自分の身を守るためにも、法律を知ることが大切!
4月に正社員として会社に入社した皆さんは、働くうえで保障されている権利について、きちんと理解していますか?
なんとなく研修で聞いたけれど、いまは目の前の仕事を覚えることで手一杯…… という人も多いのではないでしょうか。もちろん何年も会社で働いていても、法律のことまでは詳しくは知らないという人もいるはず。
でも自分自身を守るためにも、どのような法律があり、どんな権利を有しているのかをまずは知ることが大切。
そこで正社員の人、またはこれから正社員になろうとする人を対象に、働くうえで知っておきたい法律をピックアップ。書籍『法律はあなたの味方 お仕事六法 正社員ver.』より、計5回にわたるプチ連載形式で解説します!
希望しない配置転換は拒否できる?
【Q】私は法学部を卒業し、今の会社に入社して以来10年以上、法務部で勤務しており、将来的にも法務部でキャリアアップしていきたいと考えていました。しかし、人事異動で企画部への配置転換が命じられました。希望しない配置転換命令(以下、配転命令)にも応じなければいけないのでしょうか?
【A】労働契約上、職種を限定する旨の合意がなければ、就業規則に基づき、会社は他部署への配置転換を命じることができます。
職種を限定する旨の合意は、黙示的なものでもよいですが、裁判例は、長期間にわたって従事していた業務であっても、特に専門性が高い業務でなければ、職種限定の黙示的な合意とは認めない傾向です。
また、職種を限定する旨の合意がない場合においても、配転命令が不当な動機・目的による場合や、配転命令により、働く人の職業上・生活上の不利益が著しく大きい場合には、権利濫用として無効とされることがあります。―「労基法」第3条第5項。
しかし、働く人自身のキャリアデザインに沿わないというだけでは、職業上の不利益が著しく大きいとはいえず、権利濫用とは認められない可能性が高いでしょう。
◆配置転換と職種限定の合意
配置転換とは、職務内容・勤務場所の変更を指しますが、一般的には、同じ勤務地で所属部署を変更することを“配置転換”、勤務地の変更を“転勤”といいます。
就業規則では、「業務の都合により、配置転換、転勤を命じることができる」との条項が置かれていることが一般的であり、これが会社の配転命令の根拠となります。
しかし、会社と働く人との間で、職種限定の合意がある場合には、その合意が優先されますので、会社は配置転換を命じる権限(配転命令権)を有しないことになります。
職種限定の合意は、黙示的なものであってもよいのですが、裁判例は黙示的な職種限定の合意を認めることに消極的であり、長年ある職種に従事してきたというだけでは、職種限定の合意を認めない傾向にあります。
◆配転命令が権利濫用とされる場合
職種限定の合意がない場合、会社は業務上、必要があれば、就業規則に基づき配置転換を命じることができます。ただし、以下の2つの場合には権利濫用として無効とされる場合があります。
1. 配転命令が不当な動機・目的をもってなされた場合
2. 配転命令により、働く人の職業上・生活上の不利益が著しく大きい場合
たとえば、1.は働く人を退職に追い込む意図でなされる場合、2.は要介護状態※にある家族や難病をもった家族の介護・世話をしている社員に対する遠隔地への転勤命令などの場合です。
※負傷、病気または身体上・精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり、常時介護が必要な状態を指します。
※本内容は、2022年1月時点の法令に基づくものです
『法律はあなたの味方 お仕事六法 正社員ver.』(横山 佳枝 著/あさ出版)
正規雇用の会社員として働いていると、次のような思ってもみない事態に遭遇することがあります。
・通勤中に怪我をした
・給与が支払われない
・育休が取得できない
・セクハラを受けて鬱になった
・長期入院後、会社に復帰できない
・内定を取り消された
・副業で怪我をした
・部下に「パワハラだ!」と言われた
……など
このような労働全般における、あらゆるトラブルに対して、正しく、賢く対応するために、正社員として「知っておくと役立つ六法」を集めました。
会社員と言えども、1人の人間です。働くことであなたの健康や生活、生涯が脅かされないためにも本書を読んで自分の身を守りましょう。
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