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「おこがましい」の意味や、使うべき相手とは?
「おこがましい」という言葉、使ったことはありますか? 聞いたことはあっても、自分で使うには少し注意が必要なこの言葉ですが、ビジネスシーンで上手に使えば、円滑にものごとを運ぶのに役に立つ言葉でもあるのです。
「おこがましい」という言葉は、使い方や使う相手によって、失礼に当たることも。意味をしっかり押さえておくことが大切です。
◆おこがましいの意味
「おこがましい」には大きく分けて2つの意味があります。
1:ばかげている、みっともない
2:出過ぎている、生意気だ、分不相応だ
「おこがましい」を漢字で書く場合、「烏滸がましい」「痴がましい」「尾籠がましい」の3つの書き方があります。いずれも誤りではありませんが、ひとつ目の「烏滸がましい」という漢字が、上の[1]の意味の語源となっているという説がありますので、ご説明しますね。「烏滸がましい」の「烏」はカラス、「滸」は水際のこと。
「がましい」は「そのような様子である」「その状態に似ている」という意味の接尾語。つまり、水際のカラスのようだ、という意味になります。実は、「おこがましい」という言葉の由来は、古代中国・後漢時代にまでさかのぼります。当時、黄河などの川辺で、集まって騒ぐ人たちのことを「やかましい人たち」という少しあきれたニュアンスで、水際のカラスにたとえていました。
「おこがましい」も、このニュアンスを受け継いでおり、[1]の「ばかげている」「みっともない」の意味になったのです。時代の流れの中で、現代では、[2]の意味で使われることが多いと言えますが、元々の意味も覚えておくといいですね。ちなみに、「おこがましい」を漢字で書くことは、現代ではまずありません。
◆おこがましいを使う相手
さて、「おこがましい」の意味は理解できたでしょうか? 「生意気」「分不相応」という意味なので、通常は自分で自分のことをへりくだっていうときに使いましょう。
例えば、「あなたはおこがましい人だ」は、言い換えれば「あなたは生意気だ」と言っているわけですから、なんだか失礼ですね。目上の人から、目下の人に対して「彼のおこがましさは目に余る」などという言い方をすることもありますが、頻度は少なめ。ビジネスシーンにおいては、自分自身のことを謙遜して使う言葉として覚えておくほうが無難でしょう。
「おこがましい」の使い方を例文でチェック
では、使い方を実際の例を挙げてご説明します。
1:「私が言うのもおこがましいのですが、そのプロジェクトには賛成できません」
「私が言うのも差し出がましいのですが」という意味です。上司に意見を求められたとき、また上司に何かを述べるときなどに、前置きとして一言このように添えれば、謙虚な気持ちが伝わりますし、また思い切った意見も言いやすくなります。例えば「私が言うのもおこがましいのですが、このアイデアには無理があるのではないかと感じます」など。上司に指摘する場合などにとても便利な一言です。
2:「おこがましいお願いを聞き入れてくださったこと、たいへん感謝しています」
目上の人にお願いをした後に感謝の気持ちを伝えるとき、こう言ってみてはどうでしょう。簡単に言うと「わがままを聞いてくれてありがとう」という意味なのですが、「申し訳なく思っている」というニュアンスが加わることで、より感謝の気持ちを強く伝えることができますね。
3:「親の私がいうのもおこがましいが、息子は優秀だ」
「おこがましい」は、基本的には自分の行動に使うべき、という説明をしましたが、自分の身内などにも使うことができます。この場合は、最初に述べた[1]の意味に近いですね。「親の自分がいうのもみっともないようだが」というふうに言い換えることができます。
「おこがましい」の類語は?
では、「おこがましい」に似た言葉を考えてみましょう。
厚かましい
「厚かましい」とは、「図々しい」「遠慮がない」「慎みがない」という意味。「厚かましい」は、単純に「図々しい」という意味なので、自分に対してだけでなく、人にも使いやすい言葉ですね。「おこがましい」には、「目下の人(私)がいうのも図々しくて申し訳ないが」というように、立場の差と、申し訳ないというニュアンスが加わりますから、その点に違いがあると言えます。
差し出がましい
言い換えれば「でしゃばる」ことです。必要以上に関わることを「差し出がましい」と言いますが、「おこがましい」と非常によく似ていますので、言い換えとして覚えておくといいですね。同じ意味で「僭越」という言葉もあります。「僭越ながら、私が司会を務めさせていただきます」などというように使います。
身の程知らず
立場や能力を心得ていないことを表す言葉です。「おこがましい」は、人に向かっては使いにくい言葉ですが、「身の程知らず」はいくぶん、人に対しても使いやすい言葉です。「彼の身の程知らずには、恐れ入ったよ」などのように使うことができます。
「おこがましい」の英語表現も知ろう
「おこがましい」はビジネスシーンでよく登場する言葉ですから、英語表現も押さえておきましょう。
impertinent(生意気な)
「It would be impertinent of me to interfere,but…」私が言うのもおこがましいのですが…。という意味です。
impudent(図々しい)
「Tom is such a impudent guy.」は、「トムは本当におこがましい男なんだ」というような意味ですね。「なんてばかげたやつ」とも訳すことができます。
I know I’m asking too much, but…
ビジネスシーンで便利な言い回しのひとつです。「ask too much」で「無理に頼む」という意味ですから、「無理を承知で申し上げるのですが…」「おこがましいお願いですが…」という意味になります。覚えておくといいですよ。
「おこがましい」を使う時に気を付けたいこと
繰り返しになりますが、「おこがましい」は、自分で自分のことをへりくだっていうときの言葉と覚えておきましょう。「彼はおこがましいやつだ!」などというように使うこともできますが、立場にかなりの開きがある場合に限られます。安易に使うと、無礼な人だと思われかねないので注意が必要です。
また、「私が言うのもおこがましいのですが…」と切り出された場合、「はい」と相槌を打つのも考えもの。「いえいえ、そんな…」と控えめに否定しながら相槌を打つのがいいでしょう。
最後に
さて、「おこがましい」を自分で使えるでしょうか。ビジネスシーンにおいては、上司や取引先など、自分がへりくだって相手を立てるというシチュエーションが多くあります。上手に使えば、あなたのコミュニケーションスキルがアップするかもしれません。
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