自分の身を守るためにも、法律を知ることが大切!
4月に正社員として会社に入社した皆さんは、働くうえで保障されている権利について、きちんと理解していますか?
なんとなく研修で聞いたけれど、いまは目の前の仕事を覚えることで手一杯…… という人も多いのではないでしょうか。もちろん何年も会社で働いていても、法律のことまでは詳しくは知らないという人もいるはず。
でも自分自身を守るためにも、どのような法律があり、どんな権利を有しているのかをまずは知ることが大切。
そこで正社員の人、またはこれから正社員になろうとする人を対象に、働くうえで知っておきたい法律をピックアップ。書籍『法律はあなたの味方 お仕事六法 正社員ver.』より、計5回にわたるプチ連載形式で解説します!
副業には会社の許可が必要?
【Q】会社で何年か働いたあと、起業することを計画しています。起業するための基礎固めのために、土日や時間がある時は副業をしたいと考えていますが、会社の就業規則において副業は許可制とされています。会社の許可をとらずに副業をした場合、どのようなリスクがありますか?
【A】会社が副業を許可制としており、無許可の副業が懲戒事由とされている場合、懲戒処分されるリスクがあります。
もっとも、裁判例では副業を許可制とする就業規則に形式的に違反したとしても、本業に支障がなく、守秘義務違反や信用毀損(きそん)のおそれもなく、競合他社に勤務するなど勤務先への背信的行為にもあたらない場合には、懲戒処分を認めていません。
昨今、政府が副業を促進する姿勢を示していることからしても、副業を禁止する就業規則の拘束力については、本業への支障や勤務先に対するその他の義務違反がない限り、比較的ゆるやかに解釈されると考えられます。
◆裁判例における副業の考え方
就業規則で副業を制限している会社が、副業をした社員を懲戒処分した事案において、裁判例では以下の枠組みで懲戒処分の有効性を判断しています。
・原則:社員が労働時間以外の時間をどのように利用するのかは、社員の自由
・例外:以下の1.から4.の場合、会社は社員の副業を禁止・制限することができる
1. 労務提供上の支障がある場合
2. 業務上の秘密が漏洩する場合
3. 競業により自社の利益が害される場合
4. 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場
そのため、無許可で副業し、形式的に就業規則に違反するとしても、本業に支障がなく、会社の信用毀損や守秘義務違反がなく、競合他社に従事するなど勤務先への背信的行為にもあたらない場合には、会社が懲戒処分をしても無効と考えられます。
◆知っておきたいこと
これまで大多数の会社では、働く人の副業を一律に禁止または許可制とするなどと制限していました。
しかし、副業を希望する人は年々増加しており、2020年9月には、厚生労働省(以下、厚労省)が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を改定し、政府もこのガイドラインをもとに副業を推進しています。
このガイドラインでは、副業を禁止または一律許可制にしている会社は、副業が自社での業務に支障をもたらすものかどうかを精査したうえ、そのような事情がなければ、労働時間以外の時間については、働く人の希望に応じて、原則、副業を認める方向で検討することを求めています。
また、厚労省が公表している「モデル就業規則」では、以前は副業を禁止していましたが、2018年1月の改定版では、「働く人は、勤務時間外において、他の会社などの業務に従事することができる」と副業を認める内容に変更されました。
※本内容は、2022年1月時点の法令に基づくものです
『法律はあなたの味方 お仕事六法 正社員ver.』(横山 佳枝 著/あさ出版)
正規雇用の会社員として働いていると、次のような思ってもみない事態に遭遇することがあります。
・通勤中に怪我をした
・給与が支払われない
・育休が取得できない
・セクハラを受けて鬱になった
・長期入院後、会社に復帰できない
・内定を取り消された
・副業で怪我をした
・部下に「パワハラだ!」と言われた
……など
このような労働全般における、あらゆるトラブルに対して、正しく、賢く対応するために、正社員として「知っておくと役立つ六法」を集めました。
会社員と言えども、1人の人間です。働くことであなたの健康や生活、生涯が脅かされないためにも本書を読んで自分の身を守りましょう。