自分の身を守るためにも、法律を知ることが大切!
4月に正社員として会社に入社した皆さんは、働くうえで保障されている権利について、きちんと理解していますか?
なんとなく研修で聞いたけれど、いまは目の前の仕事を覚えることで手一杯…… という人も多いのではないでしょうか。もちろん何年も会社で働いていても、法律のことまでは詳しくは知らないという人もいるはず。
でも自分自身を守るためにも、どのような法律があり、どんな権利を有しているのかをまずは知ることが大切。
そこで正社員の人、またはこれから正社員になろうとする人を対象に、働くうえで知っておきたい法律をピックアップ。書籍『法律はあなたの味方 お仕事六法 正社員ver.』より、計5回にわたるプチ連載形式で解説します!
テレワークにおける残業代は請求できるの?
【Q】コロナ禍により、テレワーク制度が導入され、週に何度かテレワークをするようになりました。テレワークで通勤時間が減ったことはよいのですが、その分、労働時間が増えています。テレワークの場合、残業時間はどのように算定されるのでしょうか?
【A】テレワーク(在宅勤務やサテライトオフィスなどでの勤務を指します)であっても、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超過した分について、会社は残業代(割増賃金)を支払わなければなりません。
しかし、会社で仕事をする場合と比較し、労働時間の管理は難しい面があります。
昨今、テレワークの普及により、厚生労働省(以下、厚労省)はテレワークにおいて、「事業場外労働のみなし労働時間制」が適用されるとしています。
「労働基準法」(以下、「労基法」)では、「事業場外労働のみなし労働時間制」が適用される場合、実際の労働時間にかかわらず、所定労働時間だけ働いたこととみなされます―「労基法」第38条の2。
ただし、「事業場外労働のみなし労働時間制」については、以下の2つの要件を満たす必要があります。
1. 勤務時間中に情報通信機器(パソコンなど)を常時通信可能な状況にする必要がない
2. 会社の具体的な指示に基づいて業務を行っていない
◆テレワークでも「労基法」の適用により残業代が発生する
コロナ禍により、テレワークが急速に普及しましたが、テレワークは業務を遂行する場所が在宅やサテライトオフィスなどであるということだけのため、「労基法」の適用を受けることに変わりありません。
そのため、テレワークで法定労働時間を超えて働いた場合には、残業代(割増賃金)が発生します―「労基法」第37条。
◆「事業場外労働のみなし労働時間制」について
テレワークでは、働く人の労働時間の管理が困難となる場合があることから、厚労省は「労基法」第38条の2の「事業場外労働のみなし労働時間制」を適用することができるとしています。
「事業場外労働のみなし労働時間制」は、外勤の営業や取材など、業務場所が固定されておらず、労働時間の算定が困難な場合、実労働時間ではなく、所定労働時間だけ労働したものとみなすことができるという制度です(労使協定※により、みなし労働時間を決めることができます)。
在宅勤務などのテレワークについても、自宅を「事業場外」と見て、「事業場外労働のみなし労働時間制」を適用することができます。
もっとも、「事業場外労働のみなし労働時間制」は、労働時間を算定しがたい場合でなければならず、厚労省の通達によると、テレワークの場合は以下の2つの要件を満たす必要があります。
1. 会社の指示により、勤務時間中に情報通信機器を常時通信可能な状態におくとされていないこと
以下の場合については、1.の要件を満たすとされています。
・勤務時間中に、働く人が自分の意思で通信回線自体を切断できる場合
・勤務時間中は通信回線自体の切断はできず、会社の指示が情報通信機器で行われるが、働く人が自分の意思で情報通信機器から離れることができ、応答のタイミングも自分で判断できる場合
・会社支給の携帯電話などをもっていても、その応答を行うか否か、または折返しのタイミングを働く人が自分で判断できる場合
2. 当該業務が、随時会社の具体的な指示に基づいて行われていないこと
以下の場合については、2.の要件を満たすとされています。
・会社の指示が、業務の目的、目標、期限などの基本的事項にとどまり、1日のスケジュール(作業内容とそれを行う時間など)をあらかじめ決めるなど、作業量や作業の時期・方法などを具体的に特定するものではない場合
※働く人(労働者)と会社(使用者)の間で取り交わされる約束事を書面上で契約した協定のこと
◆知っておきたいこと
「事業場外労働のみなし労働時間制」を利用するには、労働時間を算定しがたい場合である必要があります。
しかし、技術の発達により、会社がウェブ上で勤怠管理や仕事の進捗の確認ができるようになっていますので、「事業場外労働のみなし労働時間制」に該当しないとされる場合が増えています。
「事業場外労働のみなし労働時間制」が適用されない場合でも、実際の労働時間が法定労働時間を超えていれば、働く人は会社に対し、残業代の支払いを求めることができます。
※本内容は、2022年1月時点の法令に基づくものです
『法律はあなたの味方 お仕事六法 正社員ver.』(横山佳枝 著/あさ出版)
正規雇用の会社員として働いていると、次のような思ってもみない事態に遭遇することがあります。
・通勤中に怪我をした
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・副業で怪我をした
・部下に「パワハラだ!」と言われた
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このような労働全般における、あらゆるトラブルに対して、正しく、賢く対応するために、正社員として「知っておくと役立つ六法」を集めました。
会社員と言えども、1人の人間です。働くことであなたの健康や生活、生涯が脅かされないためにも本書を読んで自分の身を守りましょう。