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2022.05.03

会社は社員の私用メールを閲覧できる? 弁護士に聞いてみると…

今回ピックアップするのは、会社は社員の私用メールを閲覧できるかについて。『法律はあなたの味方 お仕事六法 正社員ver.』から、正社員として働くうえで知っておきたい法律について解説!

自分の身を守るためにも、法律を知ることが大切!

4月に正社員として会社に入社した皆さんは、働くうえで保障されている権利について、きちんと理解していますか?

なんとなく研修で聞いたけれど、いまは目の前の仕事を覚えることで手一杯…… という人も多いのではないでしょうか。もちろん何年も会社で働いていても、法律のことまでは詳しくは知らないという人もいるはず。

でも自分自身を守るためにも、どのような法律があり、どんな権利を有しているのかをまずは知ることが大切。

そこで正社員の人、またはこれから正社員になろうとする人を対象に、働くうえで知っておきたい法律をピックアップ。書籍『法律はあなたの味方 お仕事六法 正社員ver.』より、計5回にわたるプチ連載形式で解説します!

会社は社員の私用メールを閲覧できるの?

【Q】会社のパソコンから何度か私用でメールをしていたところ、会社が密かに調査していたようで、私用メールをしていたことを理由として懲戒処分を受けました。

会社のパソコンを使ったこと自体は悪いと思いますが、私用メールを会社が無断で閲覧することはプライバシーの侵害ではないでしょうか?

【A】勤務時間中に私用メールを送受信することは、会社に対して働く人が誠実に仕事をする義務に違反するものです。また、会社の設備を私的に利用することは、通常、就業規則で禁止されています。

しかし、会社のパソコンであるとしても、働く人の同意を得ないうえ、必要性がないのにもかかわらず、会社が働く人のメールを閲覧することは、プライバシーの侵害として違法と判断される場合があります。

◆会社のパソコンを使った私用メールの問題点

労働契約上、働く人は勤務時間中、誠実に仕事をしなければならないという義務(以下、職務専念義務)を負っています。

そのため、会社のネットワークシステム(以下、社内ネットワーク)を使って、勤務時間中に私用でメールを送受信することは、職務専念義務に違反することになります(社内ネットワークを使った私用メールの送受信を許容する社内ルールなどがあれば、その限りではありません)。

また、就業規則では、「会社の設備を私的利用すること」が懲戒事由の1つとして定められていることが多いため、その場合には、勤務時間中でなくても、懲戒事由に該当し、懲戒処分を受けるおそれがあります

◆会社が働く人のメールを閲覧することが許される場合

社内ネットワークを使ったメールの送受信は、会社が管理するサーバーコンピュータに記録され、社内ネットワークの管理者が働く人のメールの送受信状況も含め、ネットワーク全体を監視し、保守点検しています。

そのため、社内ネットワークを使ったメールの送受信については、私用のパソコンなどの端末を使う場合と同程度のプライバシーの保護を期待することはできず、一定の場合には、会社が働く人のメールを閲覧することも認められます。

会社によるメール閲覧が問題となった裁判例(東京地裁2001年12月3日)では、以下の3つの場合には、会社が働く人のメールを閲覧することがプライバシーの侵害となるとしています。

1. 働く人のメールの私的利用を監視するような責任ある立場にない者が閲覧した場合
2. 責任ある立場にある者でも、監視する業務上の合理的必要性が全くないのに閲覧した場合
3. 管理部署などに監視の事実を秘匿したまま恣意的に監視した場合

[1]から[3]の判断枠組みによれば、私用メールの送受信が疑われる場合、責任ある立場にある者が社内ネットワークの管理者と連携し、対象となった人のメールを閲覧することはプライバシーの侵害にはならないと解されます。

他方で、何ら閲覧の必要がないにもかかわらず、もっぱら好奇心でメールを閲覧することはプライバシーの侵害にあたるといえます。

※本内容は、2022年1月時点の法令に基づくものです

『法律はあなたの味方 お仕事六法 正社員ver.』(横山 佳枝 著/あさ出版)

正規雇用の会社員として働いていると、次のような思ってもみない事態に遭遇することがあります。

・通勤中に怪我をした
・給与が支払われない
・育休が取得できない
・セクハラを受けて鬱になった
・長期入院後、会社に復帰できない
・内定を取り消された
・副業で怪我をした
・部下に「パワハラだ!」と言われた
……など

このような労働全般における、あらゆるトラブルに対して、正しく、賢く対応するために、正社員として「知っておくと役立つ六法」を集めました。
会社員と言えども、1人の人間です。働くことであなたの健康や生活、生涯が脅かされないためにも本書を読んで自分の身を守りましょう。

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