう響き渡る落雷の音に畏怖の念を抱いた。
「畏怖」は感情を示すことから、「畏怖の念を抱く」「畏怖の念を覚える」というように使われます。いずれも、心の中におそれや敬いの気持ちを持っているという意味です。「畏怖」は、自然の恵みへの感謝より、地震や洪水、落雷などの自然災害に対し恐怖心を感じたときに使われることが多い傾向があります。
類語や言い換え表現とは?
「畏怖」の類語には、「恐怖」「畏敬」「敬虔」などが挙げられます。熟語によってやや尊敬のニュアンスが強いなどの違いがあるため注意して見ていきましょう。
恐怖
日常生活でよく使われる「恐怖」は、「おそれること、怖いと思うこと」です。「恐怖心」や「恐怖にかられる」などおそろしいと思った感情を表します。
例えば、お化け屋敷や暗がりなどが苦手で怖いと感じるときに「恐怖感」を覚えますよね。尊敬の念などはなく、単純に対象を恐れているところが「恐怖」と「畏怖」の違いといえるでしょう。
畏敬
「畏敬(いけい)」とは、「崇高なものや偉大な人をおそれ敬うこと」。「おそれおののくこと」を意味する「畏怖」と似た意味を持っていますが、「畏敬」の方が尊敬する気持ちが多く含まれています。神仏や自然などの大いなる力以外にも、心から尊敬する人物にも用いられる表現です。
敬虔
「敬虔(けいけん)」とは、「敬い慎む気持ちが深いさま」を表します。尊敬の気持ちが強いことは「畏敬」と同じですが、こちらは特に神仏を心から信じ、仕えている場合に使用します。神に対して身も心も捧げているような、宗教的なニュアンスの強い言葉といえるでしょう。
崇敬
「崇敬(すうけい)」とは、「心からあがめ敬うこと」。神仏や立派な人物を心から尊敬しているときに使われます。「畏怖」と同じように、「崇敬の念を抱く」と表現することもできますよ。こちらも、「恐怖心」よりも「尊敬」の気持ちが強い表現です。
対義語とは?
「おそれおののくこと」を意味する「畏怖」の対義語には、どんなものがあるのでしょうか? 一緒に見ていきましょう。
1:軽視
「軽視(けいし)」とは、「物事を軽く見ること」。物事の価値や影響力を認めず、見下げていることをいいます。人の命やことの重大さをあなどっていることを指すことから、「畏怖」とは正反対の意味を持つと考えられますね。
2:侮る
「侮る(あなどる)」とは、「馬鹿にする、軽蔑すること」。人を軽く見て馬鹿にしたり、見下しているさまを表します。物事を軽く見て油断していると、思わぬ失敗を招く可能性もあるでしょう。
英語表現とは?
自然や神仏を「畏怖」する気持ちを英語で表現するとしたら、どのような単語を使えば良いのでしょうか? 英語で「畏怖」や「おそれ」という意味があるのが「awe」です。
例えば、「畏怖の念を呼び起こす」は、「evoke awe-struck feelings」。「〜を畏怖している」は、「be in awe of」と表現します。
〈例文〉
・He arouses awe in others.(彼は人々に畏怖の念を起こさせる)
・People were in awe of the big earthquake.(人々は大地震に畏怖の念を抱いた)
・Grandmother has a strong awe of God.(祖母は神様を畏怖する気持ちが強い)
・I was in awe of natural disasters.(私は自然災害に対して畏怖の念を覚えた)
最後に
「畏怖」は、科学技術が発達した現代において、あまり感じられなくなった感情かもしれません。それでも近年では、異常気象や災害など人間の力ではどうにもならない事態が増えてきていますね。自然や神仏に対して、慎み深い気持ちを持って接することを大事にしていきたいものです。
TOP画像/(c)Shutterstock.com