マスク使用とニキビ増加には因果関係あり
連日のように新型コロナウイルス感染症に関する報道があり、まだまだマスクが手放せない日が続きます。
さて、マスクをつけることによって増えているような気がするニキビ。『マスク』とニキビの原因菌である『アクネ菌』を合体させた『マスクネ』という言葉が作られるほどですが本当のところはどうなのでしょうか。
そもそもニキビは皮脂がうまく排出されずに毛穴に詰まることから始まります。小さな詰まりが少しずつ大きくなり、表面が白いものを白ニキビ、毛穴の詰まりが酸化して黒っぽく見えるものを黒ニキビと呼びます。白ニキビや黒ニキビに、ニキビの原因菌であるアクネ菌が炎症を起こさせると赤くなり、赤ニキビと呼ばれるようになります。そしてさらに進行して、膿がたまるようになると黄ニキビと名前を変えます。(詳しくはこちら)
海外のとある研究によるとマスク使用後の皮膚は、経皮水分蒸散量、pH、皮脂分泌量のいずれも増加すると発表されていました。(Hua W, Zuo Y, Wan R, et al., “Short-term skin reactions following use of N95 respirators and medical masks”, Contact Dermatitis, 2020;1-7.)
マスク内だけでない… 同様のダメージが顔全体に
少し難しい話になりますが、経皮水分蒸散量とは皮膚からどのくらい水分が逃げているか調べた数値で、数値が上昇するとバリア機能が弱く水分が逃げやすいお肌になっていることを意味しています。
また、お肌は本来弱酸性に保たれバリア機能や抗菌作用を維持しているのですが、pHが上がるとこれらの作用が弱まってしまいます。
皮脂の分泌量は皮膚温が1°C上がると10%増加するとも言われており、しかもそれはマスク内にとどまらずマスクに覆われていない皮膚も同様であるとの研究結果の報告があるとも述べられていました。
つまり、マスクを使用した後のお肌はバリア機能が低下し、アクネ菌のダメージにも弱く、しかも顔全体の皮脂量も増加してしまっているということ。
マスクを着用している最中は蒸れによって湿度や温度が上がり、菌が発育しやすくなっていますし、摩擦によって皮膚のバリア機能はこわされがちです。想像以上にマスクとニキビは深い関係にあることが分かります。
マスクが原因のニキビを防ぐには…
それでは『マスクネ』を少しでも防ぐためには、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。
まずは外してもよいタイミングではマスクを外すこと。マスク内のじっとりとした状態を少しでも避けて、お肌の温度を下げましょう。
そして毎日清潔なマスクを着用することも一つ。余分な摩擦を避けるためにはお顔にフィットしたサイズのマスクを選びましょう。
また、帰宅後はなるべく早くマスクを外して適切な洗顔とスキンケアをすることも大切です。マスク生活も早2年目。マスクとお肌の関係を理解して戦略的にニキビ対策をしていきましょう!
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田場医院 院長 田場史子(たば・ふみこ)
兵庫県三田市にある形成外科・皮膚科・美容皮膚科を併設する「田場医院」院長 形成外科専門医。
1982年生まれ。高知大学医学部医学科2007年卒。淀川キリスト教病院での研修後、神戸大学大学院医学研究科形成外科学へ入局。2018年田場医院に形成外科・皮膚科・美容皮膚科を開設。クリニックにはお肌で悩む多くの患者さんが訪れる。